EU、再エネ指令RED III改正を発表 GC-EACとアワリーマッチング導入へ道

· アワリーマッチング

欧州連合(EU)は、2023年10月に再生可能エネルギー指令の改正(RED III)を正式に発表しました。今回の改正は、再生可能エネルギー比率の引き上げに加え、電力の環境価値のトラッキング手法や市場設計そのものに影響を与える内容となっており、特に時間単位での需給整合(アワリーマッチング)への移行を後押しする枠組みとして注目されています。

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改正後のRED IIIでは、2030年までにEU全体の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率を少なくとも42.5%とする目標が設定され、さらに45%を目指す努力目標も示されています。加えて、産業・輸送・建築分野における再エネ導入義務の強化や、再エネプロジェクトの許認可迅速化など、制度全体の実効性を高める措置が盛り込まれています。

証書制度の高度化:時間粒度への移行

今回の改正で特に注目されるのは、Guarantees of Origin(GO)制度の高度化です。従来、GOは1MWh単位で発電量の環境価値を証明する仕組みでしたが、RED IIIでは「市場時間単位(market time unit)」との整合が求められる方向性が示されました。

これは、証書が発電された時間情報を反映することを意味し、現在主流である1時間単位に加え、将来的には15分単位への移行も視野に入れられています。この変更により、再エネの「量」だけでなく「いつ発電されたか」という時間価値が制度上も重要な要素となります。

デジタル化とトラッキング基盤の整備

RED IIIでは、証書の電子管理やデータ連携の強化も明確に打ち出されています。スマートメーター等のデータを活用し、発電・消費の実態に即したトラッキングを行うことで、ダブルカウントの防止や透明性の向上を図る狙いです。

こうしたデジタル基盤の整備により、従来の年次・月次ベースの相殺では把握できなかった時間帯ごとの需給バランスや炭素強度の変動が可視化されるようになります。これは、24時間365日のカーボンフリー電力を目指す動きと密接に連動しています。

改正後の動き:グラニュラー証書の実装へ

RED IIIの枠組みを受け、欧州各国ではグラニュラー証書(時間粒度証書)の実装に向けた動きが進んでいます。デンマークでは送電事業者Energinetが主導する「Energy Track & Trace」プロジェクトにおいて、スマートメーターデータを用いた時間単位の証書発行と取引の実証が行われました。

この取り組みでは、発電と消費を同一時間帯で紐付けることで、実際の電力利用に基づいた環境価値の証明が可能となり、従来の証書制度の限界を補完するモデルが提示されています。こうした動きはEU各国に波及しつつあり、2025年前後には国内法への落とし込みが進む見通しです。

市場設計の転換と日本への示唆

RED IIIの本質は、再エネ導入量の拡大にとどまらず、電力市場の評価軸を「量」から「時間」へと転換する点にあります。発電・消費・証書・契約が時間単位で連動することで、電力の価値は系統状況に応じた動的なものへと変化します。

この動きは、コーポレートPPAや非化石証書市場の構造にも影響を与える可能性があり、日本におけるScope2改定やアワリーマッチング導入の議論に対しても重要な示唆を与えるものです。制度設計とデータ基盤の両面での対応が、今後の鍵となるとしています。

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