蓄電池に関する制度改革。エネ庁委員会での議論を振り返る
蓄電池に関する制度改革。エネ庁委員会での議論を振り返る
蓄電池事業に関わる市場改革についてエネ庁委員会での議論を振り返ってみます。
2024年5月~12月 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会及び系統ワーキンググループ
系統に直接接続される高圧系統用蓄電池は、需給調整市場や容量市場への参入が進んでいますが、2024年4月以降、需給調整市場(特に三次調整力②など)において募集量に対する未達が発生し、蓄電池やDR(ディマンドリスポンス)などの新規リソースの応札時のΔkW単価が非常に高価になるという事象が発生しました。
これが市場価格を押し上げる要因となり、調達費用削減のために累次にわたる募集量削減等の措置が講じられるという市場の混乱を招きました。
また、発電所に併設される「太陽光発電所等併設型(FIP併設型蓄電池)」については、本来は再エネの出力変動吸収に寄与することが期待されていますが、現状では容量市場への参加が不可とされ、需給調整市場への参加にも制度的・技術的課題が残っています。
さらに、スポット市場でのアービトラージ(安値で充電し高値で放電する取引)においても、充電の按分等に制限があり、設置スペースの制約や採算性の問題から導入が思うように進んでいない実態が報告されました。
委員・オブザーバーの発言
- 海外の蓄電池等が安価となる一方で、国内では仕様や工事等の独自要因により費用が下げ止まっている。
- 持続可能で信頼される事業として自立できるよう、適切な規律や制度の検討が求められる。
- また、FIP制度下での併設蓄電池の導入が進んでいない現状に対し、設置スペースや採算性の課題を解決する思い切った対策が必要である。
- 長期脱炭素電源オークションの蓄電池が適切に制御されるか、接続状況の情報整理をしてほしい。

2024年11月~2025年7月 定置用蓄電システム普及拡大検討会
需要場所オンサイトに設置される「業務・産業用(高圧)」および「家庭用(低圧)」の蓄電池、ならびに「系統用蓄電池」の市場での活用と安全性について議論されました。
系統用蓄電池の投資判断が需給調整市場での高収益を前提とされているケースが多いものの、本来はスポット市場などの卸電力市場でのアービトラージ取引を中心に据え、残りを需給調整市場や容量市場でマネタイズする形が望ましいとの方向性が示されました。
また、導入が急増する中で、適切な安全裕度を有していない機器による火災リスクが懸念されており、設置ルールや安全マニュアルの整備、サイバーセキュリティ対策の徹底(JC-STAR認証など)が重要視されています。
2025年10月29日・12月12日 第108回・第109回 制度検討作業部会
需給調整市場における系統用蓄電池やDRなどの応札単価高騰という課題への直接的な対応策が議論されました。
2024年以降の調達コスト急増を受け、2026年度の前日取引化に向けて、一次から三次①の募集量を「1シグマ相当」に削減し、上限価格を大幅に引き下げる(高速商品で15円等)という方針が提示されました。
しかし、この量と価格の同時削減が、すでに投資決定済みの系統用蓄電池プロジェクトやプロジェクトファイナンスの予見性を著しく低下させ、事業環境に深刻な影響を与えるとの懸念が相次ぎました。
委員・オブザーバーの発言
曽我委員
募集量削減と上限価格引き下げの同時導入は、既存および新規の蓄電池案件の投資やプロジェクトファイナンスに大きな影響を及ぼす。新規リソースの投資への配慮として相応か、慎重な対応を求めたい。
小山委員
新規リソースに対する取り扱いを変える場合は、動向を調査した上で検討することが大切である。
秋元委員
募集量を1シグマにした段階で揚水の随意契約が継続すると、エリアによっては蓄電池が参入するスペースが非常に小さくなるのではないかと懸念する。
高橋オブザーバー
前日取引化などに加え、募集量削減と上限価格引き下げを同時に実施することは予見可能性を著しく低下させる。前日取引化を先行して検証すべきであり、1桁円の価格水準では新規投資が難しく、2桁の水準が必要である。
