電力安定供給に向け石炭火力の延命策を議論。「国有化の議論も必要」との意見も。第6回 次世代電力・ガス事業基盤構築小委

· 電力システム改革,火力発電,容量市場

資源エネルギー庁は、2026年5月20日に第6回 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会を開催し、中東情勢の長期化・深刻化に伴う燃料調達の不確実性の高まりを受け、電力の安定供給に万全を期すための緊急的対応について話し合いました。

この中で、特に石炭火力発電の位置づけについて、活発な議論がなされました。

第4回の小委員会においては、既に「容量市場における非効率石炭火力の稼働抑制措置を、緊急的な対応として、2026年度においては適用しない」という方針を決めていて、今回、事務局からは「大手発電事業者からのヒアリングによれば、上記方針を踏まえ、非効率石炭火力を設備利用率50%を超えて稼働する方向で燃料調達等の調整をしている模様」との報告がなされました。

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以下に、石炭火力についての議論の内容を整理します。(ただし発言内容はエネ庁が公開する動画の自動書き起こし機能を基に整理しているので、正確には原動画をご覧ください。

1. 事務局からの説明

中東情勢の長期化・深刻化に伴うLNG(液化天然ガス)調達の不確実性の高まりを受け、電力の安定供給に万全を期すための緊急的対応として、石炭火力の稼働を高める方針が示されました

容量市場における扱い(稼働抑制措置の不適用)

  • 現状の制度: 容量市場では、設計効率42%未満の「非効率石炭火力」に対し、春・秋は稼働を抑制しつつ夏・冬の高需要期に稼働することを想定し、年間の設備利用率を50%以下に抑えなければ、容量市場からの収入を20%減額するという「稼働抑制誘導措置」が設けられていました
  • 緊急的な対応: LNG燃料等を節約し安定供給を確保するため、2026年度においては、この非効率石炭火力の稼働抑制措置を適用しないこととされました
  • 事業者の動向: この方針を受け、非効率石炭火力を保有する事業者は、設備利用率50%を超えて稼働する方向で燃料調達等の調整を行っていることがヒアリングで確認されています

LNG節約効果の試

  • この措置によるLNG節約効果は、年間約50万トン(ホルムズ海峡を経由するLNG年間輸入量400万トンの1割強に相当)と試算されています。東京電力柏崎刈羽原発6号機の営業運転による節約効果(年間約110万トン)と合わせ、年間約160万トンのLNG節約を図るとしています

石炭火力の燃料在庫とサプライチェーンの状況

  • 石炭火力の事業者は概ね1ヶ月分の消費量と同等の在庫を持つのが一般的ですが、各社へのヒアリングを通じて、足元で安定した在庫水準を確保していることが確認されています。
  • 石炭価格は中東情勢の悪化を受けて1割強上昇しているものの、中東の石炭生産量は0.1%にも満たず、我が国のホルムズ依存度はゼロ%であるため、市場価格の上昇影響は相対的に小さいと分析されています
  • 石炭のサプライチェーンにおいては、コールセンターを経由して内航船やトラックで自社の貯炭場まで輸送する体制が取られており、自主開発比率や複数年ターム契約比率の向上が重要とされています

総括的評価

  • 事務局は、今回の対応を通じて、石炭火力を活用することによってLNGの節約につなげられるという「複数の選択肢を有していることの有効性が確認された」と総括しています

