タイで拡大する水上太陽光発電 EGATが進める2.7GW級ハイブリッド構想
タイで拡大する水上太陽光発電 EGATが進める2.7GW級ハイブリッド構想
私たち一般社団法人アワリーマッチング推進協議会は、現在タイを訪れ、アワリーマッチング普及に関して当地の事業者との協議や調査を行っています。
タイの業界関係者で話題になっているのが、タイの国営電力公社である Electricity Generating Authority of Thailand(EGAT)が水上太陽光発電プロジェクトにことのほか力を入れているということです。

世界では近年、水上太陽光発電(Floating Solar PV)が急速に拡大しています。特に韓国では農業用ため池を活用した大規模導入が政策的に進められ、中国やインド、東南アジア各国でも貯水池やダム湖面を活用した案件が増えています。土地制約が少なく、水面冷却による発電効率向上も期待できることから、次世代の大規模太陽光発電として位置付けられています。
こうした中、タイではEGATが保有する水力発電ダムを活用し、「Hydro-Floating Solar Hybrid」と呼ばれる大規模プロジェクトを推進しています。これはダム湖面に浮体式太陽光発電を設置し、既存の水力発電設備と統合運用する方式です。昼間は太陽光を優先利用し、夜間や曇天時には水力発電で補完することで、再生可能エネルギーの出力変動を抑える仕組みです。
EGATはタイ電源開発計画(PDP2018 Revision 1)に基づき、全国9カ所のダムで合計2,725MWの水上太陽光発電を整備する方針を掲げています。計画全体では16案件が構想されており、2030年代半ばにかけて段階的な導入が進められる見通しです。
シリントーンダムから始まった大規模展開
最初の案件はウボンラチャタニ県のシリントーンダムです。2021年に商業運転を開始し、太陽光発電設備45MWと既存水力発電設備を組み合わせた世界有数のハイブリッド水上太陽光プロジェクトとして整備されました。EMS(Energy Management System)による統合制御が導入されており、リアルタイムで太陽光と水力を最適運用しています。
続いて2024年にはコンケン県のウボルラタナダムで24MW案件が運転開始しました。この案件では水力発電に加え蓄電池システムも組み合わせ、再エネ出力変動への対応能力を高めています。
今後は140MW級・300MW級案件へ大型化
EGATは現在、第3弾としてカンチャナブリ県のシーナカリンダムで140MW案件を推進しています。さらにブミポンダム158MW、ワチラロンコンダム50MWなども計画されており、今後数年間で導入が進む見込みです。
また300MW級を超える大型案件の検討も進められており、ダム群を活用した再生可能エネルギー供給拠点の形成を目指しています。既存の水力発電設備、送電網、保守体制を活用できることから、単独の大規模太陽光発電所と比較して系統接続や運用面で優位性があると考えられています。
再エネの「組み合わせ」が新たな価値を生む
近年、再生可能エネルギー分野では、単一電源の導入拡大だけでなく、複数の電源種を組み合わせて柔軟性を高める取り組みが世界各地で進んでいます。太陽光と風力、太陽光と蓄電池、太陽光と水力などを組み合わせることで、ミクロレベルでもマクロレベルでも安定した再エネ供給を実現しようという考え方です。
その中でも水力発電は非常に特徴的な存在です。多くのダムは既に大容量の送電設備に接続されており、発電所には運転員や電力技術者が常駐しています。さらに水力発電は出力調整能力を持つため、変動性のある太陽光発電との相性が良いとされています。EGATが推進するハイドロ・フローティングソーラーは、こうした既存インフラを最大限活用した世界的なベストプラクティスの一つと言えるかもしれません。
日本においても、電力会社だけでなく自治体、鉄道会社、水道事業者などが保有するダムや貯水池が全国に存在します。水利権や環境影響評価、景観、設備改修などさまざまな課題はありますが、既存水力と太陽光を組み合わせる考え方そのものは十分参考になるのではないでしょうか。
再生可能エネルギーの大量導入が求められる中、単に太陽光パネルを増やすだけではなく、既存の水力資産や送電網、運用ノウハウを活用して柔軟性を高めていくことが重要になりつつあります。タイで進むこうした取り組みは、日本が今後の再エネシステムを考える上でも示唆に富む事例であり、今後の展開を引き続き注視していきたいと思います。
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