UN 24/7 CFEが示したテクノロジー・インクルーシブの考え方とは

· 脱炭素

■技術多様性を前提とした基本思想

24/7 Carbon-Free Energy Compact Guidebook(ガイドブック)においては、テクノロジー・インクルーシブ(Technology-inclusive)という考え方について説明されています。

電力系統の条件や市場の成熟度は国や地域によって大きく異なるため、それらを適切に反映するには多様な技術の活用が不可欠であるとしています。

これにより、各国や企業はそれぞれの状況に応じて最適なクリーンエネルギーの組み合わせを選択でき、イノベーション、レジリエンス、公平な参加の促進につながると整理されています。

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■ 多様な主体による定義の実態

実務においては、署名主体やパートナーごとに異なる定義が採用されていることも示されています。例えばGoogleは「直接的に二酸化炭素を排出しない発電」をカーボンフリーと定義し、太陽光、風力、地熱、水力、原子力、持続可能なバイオマス、CCSを含めています。Climate Groupの24/7 Carbon-Free Coalitionでは、太陽光、風力、地熱、海洋エネルギー、原子力(核分裂・核融合)、持続可能な水力やバイオマスに加え、これらで充電された蓄電技術も対象としています。また韓国のCarbon-Free Alliance(CFA)では、カーボンフリー経済への貢献を前提に幅広い技術の活用を認める立場が示されています。

■ 国連の立場と技術中立性

一方で、国連の24/7 CFEコンパクトは、特定の技術や定義を明示的に規定することはしていません。その代わりに、未対策の化石燃料(unabated fossil fuels)を意図的に除外しつつ、それ以外については技術中立的に扱うという設計思想が採用されています。これは、特定技術への偏りを避けつつ、各地域の実情に応じた柔軟な実装を可能にするためのものです。

■ 政策・市場・技術を統合する設計思想

このテクノロジー・インクルーシブの考え方は、単に多様な技術を許容するという意味にとどまりません。24/7 CFEの社会実装においては、政策・規制や市場設計と並び、「技術」が中核的な役割を果たすことが強調されています。すなわち、新しい仕組みを既存技術の延長として適用するのではなく、政策やファイナンスと一体となって新たな技術を取り込み、イノベーションを誘発することが求められています。これがテクノロジー・インクルーシブの本質といえます。

■ 日本における技術と実証の展開

日本においては、CCSをはじめとする発電技術、送電・系統運用技術、さらには電力システムの高度な調整技術などに強みがあり、約8,000万台のスマートメーターの普及など、世界的にも高い技術基盤を有しています。

こうした技術は単体で活用されるだけでなく、制度や市場と組み合わせることで、より大きな価値を発揮します。

しかし、日本企業や政府機関は、いままでは、こうしたイノベーションや先端技術を用いたソリューションを、国際社会に向けて積極的に発信してこなかったように思えます。その結果、他国との国際競争に一部後塵を拝したという指摘もあります。

スコープ2改定を契機としたアワリーマッチングを中心とした電力・脱炭素のパラダイムシフトに乗り遅れることなく、日本の強みを官民で積極的に発信していっていただければと切に思います。

手前味噌ですが、当社株式会社電力シェアリングは、環境省からの委託を受けて2023年から実証事業を実施してきました。

この取り組みでは、EVの充電と地域の家庭における太陽光発電を組み合わせ、同一地域・同一時間において創出された環境価値を紐づける形で電力利用を行うという仕組みが検証されました。

すなわち、プロシューマーによる再エネ発電と需要側の電力消費を時間・場所の両面で一致させる先進的な試みです。

そして、この実証の成果をEnergyTagやUN247Cに積極的にアプールし、日本初のケーススタディとしてEnergyTagのウエブサイトに掲載されるに至りました。

■ 今後の示唆

このように、日本は高い技術力を背景に、24/7 CFEの実装に資する多様なソリューションを有しています。今後は、これらの技術を単体で提供するのではなく、政策・規制や市場設計と一体化した形でパッケージ化し、国際的に展開していく視点が重要となります。

テクノロジー・インクルーシブの考え方は、そのような統合的な価値創出の方向性を示唆するものといえます。