UN 24/7 CFEが示したカーボンフリー電源の定義とは 原子力や火力CCSははどうなるのか?

· 脱炭素

24/7 Carbon-Free Energy Compact Guidebook(ガイドブック)においては、実務者向けにカーボンフリー電源の定義が説明されています。

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まず前提として、「カーボンフリー電源」という言葉の定義は非常に多義的であり、一義的に定まるものではありません。例えば、国連はあえて「再生可能エネルギー(renewable energy)」という用語に限定せず、「カーボンフリーエネルギー(carbon-free energy)」という表現を用いています。これは、太陽光や風力といった再エネに加え、原子力や、化石燃料発電におけるCCS(炭素回収・貯留)といった技術も一定の条件下で含みうる余地を残すためのものです。国連は多様な立場を包含するディプロマティックな組織であるため、特定の技術に過度に依拠しない中立的な枠組みを提示しているといえます。

一方で、再エネの定義そのものも国際的に一枚岩ではありません。例えば大規模水力については、建設から長期間が経過した設備は追加性が乏しいとする見方や、大規模ダムが生態系や土地利用に与える影響を踏まえ、再エネとして扱うべきではないとする欧州系の環境NGOの主張も存在します。このように、カーボンフリー電源あるいは再エネの定義は、技術的・環境的・政策的な観点によって揺らぎを持っています。

こうした背景を踏まえ、ガイドブックはこの曖昧さを前提としつつも、それを避けるのではなく、正面から整理し、実務に資する形で説明を試みている点に特徴があります。

1. すべての電源はライフサイクルで排出を伴う

あらゆる発電技術は、そのライフサイクル全体(Scope1〜3)において、何らかの温室効果ガス排出を伴います。これは、原材料の採掘、製造、輸送、設置、運用、そして廃棄に至るまでの全工程を含むものです。また、排出量は地域や技術によっても大きく異なることが示されています。

2. カーボンフリーの定義は文脈依存である

このような前提から、「カーボンフリー電源」という概念は一義的に固定されたものではなく、評価の文脈や前提条件に依存するものとされています。どの範囲の排出を評価対象とするかによって、その定義は変わり得るものです。

3. 使用段階(use phase)での排出が重視される

実務上は、発電時の「使用段階(use phase)」における排出に着目する考え方が広く採用されています。この観点では、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料はカーボンフリーとはみなされません。一方で、原子力や太陽光、風力といった電源は、使用段階での排出が極めて低いため、カーボンフリー電源として位置づけられます。

4. 技術ごとの留意点(カーボンフリーの但し書き)

ただし、いくつかの電源については留意点が示されています。大規模水力は使用段階では低排出であるものの、有機物の分解によるメタン排出や土地利用の影響が問題視されています。バイオマスは燃料の種類によって排出量が大きく異なり、場合によっては高排出となる可能性があります。またCCSは排出削減に寄与する技術ではあるものの、完全にゼロ排出とはならず、高い回収率や上流でのメタン漏洩抑制が前提となります。

5. 実務上の整理

このように、ガイドブックではカーボンフリー電源を単純に定義するのではなく、その多義性を認識した上で、使用段階の排出を基準としつつ、各技術の特性や制約を踏まえて実務的に運用する枠組みを提示しています。すなわち、概念の曖昧さを前提にしながらも、実務において判断可能な形へと整理している点が特徴といえます。