国連 24/7 CFEガイドブックで実務者向けに示された基本的なフレームワークとは
国連 24/7 CFEガイドブックで実務者向けに示された基本的なフレームワークとは
「24/7 Carbon-Free Energy Compact Guidebook」では、冒頭において、実務者が共通認識として持つべき大きな基本フレームワークが明確に示されています。すなわち、「すべての電力消費(kWh)が、すべての時間において、カーボンフリー電源によって満たされる状態」を目指すという定義であり、従来の年間平均的な再エネ調達とは異なり、時間と場所の一致を前提とした時間単位での電力一致の考え方が中核に据えられています。その上で、実務上の指針として5つの原則が提示されています。

1. Time-matched procurement(時間一致)
時間一致(アワリーマッチング)は、電力消費と同一の時間帯にカーボンフリー電力を調達するという考え方です。
従来の年間単位の再エネ調達では、実際の消費時間との乖離が生じうるのに対し、この原則はそのギャップを解消し、実際の電力消費とクリーン電源を直接的に結びつけることを目的としています。
GHGプロトコルのScope2改定議論においても、時間粒度を持つ排出係数の導入や時間別の一致度評価が検討されており、この原則と整合的な方向性が示されています。
2. Local procurement(地域一致)
地域一致は、電力を消費する地域と同一または近接する電力系統内でカーボンフリー電力を調達することを求めるものです。
電力の物理的な流れや系統制約を踏まえ、実質的な排出削減に結びつく調達を重視する考え方であり、単なる証書取引による形式的な削減を超える意味を持ちます。
GHGプロトコルの議論においても、deliverability(供給可能性)や市場境界の設定といった論点として組み込まれつつあり、地域的整合性の確保が重要なテーマとなっています。
3. Technology-inclusive(技術中立性)
技術中立性は、特定の電源や技術に限定することなく、ゼロカーボン電力システムの構築に資するあらゆる手段を活用するという原則です。
再生可能エネルギーに加え、蓄電池、需要応答、水素など、多様な技術を組み合わせることで、時間的・空間的な一致を実現していくことが求められます。
この考え方は、将来の電力システムが単一技術ではなく複合的な構成で成り立つことを前提としており、制度設計や証書の定義にも影響を与える視点です。
4. Enabling new generation(追加性)
追加性は、新たなカーボンフリー電源の導入を促進することを重視する原則です。既存電源の単なる移転ではなく、新規投資を伴う形で電源を増やすことにより、電力システム全体の脱炭素化を実質的に前進させることが目的とされています。
この追加性の考え方は、GHGプロトコルで現在議論されているAMI(Avoided/Marginal Impactの文脈で議論される概念)とも関連しています。AMIは、電力の利用や調達が実際にどの程度排出削減に寄与したかという「実効的な影響」を評価する枠組みであり、形式的な調達ではなく、実際の排出削減効果を重視する点で、追加性と同じ方向性を持つ概念です。
5. Maximizing system impact(システム全体への影響最大化)
システム全体への影響最大化は、排出削減効果を最大化する観点から、特に排出係数の高い時間帯の電力消費をクリーン化することを重視する原則です。
これは単なる平均的な削減ではなく、電力システムにおける限界的な排出削減効果を意識したアプローチです。Scope2改定においても、ロケーション基準のもとで時間帯別排出係数や限界排出係数を示す方向性が議論されており、これにより需要の昼シフトや供給の夜シフトを促し、電力システム全体の負荷の最適化を高めていくという考え方にも通じるものです。
別の言葉でいえば、単なる環境証書取引にとどまらず、電力システムの安定的発展をゴールとして掲げています。
総括
このように、ガイドブックで提示された5つの原則は、それぞれが独立した実務指針であると同時に、現在進行中のGHGプロトコルScope2改定や国際的な制度設計の議論とも深く接続しています。
すなわち、24/7 CFEのフレームワークは、将来の排出算定や電力市場の在り方を見据えた実践的な設計思想として提示されているものといえます。