小林オブザーバー
投資回収の前提が変わり、事業の予見性が低下するリスクがある。
2025年12月19日~2026年4月15日 分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ(第1回~第3回)
「低圧リソースアグリゲーション(家庭用蓄電池やエコキュートなどの小規模DR)」の課題と展望が詳細に議論されました。
低圧リソースは、各家庭にどのような機器が設置され、どのように運用されているかというデータが国や一般送配電事業者に十分に把握されていない点が最大の課題とされました。
このため、スマートメーターのデータ活用や、機器を遠接制御するためのIoT化支援が不可欠ですが、IoT化に伴う機器コストの上昇が需要家の負担となり、導入障壁になることも指摘されました。
また、低圧リソース(太陽光+蓄電池等)が系統へ逆潮流を行う際、現状の制度では非化石価値が外れてしまうという問題があり、環境価値を維持したまま逆潮流を促す制度的解決が強く要望されました。
一方、長期脱炭素電源オークションの蓄電池落札結果についても報告されました。
初回入札では、蓄電池・揚水の募集上限100万kWに対し、蓄電池単独で約455.9万kWもの大量の応札があり、最終的に蓄電池は約109.2万kWが落札されました。
また、2025年度(第3回)の落札結果では、CHCJapanの「益田市蓄電所(リチウムイオン、75,633kW)」や「新富町蓄電所(リチウムイオン、36,722kW)」、ヘキサ・エネルギーサービスの「HC25中国第一蓄電システム(リチウムイオン以外、46,927kW)」など、多様な種類の系統用蓄電池が落札されています。
委員・オブザーバーの発言
岩船委員
系統用蓄電池が需給調整市場の収入に過度に依存している現状は問題であり、本来はスポット市場などの値差を利用したアービトラージで活用されるべきだ。一定のボラティリティを許容する市場設計が必要である。また、低圧リソースについては、どこにどの程度存在し、どう運用されているか情報収集を検討すべき。
竹内委員
蓄電池は発電所ではなく「倉庫」であり、卸電力市場での充放電によるアービトラージが本来の姿である。ネガティブプライスの広がり等も重要である。
飯岡委員
サプライチェーン強化の要件化について、過大評価により導入コストが高止まりしないよう定量的な影響評価を求める。
爲近委員補助金ありきではなくマーケットとして成立させることが重要であり、政策の安定性が不可欠である。
井上オブザーバー
低圧リソースの逆潮流を活用する際に非化石扱いが外れる制度的課題があり、解決を要望する。
川口オブザーバー
市場連動型メニューの提供を促すためにもネガティブプライスの導入が必要であり、小規模な電池を含めた適切なインセンティブと火災リスク等の安全対策が必要である。
宮川オブザーバー
各国の産業政策や輸出規制等のサプライチェーンリスクが高まる中、日本国内での電池の安定供給基盤の構築が不可欠である。
2026年4月3日 制度検討作業部会(第113回)
長期脱炭素電源オークションにおける系統用蓄電池等の参加要件の厳格化が議論されました。
初期の入札で想定以上の応札があったことを受け、事業規律を強化し、長期間にわたる安定稼働を担保するため、制度適用期間の上限を40年と設定する案が示されました。
また、世界的な電池供給の偏在リスク(特定国のメーカーへの依存)を低減するため、第3回オークションから導入されたセル製造国の多角化要件(1国あたりの落札上限を30%未満に制限等)に加え、経済安全保障の観点から国産化やサプライチェーン強靱化を評価する仕組みの必要性が議論されました。
委員・オブザーバーの発言
土井委員
適用期間の40年上限について、技術や電源種によっては40年を超える可能性も排除できず、上限価格との相関もある。過度な制約とならないよう実態を見ながら適宜ルールを調整することが良い。
小山委員
制度適用期間の上限設定に賛同しつつ、蓄電池を含む各電源が将来にわたって安定的に運用されるための環境整備の重要性を指摘する。
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