富士電機、データセンター向け最大85パーセント省エネ冷却機を発表 2026年度事業戦略で
富士電機、データセンター向け最大85パーセント省エネ冷却機を発表 2026年度事業戦略で
富士電機は2026年度に向けた事業戦略説明会において、自社の提供価値と事業構造の変化について詳細に解説しました。
同社の事業領域は、発電を中心としたエネルギーを創る事業と、そのエネルギーを安定的に供給することにあります。需要家側においては、省エネや自動化、電化といった領域をインダストリー事業や食品流通事業が担い、その基盤を半導体事業が支える構図となっています。

さらにデジタル技術を活用して供給側と需要側をつなぎ、エネルギーの運用を最適化することも中核領域です。
時代の要請に合わせてこの価値を拡張し、2026年度までに刈り取りを始める成長領域や、2030年から2035年頃を見据えた新領域へと事業を展開していく方針を示しています。
プラント事業の大幅な収益力改善と全社への貢献
この数年間で富士電機の事業構造は大きく変化しており、特にプラントシステム部門の収益力が著しく向上しています。
2023年度の時点では、全社の売上高1兆1000億円強に対してプラントシステム部門の売上割合は54パーセントであり、営業利益ベースでも全体の約半分である1061億円を稼ぎ出していました。
しかし、2025年度の実績においては、売上高に占める割合は微増にとどまったものの、営業利益については全社の7割を叩き出すまでに成長しています。このような時代の変化に伴う事業構造の大きな転換が、現在の富士電機の堅調な業績を強力に支える要因となっています。
アプリケーションに特化した顧客価値の創出と注力戦略
この劇的な事業構造の変化の背景には、顧客価値創出を軸とした取り組みが長く続けられてきたことがあります。
富士電機はコンポーネントをベースにしながら、それらを組み合わせてエンドユーザーマーケットに様々なシステムを投入してきました。
ここで重要となるのがパートナー企業との協調体制です。富士電機自身はエレベーターや自動車の完成品を作るのではなく、各メーカーが市場で勝ち抜けるよう、自社の得意なコンポーネントを提供してビジネスを展開しています。
汎用インバータなどの汎用市場は中国企業の参入により長期的には縮小すると見込まれるため、特定の用途に向けたアプリケーションスペシフィックな市場を明確なターゲットに定めて事業を伸ばしていく戦略です。
部門を横断した総合力によるデータセンター向け提案
顧客の特定ニーズに応える一例として、現在急速に需要が拡大しているAIデータセンター向けのトータルソリューションが挙げられます。
従来のエネルギーや環境対応、工期短縮といった要求に加えて、今後はサーバーをどのように冷やすかが最大の課題となります。
富士電機はインダストリー部門の流量計や高調波を出さないインバータ、そして新開発のエジェクタ冷却機など、部門を横断した技術を融合させて液冷や水冷のニーズに対応します。
さらに将来的には直流配電の実用化を見据え、ソリッドステート変圧器や半導体遮断器などの新製品開発に向けて、半導体事業と器具の電流遮断技術を組み合わせた提案を強化していく予定です。
巨大化する液冷市場の課題を解決する最大85パーセント削減の冷却機器
データセンターにおける消費電力のうち、実に3から4割が冷却システムに費やされている現状があり、その解決策として2034年には15兆円規模へと急拡大すると予測される液冷市場が注目されています。
この巨大市場の真ん中に刺さる画期的な技術として、富士電機は2026年6月にエジェクタ冷却機を発売します。
この製品は、工場等の排熱エネルギーを再利用して冷却を行うものであり、世界で初めてコンプレッサを必要としないコンプレッサレス冷却を実現しました。
コンプレッサの稼働にかかる膨大なエネルギーをカットできるため、冷却にかかる電力を最大で85パーセント削減するという圧倒的な省エネ効果をもたらします。
この技術は決して一朝一夕で開発されたものではなく、自動販売機で長年培ってきた冷熱技術や、生産工場における未利用熱エネルギー活用のノウハウといった、富士電機の総合力が結集された結果です。
AIサーバーの稼働により未曾有の熱対策が迫られるデータセンターのみならず、半導体、食品飲料、自動車などの顧客市場に向けて提供される予定であり、未活用の熱を有効活用することで社会全体の二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献する極めて重要な製品と位置づけられています。
パワエレとパワー半導体のシナジー効果による技術革新
富士電機の歴史において極めて重要な強みが、パワーエレクトロニクスとパワー半導体のシナジーです。
1970年代に業界に先駆けてパワー半導体を商品化し、それを活用したインバータを製品化してきました。その後も新幹線用の主変換装置やメガソーラー向けのシステムなど、世界初となる画期的な製品を次々と世に送り出しています。
最近では、小型車向けのRC-IGBTと車載インバータの開発において、組織の境界を溶け合わせる新しい取り組みが行われました。半導体チームによるパッケージングの段階からパワエレチームの技術者が参画し、互いの技術を最適化することで、非常に強い競争優位性を持つ製品を生み出すことに成功しています。
新領域の製品化と熱の電化による脱炭素ソリューション
このような技術開発を持続的に回していくため、成長領域のローリングという考え方が採用されています。研究開発の成果を既存市場から新規市場へと広げ、未参入領域を開拓していく戦略です。
2026年8月には排温水のエネルギーを回収して蒸気を生成する業界初の150度蒸気発生ヒートポンプの発売が予定されています。AIデータセンターの冷却ニーズという時代の要求に合致した冷却機とともに、未利用の熱エネルギーを活用して二酸化炭素の削減に貢献する製品群が成長領域として確かな柱になりつつあります。
株主還元の強化と次期中期経営計画に向けた新たな展望
最後に、持続的な成長企業を目指すための株主還元策についても具体的な方針が示されました。成長と還元の好循環を回すという基本目標のもと、2025年度は配当性向30パーセントを確実に維持します。
さらに2026年度においては、総還元性向50パーセントを目安とし、自社株式の取得を含めた積極的な株主還元を実施すると表明しています。実際に5月25日の段階で予定通りの210億円の自己株式取得を完了しており、還元強化への強い意志がうかがえます。
一方で、総還元性向を固定するだけでは自己資本利益率の向上には直結しないため、来年の次期中期経営計画発表に向けて、成長戦略や投資計画と株主還元をどのように組み合わせていくか、さらに踏み込んだ検討を進めるとしています。
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