【英国NESO実証(第8回)】系統運用への影響は限定的と評価

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英国のNational Energy System Operator(NESO)は、24/7カーボンフリーエネルギー(CFE)証書の導入が系統運用に与える影響について分析結果を発表しました。本パートでは、需給調整、送電制約、リディスパッチへの影響が整理されています。

系統運用への基本的影響

分析では、24/7 CFE証書の取引は、系統運用に対して大きなリスクをもたらすものではないと評価されています。むしろ、供給不足時の価格シグナルにより、蓄電池やデマンドレスポンスといった柔軟性資源の活用が促進され、運用上のメリットが生じる可能性が示されています。

柔軟な需要は時間単位での需給調整を可能にし、CFE供給と需要の一致を促進することで、システム全体への負荷を低減します。図示されたケースでは、需要の時間シフトによりピーク時の需給ギャップが縮小される様子が確認されています。

送電混雑への影響

24/7 CFE市場の導入が送電混雑に与える影響は限定的とされています。英国のような単一価格ゾーンにおいては、混雑は主に風力発電の出力変動に起因しており、証書市場の導入によって大きく変化するものではありません。

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例えば、スコットランドとイングランド間の送電制約(B6境界)は風況に強く依存しており、風力発電量が多い時間帯に混雑が発生しやすい構造です。このような状況では、証書価格は低下し、電力フローが多い時間帯でも証書価格は必ずしも高くならない傾向があります。

また、証書市場が逼迫する時間帯は風力出力が低い場合が多く、送電混雑とは異なるタイミングで発生するため、両者の相関は限定的とされています。

リディスパッチコストへの影響

24/7 CFE証書は、リディスパッチコストの増加要因とはならない可能性が高いと評価されています。証書による追加収益が発電事業者の入札行動に影響を与える可能性はあるものの、実際の運用では供給過剰時には証書価格がゼロ近傍となるため、リディスパッチの増加にはつながりにくい構造です。

特に、CFE供給が豊富な時間帯では証書価格が低下し、出力抑制時のインセンティブが過度に高まることはないとされています。この点は、常に正の価格を持つ年次証書制度と比較して、より実態に即した価格形成となる特徴です。

証書価格分布と供給の関係

分析では、証書価格が正の値を持つのは供給が不足する時間帯に限定されることが示されています。ある試算では、全時間のうち約30%未満の時間帯でのみ価格が発生し、それらは主に風力出力が低い時間帯に集中しています。

この結果は、証書価格が供給状況に強く依存していることを示しており、再エネ出力の変動が価格形成に直接影響を与える構造が確認されています。

制度導入に向けた課題

制度導入にあたっては、流動性の確保や価格の透明性、リスク管理の観点から追加的な検討が必要とされています。特に、流動性不足や市場設計の不確実性は、系統運用への影響を通じてNESOにも影響を及ぼす可能性があります。

また、長期蓄電などへの投資を促進する可能性がある一方で、ルール設計次第ではリディスパッチコストの増加リスクも存在するため、制度設計と運用ルールの最適化が重要とされています。

さらに、市場の予見可能性を高めるためには、価格報告や需給情報の開示など、透明性向上の取り組みが必要とされています。

今後の検討方向

分析では、24/7 CFE証書は投資インセンティブを強化しつつも、それ単独では市場を形成する十分条件とはならないと整理されています。他の市場制度や政策との連携を前提としながら導入を進める必要があります。

また、制度の実装に向けては、規制当局(Ofgem)や政府(DESNZ)によるさらなる検討と、関係者との対話が求められています。市場設計の精緻化とともに、流動性確保や価格安定性を高める施策が今後の重要な論点となります。

英国NESOのGC-EAC取引実証報告書

解説者:株式会社電力シェアリング・一般社団法人アワリーマッチング推進協議会