Ember、アジア太平洋の電力網におけるAI活用を提言 気候変動時代の「適応型グリッド」構築へ
Ember、アジア太平洋の電力網におけるAI活用を提言 気候変動時代の「適応型グリッド」構築へ
英国エネルギー分析機関Emberは2026年5月、「Rewiring Resilience: Managing Variability in Asia-Pacific Power Grids」と題するレポートを発表しました。同レポートでは、アジア太平洋地域の電力網が、再生可能エネルギー拡大による変動性と、気候変動による猛暑・洪水・台風など二重のリスクに直面していると指摘。AIを活用した次世代系統運用への転換が必要との考えを示しています。

アジア太平洋地域は、世界の再エネ導入拡大を牽引する一方、電力需要増加ペースも極めて速い地域です。特に冷房需要の急増やAIデータセンター拡大によって、2050年までに電力需要がほぼ倍増する可能性も示されました。
AIによる系統予測・需給調整が拡大
レポートでは、従来型の固定的な系統運用から、AIを活用したリアルタイム型運用への移行が進み始めていると整理しています。
具体例として、オーストラリアでは風力・太陽光発電事業者がAIベースの5分単位発電予測を市場運営機関へ提出する仕組みを導入。機械学習を用いた短時間予測によって、再エネ変動対応能力を高めています。
また、シンガポールではAIを活用した需要予測と電力取引最適化を推進。インドネシアでは、離島マイクログリッドでAI制御を導入し、再エネ比率95%級の運用事例も生まれているようです。蓄電池寿命延長や需要予測精度向上にも効果が出ているとされます。
さらに、タイでは約18億ドル規模のスマートグリッド投資が進行中で、AIによる系統監視、サイバーセキュリティ、需要制御が組み込まれています。
「気候適応型グリッド」への転換が課題に
Emberは、今後の電力網は単なる再エネ統合だけでなく、「climate-ready system design(気候適応型システム設計)」へ進化する必要があると強調しています。
猛暑による送電容量低下、洪水による変電所被害、台風による系統障害などが増加する中、AIによる異常予測、設備劣化診断、デジタルツイン解析、分散型制御の重要性が高まっています。
特にアジア地域では、電力システム、都市計画、気象、防災データが分断されているケースが多く、AIがそれらを統合して運用判断へ変換する役割を担う可能性があります。
日本でも系統柔軟化が重要テーマに
日本でも、再エネ大量導入により系統運用の高度化が求められています。また、猛暑時の需給逼迫やデータセンター需要増加への対応が課題になりつつあります。今後は、従来の中央集中型運用だけではなく、AIを活用した分散型・予測型の系統管理が求められる場面が増えそうです。
特に、蓄電池、EV、デマンドレスポンス、分散型電源をリアルタイムで制御する仕組みは、アジア各国でも急速に実装が始まっています。アジア太平洋地域で進むAI活用型グリッドの先行事例は、日本の次世代系統運用を考える上でも参考になりそうです。
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