電力・ガス事業基盤構築小委員会、中東情勢を踏まえた議論。石炭火力の活用も
電力・ガス事業基盤構築小委員会、中東情勢を踏まえた議論。石炭火力の活用も
2026年5月20日、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会のもとで第6回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会が開催され、中東情勢等を踏まえた国内外の電力の安定供給に係る動きと今後の対応について議論が行われました。
本委員会では、昨今の国際情勢が日本のエネルギー安全保障に与える影響と、それに伴う政策的な対応の方向性が示されました。
過去の電力需給ひっ迫経験とこれまでの対策
日本は過去の気候変動による需要急増やウクライナ侵略に伴う世界的燃料価格の高騰により、深刻な電力需給のひっ迫と市場の混乱を経験してきました。
これを受けて国と事業者は協調し、発電用燃料のガイドライン制定や、週末の液化天然ガス在庫の継続的なモニタリングを開始しています。
さらに、電力会社とガス会社が融通し合う全国連携融通スキームが構築されました。
また、調達コストを市場へ反映しやすくするためのスポット市場における限界費用入札の見直しや、インバランス料金への上限価格導入など、包括的な対策が講じられてきました。
中東情勢の悪化に伴う燃料供給リスクと現在の在庫状況
現在、中東情勢の悪化により世界のエネルギー安全保障環境は不透明さを増しています。
日本の化石燃料輸入構造では、原油の9割以上がホルムズ海峡を経由しており中東への依存度が極めて高い状況です。
一方で、液化天然ガスは同海峡経由が約6パーセントにとどまり、石炭に至っては中東への依存はありません。大手電力会社やガス会社が保有する燃料在庫も平年並みを維持しており、足元の情勢が直ちに致命的な影響を与える状況にはありません。

しかし、中東の紛争等によって世界全体の液化天然ガス供給の一部が長期にわたって失われる見込みも示されており、地政学リスクへの警戒が呼びかけられました。
石油備蓄の機動的な放出と非効率石炭火力の緊急的活用
こうした不確実性に対し、政府は国民生活と経済活動を守るための機動的な対応策を展開しています。中東依存度が高い石油に関しては、国家備蓄および民間備蓄の段階的な放出が決定され、代替調達も進められています。
また、液化天然ガスの消費を節約するため、容量市場において設けられていた非効率石炭火力の稼働抑制措置を2026年度は特例的に適用外とし、稼働を引き上げることが決定されました。
この措置や柏崎刈羽原子力発電所6号機の営業運転再開をあわせることで年間約160万トンという大規模な液化天然ガスの節約が見込まれており、安定供給に大きく貢献しています。
先物市場における価格上昇と小売電気事業者の動向
中東情勢の悪化は、燃料の調達だけでなく市場の価格形成にも直接的な影響を及ぼしています。
原油や液化天然ガスのスポット価格、石炭価格が軒並み上昇傾向を示しており、これに連動して卸電力市場のスポット価格や先物価格も上昇しています。
このような価格の上昇圧力は、小売電気事業者の経営環境を直撃しています。
市場からの調達価格が顧客への販売価格を上回る逆ざやのリスクが高まった結果、2026年3月以降、特別高圧や高圧といった産業用の需要家を中心に、新規の電力供給契約の受付を停止する大手小売電気事業者が複数現れるなど、厳しい対応を迫られています。
石炭火力を含めた今後の日本の方向性
エネルギー危機に直面しているのは日本だけではなく、アジアや欧州の主要国でも石炭火力の稼働を再開させたり、電気料金高騰を防ぐための強力な市場介入が行われています。
日本としても、地政学リスクへの備えを一層強化することが不可欠と結論付けられました。
具体的には、石炭火力を含めた既存火力発電設備の維持とサプライチェーンの確保、安全を大前提とした原子力発電の再稼働、再生可能エネルギーなど脱炭素電源の最大限の活用が検討されました。
さらに、価格変動リスクに強い事業環境を整備するため、中長期的な電力取引の普及やリスクヘッジ手段の活用を促進していくことが今後の重要な課題として提起されました。
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