【深堀り解説】石炭か再エネか?Part3 グリッド排出係数と排出回避係数で考える新しい脱炭素評価
【深堀り解説】石炭か再エネか?Part3 グリッド排出係数と排出回避係数で考える新しい脱炭素評価
発電所固有の排出係数だけでは不十分
電源を評価する際、多くの場合は発電所固有の排出係数だけが議論されます。例えば石炭火力は約0.8~1.0kg-CO2/kWh、LNG火力は約0.3~0.5kg-CO2/kWh、太陽光や風力は運転時ゼロといった整理です。しかし電力システム全体で考えると、本当に重要なのはその発電所が送配電網全体の排出量をどれだけ増減させるかです。
排出回避係数という考え方
そこで有効になるのが排出回避係数(Emission Avoidance Factor)です。これは「その時間帯のグリッド排出係数」から「発電所固有の排出係数」を差し引いた値として定義できます。
排出回避係数 = グリッド排出係数 − 発電所排出係数
この値がプラスであれば、その電源を追加投入することで送配電網全体の排出量を引き下げることができます。逆にマイナスであれば、全体排出量を増加させることになります。

LNG火力がCO2削減に貢献するケース
例えば夜間に火力依存度が高まり、グリッド排出係数が0.6kg-CO2/kWhだったとします。このとき高効率LNG火力の排出係数が0.3kg-CO2/kWhであれば、
0.6 − 0.3 = +0.3
となります。つまりLNG火力を投入することで系統全体の平均排出量を0.3kg-CO2/kWh引き下げる効果があります。
同じ発電所でも時間帯によって評価が変わる
一方で昼間に太陽光発電が大量に導入され、グリッド排出係数が0.2kg-CO2/kWhまで低下していたとします。同じLNG火力を投入すると、
0.2 − 0.3 = −0.1
となります。この場合は系統全体の排出量を増やしてしまいます。
つまり同じ発電所でも、ある時間帯では排出削減に貢献し、別の時間帯では排出増加要因になるのです。
再エネとの比較も可能になる
例えば太陽光発電の排出係数をゼロとすると、昼間にグリッド排出係数が0.2kg-CO2/kWhの場合、
0.2 − 0 = +0.2
となります。
一方で夜間のグリッド排出係数0.6kg-CO2/kWhに対してLNG火力0.3kg-CO2/kWhを投入すると、
0.6 − 0.3 = +0.3
となります。
この場合、限界的なCO2削減効果だけを見ると、夜間の高効率LNG火力の方が昼間の太陽光発電より大きな排出削減効果を持つことになります。
比較優位で考える脱炭素
これは火力発電の方が再エネより優れているという意味ではありません。重要なのは、どの電源にも比較優位な時間帯が存在するということです。再エネ、原子力、水力、蓄電池、LNG火力、さらには将来のCCUS付き火力についても、それぞれが最も大きな排出削減価値を発揮する時間帯があります。
アワリーマッチングと組み合わせた新しい分析
アワリーマッチングによる需要との一致率分析と、時間帯別グリッド排出係数を組み合わせることで、どの電源がどの時間帯に最も高い脱炭素価値を持つのかを定量的に評価できます。これにより、「再エネか火力か」という単純な議論ではなく、「どの電源をどの時間帯に活用すれば最も大きなCO2削減効果を得られるか」という、より科学的で実践的な議論が可能になります。
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