英国NESO、欧州向け電力取引に制限導入 再エネ時代の系統安定化が新たな課題に

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英国の系統運用機関National Energy System Operator(NESO)は、2026年5月20日から、欧州とのインターコネクターを利用した一部の時間内(intraday)電力取引に制限を導入したことを公表しました。対象となるのは、前日市場(Day-Ahead)で決定した潮流方向と逆向きに行う短時間取引で、NESOは系統安定性確保を目的として制限を設けています。

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今回の措置では、逆方向取引量を全インターコネクター合計で1,500MWまで、さらに1系統あたり300MWまでに制限。対象には英国とフランス、ベルギー、オランダ、デンマークを結ぶ海底送電線が含まれます。背景には、短時間で大規模な潮流反転が発生すると、周辺国TSO(送電系統運用者)の需給調整や周波数維持に大きな負荷がかかる問題がありました。 (National Energy System Operator (NESO))

Ofgemも「容量囲い込み」に警告

英国エネルギー規制当局Ofgemは2026年5月14日、「Interconnector capacity hoarding」と題する政策文書を公表し、一部市場参加者によるインターコネクター容量の囲い込み行為に警告を出しています。 (Ofgem)

文書では、2022年以降、NESOによる緊急的な電力調達時に極端な価格高騰が複数回発生したと指摘。欧州からのバックアップ電力価格が一時3,000ポンド/MWhを超えるケースもあったとされています。通常の卸市場価格が100ポンド/MWh前後であることを考えると、極めて異例の水準です。 (ファイナンシャル・タイムズ)

Ofgemは、市場参加者に対し、価格設定は「市場ファンダメンタルズに基づくべき」と強調し、必要に応じて監視・執行措置を行う方針を示しました。

再エネ大量導入で市場設計が転換期に

英国では風力発電の大量導入が進み、欧州との電力融通を行うインターコネクター容量も10GW超まで拡大しています。一方、再エネ比率上昇によって需給変動が激しくなり、短時間市場への依存度も急上昇しています。 (ファイナンシャル・タイムズ)

その結果、従来は市場効率化手段とされていたリアルタイム越境取引が、逆に系統安定性リスクとして認識され始めました。英国では現在、AIを活用した需給予測、高速制御、蓄電池活用拡大なども並行して進められています。

欧州全体でも、再エネ大量導入と電力市場統合をどう両立するかが重要課題になっています。今回の英国措置は、脱炭素化が進む中で、電力市場そのものの再設計段階に入ったことを示す象徴的事例といえそうです。

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