非化石証書のアワリーマッチング対応。その可能性と課題を検証する

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非化石証書とは何か

日本のエネルギー供給は化石燃料への依存度が高く、エネルギーの安定供給や経済効率性の向上による低コストでの供給、そして環境への適合を実現することが長年の課題となっています。

この課題に対応するため、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用を促進する高度化法が制定され、2030年度において小売電気事業者が自ら供給する電気の非化石電源比率を原則44パーセント以上とするという目標が設定されました。

しかし、自前で非化石電源を持たない事業者や取引所からの調達割合が高い新規参入者にとってこの目標達成は困難でした。

そこで、非化石電源の環境価値を顕在化し取引可能にするため、2017年2月に非化石価値取引市場の創設が決定されました。

この制度により、小売電気事業者の調達目標達成を後押しするとともに、FIT賦課金の軽減や発電事業者の非化石電源への設備投資への活用が期待されています。

非化石証書は、FIT電源由来の証書と非FIT電源由来の証書に分けられ、それぞれ再エネ価値取引市場や高度化法義務達成市場で取引される仕組みで運用されています。

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トラッキング付非化石証書の導入と活用

制度創設当初は、非化石証書に環境価値の由来である発電所の情報が必ずしも付与されていませんでした。

しかし、電力需要家からは、国際的に認められる非化石価値を少しでも安く調達したい、需要家自身が直接証書を購入できるようにしてほしい、環境価値の由来である発電所をトラッキングできる証書を拡大してほしいという強い要望が寄せられ、2021年11月に再エネ価値取引市場が創設され、需要家や仲介事業者が市場に直接参加してFIT証書を購入できるようになりました。

さらに、証書に対する全量トラッキング化が進められており、2024年度のオークションからは非FIT証書を含めたすべての証書でトラッキングが実施されることとなりました。

これにより、需要家はどの発電所で発電された電気の環境価値であるかを明確に把握したうえで、国際的な環境イニシアティブへの報告等に活用することが可能となっています。

EnergyTagが定めるGC基準の目的と内容

非化石価値の証明に関する国際的な要件が進化を続ける中、注目を集めているのがEnergyTagが策定した時間粒度別証明書であるGCのスキーム標準です。

この基準は、既存のエネルギー属性証明書の仕組みを補完または代替し、二重計上を厳密に防ぎながら証明書を発行、移転、無効化するためのガイドラインを提供することを目的としています。

発行のフェーズでは、証明書発行者が生産設備の測定データに基づき、1時間以下の粒度でのタイムスタンプを持つ証明書を発行することが求められ、既存の証書システムとの連携による二重発行防止の仕組みが規定されています。

取引のフェーズでは、アカウント間で証明書が移転されますが、異なる制度間で移転する際には対象となるエネルギーの定義等のすり合わせが要求されます。

そして無効化とマッチングのフェーズでは、消費者の消費データと発電データを1時間以下の単位で厳密に突合する時間的マッチングが要求され、蓄電池を通じたエネルギーのタイムシフトに伴う損失等を含めた無効化ルールも詳細に定義されています。

非化石証書のGC化の可能性と課題

現在の日本の非化石証書をこのEnergyTagのGC基準に適用することを考えてみましょう。そこで、現在の制度で可能な点と、新規に対応が必要な項目を挙げてみます。

まず発行面においては、日本でも証書への全量トラッキング化が実施されており、発電所の位置や電源種別といった属性情報を付与する基盤は整いつつあります

しかし、EnergyTagが要求する1時間以下の細かなタイムスタンプは付与されていません。また、既存の証書をキャンセルしてGCを発行するといった、二重計上を防ぐためのシステムアーキテクチャの構築も途上です。

取引面では、非化石価値取引市場での証書移転は可能ですが、現在の市場は約定価格が下限価格に張り付くことが多く、時間的や場所的な希少価値を反映した価格形成がなされていません

無効化の面でも、日本の制度は年間の総量マッチングが基本であり、EnergyTagが求めるリアルタイムでのアワリーマッチングを証明する仕組みや独立した監査体制が備わっていないというギャップがあります。

GC化に向けた方向性

これらのギャップを埋め、日本の非化石証書市場を国際的な要件の進化に対応させるためには、いくつかの解決策を段階的に進める必要があります。

  • 第一に、将来的なアワリーマッチングへの対応を見据え、証書に時間単位のタイムスタンプを付与する制度整備が求められます。
  • 第二に、時間や場所の希少価値を適切に評価し取引できるよう、証書の取引プラットフォームの育成や活用を推進することが重要です。
  • 第三に、系統用蓄電池を介した証書取引を制度的に容認し、生グリーンのタイムシフトを実現していく仕組みを構築する必要が出てきます。

さらに、今後のカーボンプライシングや排出量取引制度の導入を見据え、制度が複雑化している現状を整理し、需要家の行動様式を変える仕掛けを通じて環境価値への購入意欲を高めていくことも重要な視点です。

このように、ギャップはありますが、基盤となるシステムは既に整備されていて、基本的なスペックは備わっているから、あとはテクニカルな議論になると思われます。

当協議会では、引き続き関係者のアワリーマッチングとGC-EAC取引に関する知見の向上に貢献してまります。

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