韓国、農業用貯水池で浮体式太陽光を拡大へ 2030年までに300万kW、地域還元モデルで農村再生を後押し

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韓国政府は、農業用貯水池を活用した浮体式太陽光発電の導入を大幅に拡大する方針を進めています。実施主体となるKorea Rural Community Corporationによると、現在約10.5万kW(105MW)にとどまる浮体式太陽光の設備容量を、2030年までに約300万kW(3GW)へと引き上げる計画です。対象は全国の農業用貯水池で、約3,400カ所のうち約2,300カ所が導入候補として特定されています。

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この政策の背景には、農業インフラを支える水管理財政の逼迫があります。韓国では農業用水の供給・維持管理に年間約6,600億ウォンが必要とされる一方、実際の予算は約4,300億ウォンにとどまり、約2,000億ウォン規模の資金不足が生じています。そこで政府は、既存の貯水池を再生可能エネルギーの発電基盤として活用し、その収益を水管理費に充当する新たな仕組みを導入しました。いわば「水インフラ×エネルギー」の統合モデルです。

特に注目されるのは、地域還元の仕組みです。従来の再エネ事業では、発電事業者が収益の大半を得る一方で、地域住民への還元は限定的でした。しかし今回の制度では、発電事業者・公社・地域住民がそれぞれ約3分の1ずつ利益を分け合うモデルが導入され、農民や漁民が直接的な配当収入を得られる構造へと転換されています。小規模案件では「ソーラー所得村」と呼ばれる取り組みも進められ、地域経済の活性化とエネルギー転換を同時に実現する狙いがあります。

こうした動きは、日本の再エネ政策とも無縁ではありません。例えば、五島市では、自治体が中心となり、発電事業者と漁業協同組合、地域住民の間で丁寧な協議を重ねた結果、日本初となる大規模な浮体式洋上風力発電の導入が実現しました。このプロセスでは、単なる立地提供ではなく、地域関係者の理解と参加を前提とした合意形成が重視されました。

従来、日本における再エネ開発は、都市部の事業者が地方で大規模開発を行い、収益の多くが域外に流出する構造になりがちでした。その結果、景観や環境への懸念に加え、地域に十分な経済的メリットが還元されないことから、住民理解が得られにくいケースも見られてきました。

一方で、韓国の浮体式太陽光や五島市の洋上風力に見られるように、自治体や地域産業、住民が関与し、収益が地域に還元されるモデルは、社会受容性を高める有効なアプローチであることが示されています。再エネを単なる電源開発ではなく、「地域インフラ」「地域経済」の一部として位置づける発想です。

日本でも、ため池やダム、沿岸域といった既存インフラは豊富に存在しており、こうしたモデルを展開する余地は大きいと考えられます。今後は、韓国の事例も参考にしながら、単に都市の事業者が地方で開発を行う構造から脱却し、地域が主体的に関与し利益を共有する仕組みへと転換していくことが求められます。そのための制度設計や政策的後押しが、脱炭素と地域活性化を両立する鍵となるのではないでしょうか。