カナダ政府、国家電力戦略を発表 2050年へ送電網倍増とAI時代の電力基盤強化へ

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カナダ政府は、2026年5月14日、電力インフラを国家経済戦略の中核に位置付ける「National Electricity Strategy(国家電力戦略)」の策定方針を発表しました。あわせて、マーク・カーニー首相による戦略演説も公開されています。

新戦略では、AIデータセンター、電動車(EV)、産業電化などによる将来的な電力需要増加を見据え、2050年までにカナダ国内の発電・送電インフラ容量を倍増させる方針を掲げました。従来、州単位で分散的に管理されてきた電力システムを、国家レベルの産業政策として再定義する内容となっています。

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東西送電網強化と電源多様化を推進

カナダは現在、水力発電比率が高い一方で、州ごとの系統分断が大きい構造を抱えています。今回の戦略では、州間連系線の増強や東西送電網整備を進めることで、地域間の電力融通能力を高める方向性が示されました。

また、電源構成についても、水力、原子力、風力、太陽光、蓄電池、天然ガスなどを組み合わせた多様化を推進します。特にAIやデータセンター需要拡大への対応では、安定供給能力と脱炭素化の両立が重視されています。

首相演説では、電力を「気候政策」だけでなく、「貿易政策」「産業政策」「主権戦略」「生産性向上策」として位置付けており、国家競争力そのものを左右するインフラとして扱う姿勢が鮮明になりました。

AI時代の“電力安全保障”が新たなテーマに

近年、北米ではAI計算需要拡大に伴い、データセンター向け電力供給が政策課題として急浮上しています。米国でも送電網増強や原子力活用、長期PPA確保が議論されていますが、カナダは豊富な水力資源を背景に、比較的低炭素な電源供給能力を持つ点が特徴です。

一方で、再エネ大量導入時代には、単に発電設備を増やすだけでなく、地域間連系や柔軟性リソース、需給制御の高度化が不可欠になります。今回の国家電力戦略は、従来の「州ごとの公益事業」から、「国家経済インフラ」へと電力政策の位置付けを大きく転換するものともいえます。

また、24時間365日の安定供給や、電源の時間価値・地域価値を意識した制度設計への関心も今後高まる可能性があります。データセンターや産業電化が進展する中、電力そのものが地政学・産業競争力・脱炭素を同時に左右する時代へ入りつつあります。

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