CSDDD簡素化方針を提示 GHGプロトコル改定議論がサプライチェーン管理へ波及も

· サステナビリティ

EUは、2025年2月26日、企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)の簡素化を含む「Omnibus package」を発表しました。

対象企業の範囲縮小や義務内容の見直しを進める一方、欧州域内外のサプライチェーンに対する環境・人権リスク管理の方向性そのものは維持する考えを示しています。

CSDDDは、Corporate Sustainability Due Diligence Directive の略称で、EU域内外の大企業に対し、サプライチェーン全体における人権侵害や環境破壊リスクの特定、防止、是正を求める制度です。対象となるリスクには、児童労働、強制労働、水質汚染、森林破壊、温室効果ガス排出などが含まれています。

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対象はEU加盟国企業に限られません。EU企業では、従業員1,000人以上かつ年間純売上高4億5,000万ユーロ超の企業が対象となり、EU域外企業についても、EU域内売上高が4億5,000万ユーロを超える場合には適用対象となります。日本企業でも、欧州売上規模やサプライチェーン上の位置によっては無関係ではなく、自動車、鉄鋼、化学、電子部品、データセンター関連などを中心に深く関係する可能性があります。

オムニバス法で対象縮小と簡素化へ

EUではこれまで、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)、CBAM(炭素国境調整措置)、EUタクソノミーなど、サステナビリティ関連制度の拡大が続いてきました。一方で企業側からは、報告負担や監査コストの増加を懸念する声も強まっていました。

こうした中、欧州委員会は2025年2月、「Omnibus package」を提示し、CSDDDについても制度簡素化を進める方向を示しました。

今回の見直しでは、監督対象を「直接のビジネスパートナー」中心へ絞る方向が示されています。従来は、間接サプライヤーまで含めた広範な監督責任が議論されていましたが、今後は例外的ケースを除き、一次取引先を中心にモニタリングを進める方向です。

また、モニタリング頻度も毎年から5年ごとへ緩和される案が示されました。EU加盟国による国内法化期限は2028年7月26日まで延長され、実際の適用開始も原則として2029年7月26日からへ後ろ倒しされる見通しです。

ただし、制度が簡素化されたとしても、欧州企業がサプライチェーン管理を重視する流れ自体がなくなるわけではないとの見方もあります。特に電力多消費型産業では、温室効果ガス排出量や再エネ調達状況に関する説明要求が継続する可能性があります。

日本企業にも広がるサプライチェーン対応

CSDDDでは、対象企業に対して、サプライチェーン上のリスク特定や是正措置が求められます。具体的には、自社や取引先に潜む人権・環境リスクの洗い出し、改善計画の策定、防止策の実施、サステナビリティ情報開示、ステークホルダーとの対話などが想定されています。

違反企業には、全世界売上高の最大3%を上限とする制裁金が科される可能性もあります。

実務面では、EU企業が取引先へ情報提供を求める形で影響が広がるケースも想定されています。

つまり、日本企業が直接CSDDD対象でなくても、欧州企業のサプライチェーンに組み込まれている場合、温室効果ガス排出量や再エネ利用状況、人権リスク管理体制などの説明を求められる可能性があります

特に、鉄鋼、自動車、EV電池、化学、半導体、データセンター関連などでは、製品製造時のCO2排出量や電力由来排出量の把握が、将来的に重要性を増していく可能性があります。

GHGプロトコル改定議論との関係

こうした中で、GHG Protocol Scope2改定議論との関係を考える必要があります。

GHG Protocolは、企業の温室効果ガス排出量算定ルールとして世界的に利用されており、多くのESG開示制度や企業目標の基盤になっています。

特にScope2は、企業が購入した電力・熱由来の排出量を扱う枠組みであり、現在は「年間平均型」の再エネ証書やPPA(電力購入契約)を活用した算定が主流です。

一方で近年は、GoogleやMicrosoft、EnergyTagなどを中心に、「電力消費と再エネ発電を時間単位で一致させるべき」とする議論も広がっています。いわゆる「アワリーマッチング(Hourly Matching)」や「24/7 CFE(24時間365日のカーボンフリー電力)」と呼ばれる考え方です。

ただし、GHGプロトコル改定議論はまだ進行中で、導入は2030年めどとまだ先のことです。データ整備、系統制約、地域差、コスト負担など課題も多く、GHG Protocol側でも引き続き行方は見通せません。

一方で、仮に将来的にScope2ルールがより時間粒度の細かい方向へ高度化した場合、CSDDDのサプライチェーン管理にも一定の影響が及ぶ可能性も否定できません。

今後、「どのような再エネを使っているか」だけでなく、「どの時間帯に、どの地域で発電された電力なのか」といった情報が、一部業界で重視されるシナリオも考えられます。

CBAMや製品LCA(ライフサイクルアセスメント)議論とも重なり、Scope2データの精度や再エネ調達の説明能力が、将来的な競争力へ影響する局面も想定されます。

まずは、Scope2算定やサプライチェーン排出管理の高度化がどの程度進むのか、GHG Protocol改定動向を含めて注視する段階と言えそうです。

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