洋上風力発電、経産省・国交省、公募制度を大幅見直し 価格競争から事業完遂重視へ転換
洋上風力発電、経産省・国交省、公募制度を大幅見直し 価格競争から事業完遂重視へ転換
経済産業省と国土交通省は、2026年6月5日、「一般海域における占用公募制度の運用指針」の改訂を発表しました。

今回の見直しは、世界的に洋上風力発電事業の収入・費用の変動等の環境変化が生じている中で、強靭な発電事業を組成し、大規模かつ長期間にわたる洋上風力発電に係る電源投資を確実に完遂できるかを評価する方向へ大きく舵を切ったものです。発電コストの低さだけでなく、事業の確実な実現性がより問われるようになります。
「想定供給価格幅」の導入
これまでの制度は、価格が安い事業者ほど高得点となる仕組みでした。
今回新たに導入された「想定供給価格幅」は、事業完遂のために必要と考えられる水準を前提として政府が設定する価格幅です。供給価格が「供給価格上限額から想定供給価格幅を減じた額以下」の場合、価格評価点は一律120点(満点)となります。
これにより、事業者が現実的な創意工夫を講じることを促しつつ、極端な安値競争を抑制し、事業完遂と適正な競争環境の確保を両立する見込みです。
価格と事業実現性の配点を1対1に維持
評価全体では、供給価格の評価と事業実現性に関する要素の評価の配点を、当面「1:1」(それぞれ120点満点)と維持します。
ただし制度設計の考え方は大きく変わり、事業実現性に関する要素は、「事業の実施能力」(80点満点)と「地域との調整、地域経済等への波及効果」(40点満点)で構成されます。財務計画や建設計画、サプライチェーン体制などの基盤面や実行面がより重視され、長期間にわたる事業を確実に完遂できるかが評価の中心に据えられています。
財務計画の審査が大幅に厳格化
今回の改訂で最も影響が大きいのは資金調達面です。事業の実施能力の「事業計画の基盤面」において、「資金・収支計画」に14点が配分されています。
公募占用計画では、調査設計費用、建設費用、資機材調達費用、O&M費用、撤去費用、占用料、需給調整に伴う費用などを含む詳細な収支計画の提出が求められます。さらに、インフレ、為替、金利などの金融面や、風況変動、工期などを想定した「感度分析シナリオ」を含む損益計算書やキャッシュフロー計算書も厳しく評価されます。
資金調達体制としても、金融機関のLOI(融資意思表明書)にとどまらず、応募企業や金融機関の格付け、自己資本比率なども確認されるため、財務的な裏付けや資金調達能力が低い事業者には厳しい制度となりました。
サプライチェーンの強靭性が新たな評価軸に
新制度では、事業の実施能力の「事業計画の実行面」において、「電力安定供給・サプライチェーン形成」に25点が配分されました。
評価対象には、風車部品等の安定供給体制や、故障時の早期復旧体制が含まれます。また、国内及び地域の産業基盤確立といったハード・ソフト両面に係るサプライチェーンの強靱性が評価されます。
単に安い風車を調達するだけではなく、20年以上の運転期間を支える供給網全体をいかに強固に構築できるかが問われることになります。
スピード競争の比重は低下
事業計画の迅速性評価は、適切な予備期間を設けた上での運転開始時期を評価しますが、配点は10点に縮小されました。
さらに厳しい条件が追加され、「事業計画の基盤面」と「事業計画の実行面」の評価点の合計が満点の5割未満の場合、迅速性評価点は「ゼロ」となります。
満点の5割以上を獲得した場合でも、建設期間に応じた点数に基盤面・実行面の評価点比率が乗算される算定式となりました。つまり、実現性の低い楽観的な工程表を提出しても高評価は得られない仕組みとなっています。
地域共生の重要性は変わらず
地域との協調や漁業との共生も引き続き非常に重視されています。
「地域との調整、地域経済等への波及効果」には合計40点が配分され、以下の4項目がそれぞれ10点ずつ同等に評価されます。・関係行政機関の長等との調整能力
・周辺航路、漁業等との協調・共生
・地域経済波及効果
・国内経済波及効果
地域との共生に関する事項については、地域の代表である都道府県知事の意見を最大限尊重して評価が実施されるため、今後も漁業者をはじめとする地元との合意形成や地域振興策が選定結果を左右する重要要素となります。
洋上風力市場は「安く作る競争」から「確実に作る競争」へ
今回の制度改正は、日本の洋上風力市場が黎明期から本格導入期へ移行する転換点とも言えます。
これまでは価格競争を通じてコスト低減を目指してきましたが、今後は事業継続性、資金調達力、サプライチェーン構築力、地域調整能力を備えた事業者が高く評価される時代になります。
今後の大型案件では、単なる価格勝負ではなく、大規模かつ長期間にわたる事業を確実に完遂できる総合力が問われることになりそうです。
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