CDPが再エネ調達評価で重視し始めた「電力の質」とは何か RE100にアワリーマッチングは導入される可能性はあるのか

· アワリーマッチング,脱炭素,サステナビリティ

企業の再生可能エネルギー調達評価において、近年、CDP が重視する観点に変化が見られています。従来は、企業がどれだけ再エネ由来電力を調達しているか、すなわち「量」の側面が主たる評価対象でした。しかし現在は、その調達方法や環境価値の質、さらには将来的な系統脱炭素化への寄与まで含めた、より実態的な評価へ移行しつつあります。

Section image

CDPは世界最大級の環境情報開示プラットフォームとして、多国籍企業・金融機関・自治体などの気候関連情報を集約してきました。現在では、Scope1〜3排出量のみならず、電力調達契約、再エネ証書、PPA、設備情報なども含めて詳細な開示を求めています。特に近年の質問票では、単に「再エネ比率」を記載するだけではなく、「どのような契約・証書を通じて再エネ属性を取得したのか」を詳細に分類する構成へ変化しています。

アンバンドルドEACへの慎重姿勢

近年特に注目されているのが、アンバンドルドEAC(Environmental Attribute Certificate)への評価姿勢です。アンバンドルドEACとは、電力そのものとは切り離された形で取引される環境価値証書を指し、REC、GO、非化石証書、一部Jクレジットなどが含まれます。これらはScope2 market-based算定において現在も重要な役割を果たしていますが、一方で、「実際の再エネ導入へどの程度寄与しているのか」という点について、近年慎重な議論が増えています。

特に問題視されているのは、既存設備由来の証書のみを大量購入することで、企業が「100% renewable」と主張するケースです。この場合、企業側の追加的投資が実際の再エネ設備増設につながっていない可能性があるため、「追加性(additionality)」への懸念が指摘されています。また、発電地域と消費地域の乖離、証書のトレーサビリティ、契約透明性なども論点となっています。

このため近年のCDP質問票では、企業に対して設備年齢、契約方式、調達市場、電源属性などの詳細開示が求められる傾向が強まっています。これは、単なる環境価値の保有ではなく、「どのような形で電力脱炭素化へ貢献しているか」を評価しようとする流れと見ることができます。

「量」から「質」への移行

この背景には、グローバルな脱炭素化が新たな段階へ入っていることがあります。従来の再エネ調達は、「年間でどれだけ再エネMWhを確保したか」が中心でした。しかし現在では、AIデータセンターや半導体工場など、24時間大量に電力を消費する産業が急拡大しており、「年間総量」だけでは実際の系統負荷や排出実態を十分に説明できないのではないか、という問題意識が強まっています。

例えば、夜間に火力電源主体の系統電力を利用しながら、昼間の太陽光由来証書を購入することで年間再エネ化を主張するケースについては、「時間的整合性」が十分ではないとの指摘も増えています。こうした背景から、近年は「Granular Certificates」「Temporal Matching」「Deliverability」など、時間・場所・供給可能性を重視する概念への関心が高まっています。

将来的なアワリーマッチング議論との接続可能性

現時点でCDPがアワリーマッチング(Hourly Matching)を正式要求しているわけではありません。また、RE100やISSBなど主要制度でも、時間単位一致はまだ正式制度として導入されていません。しかし、GHG Protocol Scope2改定議論やSBTi周辺では、時間粒度を考慮した電力調達評価への関心が拡大しています。

こうした流れを踏まえると、今後の再エネ調達評価は、「年間MWh一致」という量的評価から、「いつ・どこで・どのように供給された電力なのか」という質的評価へ徐々に移行する可能性があります。もっとも、その制度化にはスマートメーター整備、証書制度、国際整合性、データコストなど多くの課題も存在しています。ただ、CDPの近年の質問票構造や評価視点を見る限り、企業の再エネ調達評価が、単純な証書保有から、実態的な系統脱炭素化への寄与へ重心を移し始めていることは確かと言えそうです。

Section image