2. 委員の発言~肯定的意見

複数の委員から、不測の事態に備えるためのオプションとして、石炭火力の維持や投資支援を求める肯定的な発言が相次ぎました。

  • 今年度容量市場のこのいわばペナルティから外すというようなところをおっしゃっていただいておりますが、それで事業者が小さな効率改善に資するような投資であってもなかなかできるとは思えない」「人員の配置含めて年度で特例措置を講じるというようなことだけで、石炭を戦力として維持できるのだろうかというようなところは不安を持っている」
  • 「こうした危機事態が発生しますと、とにかくオプションを持っておくということの重要性が極めて明確になる」「改めてこの石炭の利用というようなところ、資源燃料分科会でもその下の燃料供給小委員会でも申し上げておりますけれども、まだどこか石炭の利用についてはかなり腰が引けた状態というようなところに感じておりますので、正面からですね、長期的なところの戦略も含めて議論をいただければと思います」
  • 「ここ数年我が国が実践してきたエネルギー政策の柱(石炭火力の維持など)が、かかる状況の中で電力供給の確保に効いている
  • 約3割の石炭についてもやはり当面電源として一定の役割を担うことが見込まれておりますし、国民の生活とか産業活動を支える重要な社会インフラの電力が安定的にかつ確実に供給されるというとこも含めまして、石炭の活用位置付けも慎重に検討いただいてですね、そして今回あの石炭火力発電の稼働制限を期限付きで解除すると、このようにフレキシブルな対応を引き続きお願いできればと考えるものです」
  • 「非効率石炭火力の緊急的な稼働について記載がありますが、現場からは停止していた石炭火力を再稼働させるのは容易ではなく、設備の老朽化も進んでいるとの声があります。今後も稼働を期待するのであれば、設備改修や石炭火力を動かすことができる技術、技能を持った労働者の確保に向け事業者の予見性を高める必要があると考えます」
  • 「石炭火力は脱炭素に逆行するとフェードアウトさせるのではなく、リプレースによる効率化や脱炭素化の取り組みへの投資を積極的に支援する必要があるのではないかと考えます」
  • 「石炭がこれからカーボンニュートラルの要請に基づいて非効率なものから撤退していくわけですけれども、ただしこういう不測の事態というのがいつ起こるかわからないっていうのを過去数年間でも何回も経験したわけですから、やはりその基本は撤退するんだけれども、新しいキャパシティが立ち上がってくるまでは、石炭火力を置いといてもらうということもやっぱり本気で考えるべきではないかと思います」
  • 今の石炭の置かれた状況を考えると、現状の予備電源制度ではとても経済性が満たされずその維持しておくインセンティブというのは働かないと思いますし、必要なものについては必要な対価を払って維持してもらうという方向性での議論をお願いできればと思います」
  • 「脱炭素化に向けての電源リプレースも進められている中で、今後仮に中東情勢が悪化して既存電源の維持を政策として求められる場合は、脱炭素政策との観点で措置されている仕組みですね、例えば容量市場の非(効率石炭の)稼働抑制やGX-ETSとの整合を図る必要がございます。電力の安定供給に協力した場合に脱炭素政策には十分対応できないということになりますので、その点で単純にマイナス評価されない仕組みの構築というのも必要ではないかと考えております」

3. 委員の発言~慎重な意見

  • 「容量市場における非効率石炭の稼働抑制について今年度は適用しないということでご紹介いただきました。今回の中東情勢という特別な状況への対応として必要性は十分理解しておりますし、とはいえですね、長期的に脱炭素投資と矛盾しないようにするためということで、その例外的な措置が常態化しないような設計、そして説明が可能な出口は今回は年度で区切ってらっしゃると思うんですけれども、引き続きしっかり持っておいていただきたい」

こうした議論の中で、石炭火力発電を含め、国有化など国の資金による電源確保についても議論すべきではないかという意見も複数委員から出されました。当該部分を改めてご紹介します。

  • 特にそのエネルギー安全保障上不可欠な一部のサプライチェーン、例えば、長期間の備蓄が難しい燃料の上流権益ですとか、安定供給の観点から維持が必要な電源につきましては、従来の市場メカニズムに委ねるだけではなくて、例えばその国としての関与のあり方、場合によっては一部事業アセットの国有化といった選択肢も含めまして、議論の俎上に載せること、こちらも必要ではなかろうかという風に考える次第でございます。
  • 今の石炭火力発電の置かれた状況考えると、現状の予備電源制度ではとてもその経済性が満たされず、その維持しておくそのインセンティブというのは働かないと思いますし、国有化とまでいかなくても国がもう少しその資金を投化(投下)してキャパシティを維持するような仕組みを、本格的に考える必要があるのかなと思ってます」

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