英国NESO、北欧電力取引所Nord PoolらとGC-EAC取引実証を実施【第1回】全体の概要
英国NESO、北欧電力取引所Nord PoolらとGC-EAC取引実証を実施【第1回】全体の概要
英国のNational Energy System Operator(NESO)は、2025年7月、24/7カーボンフリーエネルギー(CFE)属性証書の取引が電力システムに与える影響に関する実証的フィージビリティスタディの結果を発表しました。

本分析は、時間単位での再エネ証書取引(GC-EAC)を前提とし、電力市場設計や需給運用への影響を評価したものです。
NESOは英国の電力システム全体の運用を担う中核機関であり、系統運用・需給バランスの維持に加え、将来の市場設計や脱炭素戦略の検討においても重要な役割を担っています。今回の検討は、単なる制度論ではなく、実際の運用主体が自ら関与している点に特徴があります。
本フィージビリティスタディは、NESOをリードとして、コンサルティング企業AFRY、証書管理ソフトウェアを提供するGranular Energy、そして欧州の電力取引所であるNord Poolが参加する形で実施されています。特にNord Poolは、実際に電力市場のデイアヘッドおよびイントラデイ取引を運営する主体であり、GC-EACの取引実証に直接関与している点から、将来的な市場化に向けた強いコミットメントが示唆されます。
実証の概要
本調査では、従来の年次単位でマッチングされるEAC(Energy Attribute Certificates)から、時間単位(hourlyまたはsub-hourly)での24/7 CFE EAC(GC-EAC)への移行が、ネットゼロ電力システムへの移行を加速させる可能性があると整理されています。
EACは、再生可能エネルギー調達やScope2排出量報告において広く利用されており、消費者がグリーン電力を選択することで資金が電力脱炭素化に流入する仕組みです。しかし現行制度では、年間ベースのマッチングにとどまり、実際の電力需給の時間的変動を反映していないという課題が存在します。
この点に対し、時間一致型の24/7 CFE EACは、消費と発電の時間的整合性を可視化し、証書の信頼性を高めるとともに、需給の逼迫・余剰に応じた価格シグナルを創出します。特に、70〜95%程度の時間一致率を持つ現行の先進的な取り組みから、将来的には100%時間一致を目指す動きが広がると見込まれています。
さらに、こうした証書取引は、需要側のデマンドレスポンス(DSR)や蓄電池などの柔軟性資源への投資を促進する機能を持つと整理されています。現行の年次証書では評価されにくいこれらの資源が、新たな収益源を得ることで、電力システム全体の柔軟性向上に寄与する構造が示されています。
また、GHG ProtocolのScope2報告基準の見直しにより、より細粒度な排出報告が求められる方向にあることから、今後5年程度で24/7マッチングの普及が加速する可能性があるとしています。
実証の目的
本プロジェクトは、24/7 CFE EACの導入が英国の電力システム運用および市場参加者にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としています。
従来のEAC(英国ではREGO)は、再エネ由来電力であることを証明する手段として用いられてきましたが、年単位でのマッチングにとどまるため、実際の電力供給の物理的実態との乖離が指摘されてきました。この乖離は、グリーンウォッシュへの懸念を生み、より精緻な時間粒度での証書への需要を高める要因となっています。
時間単位でのマッチングは、再エネ供給が不足する時間帯における需給調整行動を促し、需要側の柔軟性を引き出すことが可能になります。これにより、消費者は自らの電力使用と再エネ供給の関係を理解し、段階的に一致率を改善することができると整理されています。
一方で、こうした証書の取引が電力市場全体や運用に与える影響については、これまで実証的な知見が限られていたことから、本調査ではモデリングとトレーディングパイロットを組み合わせた分析が実施されています。
実証での検討項目
本調査の主な検討項目は、①導入のスピードと普及規模、②電力システム運用への影響、③市場参加者への影響、④市場設計との相互作用、の4点に整理されています。
特に、英国において検討が進むゾーン価格制度(zonal pricing)との関係や、電力市場改革(REMA)との整合性が重要な論点として位置づけられています。時間一致型証書は、価格シグナルを通じて投資・運用行動に影響を与えるため、市場設計全体との整合が不可欠とされています。
また、政府機関(DESNZ)、規制当局(Ofgem)、電力事業者、トレーダー、蓄電事業者など、多様なステークホルダーとの対話を通じて検討が進められた点も特徴です。
本分析は、ネットワーク・イノベーション・アローワンス(NIA)により資金提供され、英国電力市場における新たな証書制度の実装可能性を検討する基礎的な実証として位置づけられています。
次の記事では、実際に行われた24/7 CFE証書の取引実証の具体的な設計と結果について詳しく紹介します。
英国NESOのGC-EAC取引実証報告書
解説者:株式会社電力シェアリング・一般社団法人アワリーマッチング推進協議会
【第1回】全体の実施概要
【第2回】実証目的:電力システムと再エネ統合
【第3回】GC-EAC取引スキームの基本
【第4回】価格形成と市場メカニズム
【第5回】電力需給制約との関係性
【第6回】実験結果:価格形成
【第8回】電力系統運用への影響
【第9回】ゾーン市場:地域間格差と投資誘導効果
☛Topへ
英国NESO、北欧電力取引所Nord PoolらとGC-EAC取引実証を実施。
英国NESO、北欧電力取引所Nord PoolらとGC-EAC取引実証を実施。
