容量市場の包括的検証と火力発電の行方、第二十五次中間とりまとめが示す制度見直しと燃料別対応方針

· 電力,火力発電,電力システム改革

第二十五次中間とりまとめの背景と政策的な位置づけ

東日本大震災を契機とした電力システム改革の中で、将来にわたる電気の安定供給の確保や電気料金の最大限の抑制、そして事業機会の拡大を目指して様々な取り組みが進められてきました。

その一環として創設された容量市場や需給調整市場、長期脱炭素電源オークションなどの詳細な制度設計を継続して担ってきたのが、総合資源エネルギー調査会の次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会の下に設置された制度検討作業部会です。

同部会では、これまでに市場の運用を通じて顕在化してきた課題や、電気事業を取り巻く国内外の環境変化を的確に踏まえ、適時に制度の見直しを行ってきました。

今回の第二十五次中間とりまとめは、これまでの長きにわたる議論の成果を体系的に整理するとともに、今後予定されている各市場のオークション開催や制度運用にあたって不可欠となる抜本的な見直し方針を提示し、広く社会からのパブリックコメントを求めるために公表された極めて重要な政策文書として位置づけられています。

容量市場の包括的検証と今後の制度見直しの方向性

とりわけ容量市場に関しては、2020年度に初めてメインオークションが開催されて以来、実績が着実に積み重ねられてきました。2025年度には市場開設から5年という大きな節目の年を迎え、第6回となる2029年度実需給向けメインオークションなどが実施されました。

この直近のオークションにおいては、約定総額が過去最高の約2兆2094億円に達し、全国のほぼ全てのエリアで約定価格が指標価格を上回るなど、電源の維持管理費用の急激な高騰が浮き彫りとなりました。

このような憂慮すべき状況を受け、電力広域的運営推進機関を主体として、容量市場が当初の目的通りに機能しているかを根本から見直す包括的検証が開始されています。本とりまとめは、こうした包括的検証のプロセスと連動しながら、今後の供給力確保のあり方や国民負担の抑制策を提示する重要なマイルストーンとなっています。

火力発電の全体的な位置づけと老朽化による維持コストの課題

とりまとめの各論において、石油や天然ガス、石炭を燃料とする火力発電は、日々の電力需給を満たすための確実な供給力として、また天候に左右されやすい再生可能エネルギーの出力変動を柔軟に補う調整力として、日本の電力系統において引き続き必要不可欠な役割を担っていることが明確に示されています。しかしながら同時に、昨今の激しい物価高騰や円安の進行、そして何より発電設備の老朽化に伴い、電源を安全かつ安定的に維持および管理するための費用が急激に上昇しているという厳しい現状が指摘されています。この維持管理コストの上昇傾向は、容量市場のオークションにおいて国が設定する指標価格を大きく上回る高値での応札が増加している最大の要因として分析されています。

高経年電源への依存と計画外停止率の増加に関する実態の反映

足元の増加する電力需要を確実に満たすためには、高効率な最新鋭の発電所だけでは到底足りず、他の電源に比べて相対的に維持コストが高く故障リスクも抱える高経年電源、すなわち老朽化した火力発電所にも大きく頼らざるを得ないという現実があります。

実際に、大規模な設備故障などによる計画外停止率のデータを詳細に分析したところ、直近3ヶ年の平均において火力発電や揚水発電の停止率が明確に増加傾向にあることが確認されました。このため、将来の供給信頼度を評価し目標調達量を決定するにあたっては、古いデータに基づくのではなく最新の停止率の実績を用いて算定を行うよう、より実態に即した精緻な制度の見直しが行われることとなりました。

天然ガスおよび液化天然ガス火力のコスト動向と新設方針

LNG火力発電に関する具体的な記述では、最新の発電コスト検証ワーキンググループの報告を引用し、建設費等の初期コストが大幅に上昇していることが特筆されています。

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資本費や運転維持費が激しく変動する現在の市場環境下において、液化天然ガス火力の建設費は、過去の試算と比較して約2.2倍にまで跳ね上がっていることが確認されました。

このような深刻なコスト高騰は、発電事業者の将来的な投資回収リスクを著しく高めるだけでなく、容量市場における基準価格の算定にも多大なる影響を及ぼす決定的な要素となっています。

指標価格のモデルプラント設定と新設投資を促進する仕組みの構築

容量市場において価格の指標となるネットコーンの算定基準には、仮想のモデルプラントが設定されています。近年の発電所の建設実績を精査すると、新たに運転を開始する液化天然ガス火力プラントの98パーセントが、発電効率に優れたコンバインドサイクルガスタービン方式を採用しているという実態が明らかになりました。

これを受けて、指標価格の算定にあたっては引き続き同方式の液化天然ガス火力をモデルプラントとして採用することが正式に確認されました。また、老朽化設備の代替となる新設投資については、主に長期脱炭素電源オークションの枠組みを通じて継続的な募集を行い、事業者が創意工夫によって適正な収益を確保しながら力強く投資を進められる事業環境を整備していく方針が示されています。

石炭火力発電の稼働抑制措置とその背景にある政策的意図

地球温暖化対策と脱炭素化に向けた世界的な潮流の中、日本においても2030年に向けて環境負荷の大きい非効率な石炭火力発電のフェードアウトを促進する方針が国策として掲げられています。その具体的な市場を通じた施策として、2025年度の実需給から容量市場において新たな経済的ペナルティ制度である稼働抑制誘導措置が導入されました。

これは、設計効率が42パーセント未満の非効率な石炭火力を対象電源とし、年間の設備利用率が50パーセントを超えた場合、市場から得られる容量確保契約金額を20パーセント減額するという厳しい仕組みです。これにより、万が一の際の供給力としては維持しつつも、平常時の実際の発電量を確実に減らしていくという難しい舵取りが進められています。

中東情勢を踏まえた緊急特例対応と石油火力等を含めた退出リスク

しかしながら、足元では地政学的な緊張、特に中東情勢の悪化により液化天然ガスの安定的な輸入調達に対する不確実性が急速に高まっています。この非常事態に対応するため、2026年度においては緊急的な安定供給対策として、特例的に非効率石炭火力の稼働抑制措置を適用しないという決定が下されました。

これにより石炭火力の稼働を政策的に高め、年間で約50万トンもの液化天然ガス燃料を節約して燃料枯渇の有事に備える狙いがあります。

また、とりまとめに付随する休廃止見通しの推移データからは、石油火力発電などが今後数年で順次市場から姿を消していく見通しであることも読み取れます。

今後は排出量取引制度などのカーボンプライシングの本格導入により、石炭や石油火力の経済的優位性がさらに低下し、老朽化した火力発電所の市場からの退出が一段と加速する可能性が強く示唆されています。

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