英国政府、原子力規制改革を推進 SMR導入加速へ制度簡素化と投資環境整備
英国政府、原子力規制改革を推進 SMR導入加速へ制度簡素化と投資環境整備
英国政府は、2026年5月、原子力規制制度改革を含むエネルギー政策方針について発表しました。政府は大型原子炉に加え、小型モジュール炉(SMR)や先進炉(AMR)の導入を加速するため、許認可制度や規制体系の見直しを進めます。

出典:Building our nuclear nation – Government response
出典:Nuclear Regulatory Review 2025
原子力規制法制を抜本見直し
今回の改革では、英国原子力規制庁(ONR)や環境規制機関による審査・認可プロセスの簡素化が大きな柱となっています。英国政府は、既存制度が大型原発を前提として構築されており、近年拡大するSMRや先進炉の事業モデルに十分対応できていないと判断しています。
政府文書では、重複審査の削減、規制当局間の連携強化、設計認証プロセスの迅速化などが盛り込まれました。特にSMRについては、標準化された設計を複数サイトへ展開することを想定しており、従来型大型原発より短期間での建設・運転開始を目指します。
英国では現在、EDF Energy主導のSizewell C計画や、Rolls-Royce SMRによる小型炉開発が進行しています。一方で、建設費上昇や審査長期化が投資リスクとして指摘されてきました。政府は制度改革によって資金調達環境の改善や投資意思決定の迅速化を狙っています。
エネルギー安全保障とネットゼロが背景
英国はロシア産ガス依存低減や電力安定供給確保を背景に、原子力を長期的な脱炭素電源として位置付けています。政府は2050年ネットゼロ達成に向け、再生可能エネルギーだけでなく、安定出力を持つ原子力電源拡大が必要との考えを示しています。
King’s Speech関連文書では、電化拡大やAI・データセンター需要増加を踏まえ、将来的な電力需要上昇への対応も言及されています。英国では洋上風力の急拡大が進む一方、系統安定化や長時間バックアップ電源の必要性が議論されており、原子力はその一部を担うとみられています。
また、政府はSMRについて、工場生産型モジュール化による建設コスト低減や地方産業育成効果も期待しています。Rolls-Royce SMR計画では470MW級原子炉を標準化し、英国国内サプライチェーン活用を目指しています。
Fingleton Reviewが提起した課題
今回の制度改革の基盤となったのが、2025年に公表された「Nuclear Regulatory Review 2025(Fingleton Review)」です。同レビューでは、英国の原子力規制制度について、「安全性を維持しながらも、過度に複雑化し投資障壁となっている」と分析されています。
レビューでは、
・規制当局間の役割重複
・設計認証期間の長期化
・革新的炉型への対応不足
・人材不足
・国際標準との整合性不足
などが課題として挙げられました。
特に先進炉分野では、米国やカナダなどが迅速な制度整備を進めている一方、英国では許認可期間の長さが競争力低下につながる可能性が指摘されています。
安全性や環境審査への懸念も
一方で、環境団体や一部専門家からは、安全規制緩和への懸念も出ています。英国では近年、生物多様性保護や水利用規制の強化も進んでおり、大型インフラ開発との調整が課題となっています。
また、SMRは従来炉より小型とはいえ、放射性廃棄物管理や長期的廃炉費用などの論点は残されています。英国政府は、安全基準そのものを引き下げるのではなく、審査効率化を進める方針を示しています。
原子力回帰の流れが世界的に広がる中で、英国は制度改革によって投資環境整備を進める構えです。今後は、再エネ拡大と原子力、蓄電池、水素などをどう組み合わせていくかが、欧州電力システム全体の重要テーマになりそうです。
出典:The King’s Speech 2026 - Background Briefing Notes
出典:Building our nuclear nation – Government response
出典:Nuclear Regulatory Review 2025
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