UN 24/7 CFEが示したローカルマッチングの定義とは Scope2改定での供給可能性との関連性

· 脱炭素

24/7 Carbon-Free Energy Compact Guidebook(ガイドブック)においては、電力の物理的な供給構造を踏まえた上で、ローカルマッチングの必要性と考え方が具体的に説明されています。以下、その内容を整理してみます。

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1. 電力系統は物理的制約を持つシステムである

電力系統は、多数の発電設備が接続された相互連系システムであり、需要と供給を常に一致させる必要があります。発電された電力は送電・配電インフラを通じて需要家に届けられますが、このインフラには容量制約や混雑といった物理的制約が存在します。そのため、電力は時間だけでなく地理的にも整合している必要があります。

2. ローカルマッチングの基本的な考え方

ローカルマッチングは、需要家が使用する電力と同一の電力系統内、あるいは物理的に到達可能な範囲でカーボンフリー電力を調達することを意味します。これにより、購入したクリーン電力が実際にその需要家に届きうることが担保され、電力消費とクリーン電源の関係がより実質的なものとなります。

3. オンペーパー・マッチングとの違い

従来のオンペーパー・マッチングでは、電力の消費地点とは無関係な遠隔地から証書を購入することが可能でした。例えば、スペインで水力発電の証書を購入しながら、別の国で電力を消費する場合でも「再エネ利用」と主張できるケースがあります。しかしこの場合、実際の電力系統においてはクリーン電力が供給されているとは限りません。ローカルマッチングは、この乖離を解消するための考え方です。

4. 実需給との整合性の確保

ローカルマッチングを採用することで、送電制約や系統混雑といった現実の条件を踏まえた電力調達が可能になります。これにより、クリーン電力が実際に消費地点に到達しうることが確認され、カーボンフリー電力の利用主張の信頼性が高まります。また、地域内でのクリーン電源への投資を促す効果もあり、電力インフラの整備にもつながります。

5. Scope2における供給可能性(Deliverability)との関係

このローカルマッチングの考え方は、GHGプロトコルのScope2ガイダンスにおいては「供給可能性(Deliverability)」という概念として整理されています。すなわち、購入した電力が物理的に需要地点に供給可能であるかどうかが重要視されるという考え方です。

この供給可能性をどの範囲で定義するかについては、現在も国際的に議論が続いています。例えば、日本においては、国全体を一つの境界とするのか、旧一般電気事業者ごとのエリアで区切るのか、あるいはより細かい地域単位とするのかといった選択肢が考えられます。一般に、境界を広く設定すればマッチングは容易になりますが、その分、実際には電力が系統を通過していない可能性が高まり、実効性が低下するという課題があります。一方で、境界を狭くすれば物理的整合性は高まるものの、取引の柔軟性は制約されます。

なお、欧州においても同様の議論があり、例えばドイツでは国家単位を一つのマッチングエリアとする考え方が主張されるケースも見られます。このように、ローカルマッチングは単なる概念にとどまらず、電力市場の設計や証書制度の在り方に直結する重要な論点となっています。