欧州で熱波の中、スポット市場でマイナス価格が頻発。世界で蓄電池導入インセンティブが高まる。

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欧州で異例の熱波、電力市場ではマイナス価格が頻発

欧州では2026年5月下旬にかけて異例の熱波が発生しており、スペイン南部では38〜40℃、フランス南部でも35℃超、英国ロンドンでも35℃前後まで気温が上昇しています。平年比で10℃以上高い地域もあり、欧州メディアでは「歴史的熱波」として報じられています。これは以下に示す2022年に続くものです。

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こうした中、欧州の卸電力市場では、昼間の太陽光発電大量流入によってスポット価格が急低下し、マイナス価格が頻発する状況が続いています。Reutersなどによると、ドイツでは2026年4月上旬、EPEX Spot市場で複数時間にわたりマイナス価格が発生し、一部時間帯では1MWhあたりマイナス100ユーロ近辺まで価格が低下しました。

同様の現象はフランスやオランダでも確認されており、特に晴天時の昼間に価格が急落する傾向が強まっています。一方で夕方以降は、冷房需要の増加や風力低下によって価格が急騰しており、「昼間はマイナス、夜間は高騰」という極端なダックカーブ構造が顕在化しています。

SDACは最低価格をマイナス600ユーロへ拡大

こうした市場環境を受け、欧州単一日前市場(SDAC)は、2026年5月28日から最低入札価格を従来のマイナス500ユーロ/MWhからマイナス600ユーロ/MWhへ拡大すると発表しました。

これは市場運営側が、今後さらに深いマイナス価格が発生する可能性を想定し始めていることを意味しています。従来は一時的な例外現象と見られていたマイナス価格が、再エネ大量導入時代における通常の市場シグナルへ変化しつつあることがうかがえます。

背景には、昼間に集中する太陽光発電と、特定地域へ集中する風力発電があります。一方で、送電網増強や蓄電池導入、需要側のタイムシフトが十分追いついていないため、供給過剰時に価格が急落しやすい構造となっています。

米国ERCOTやSPPでも拡大するマイナス価格

こうした現象は欧州だけではありません。米国テキサス州のERCOT市場でも、風力大量導入地域を中心にマイナス価格が頻発しています。特に西テキサスでは、需要地から遠隔地に巨大風力発電所が集中しているため、送電制約時に価格が大きく下落するケースがあります。

さらに、米国中部のSPP(Southwest Power Pool)でも同様の傾向が強まっています。SPPは米国中西部を中心とする広域系統運用機関で、カンザス州、オクラホマ州、ネブラスカ州などを含む巨大系統を管理しています。

米国バークレー研究所(Berkeley Lab)の分析では、SPP内の一部ノードにおいて、年間の25%以上の時間でマイナス価格が発生していたとされています。これは再エネ導入比率の急拡大と、送電容量不足が組み合わさった結果とみられています。

豪州や北欧でも長時間マイナス価格が定着

オーストラリアでも、NEM(National Electricity Market)においてマイナス価格が拡大しています。特に南オーストラリア州などでは、屋根置き太陽光の大量導入によって昼間需要が大きく減少しており、2025年には一部地域で取引時間の30%以上がマイナス価格になったと報告されています。

北欧でも同様で、フィンランドでは2024年に非常に長時間のマイナス価格を記録しました。風力発電大量導入と低需要、水力発電との組み合わせに加え、地域間送電制約も重なり、価格低下が顕著になっています。

可視化され始めた「柔軟性価値」と蓄電池投資

市場価格が極端なマイナスへ下落し、逆に夕方以降には急騰するという振れ幅が拡大している中で、蓄電池の導入インセンティブは急速に高まっています。マイナス価格時に充電し、高価格時間帯に放電することで、大きな価格差収益を得られる可能性が高まっているためです。

実際、欧州、米国、豪州では、こうした価格ボラティリティを背景に系統用蓄電池投資が急拡大しています。市場側が明確な価格シグナルを発し始めており、再エネ大量導入時代における「柔軟性」の価値が、世界各国で可視化され始めていると言えそうです。

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