【英国NESOのGC-EAC取引実証報告(第2回)】GC-EAC取引は電力スステムのどのような課題を解決するのか?
【英国NESOのGC-EAC取引実証報告(第2回)】GC-EAC取引は電力スステムのどのような課題を解決するのか?
英国のNational Energy System Operator(NESO)は、その報告書で、GC-EAC取引の導入意義を詳しく記述しています。
当社での補足も交えて解説いたします。これは歴史的といってもいい素晴らしい報告書なので、是非皆様も原典にあたってみてください。
なぜGC-EAC取引が再エネの電力システム統合に必要なのか?
時間単位での証書マッチングは、電力消費と再エネ供給の時間的な不一致を是正する手段として位置付けられています。従来のREGOなどの証書は、年次または月次単位でのマッチングに基づいており、実際の電力需給とは乖離が生じていました。より細粒度の証書へ移行することで、証書市場と電力市場の関係性がより直接的に結び付く構造になります。
電力消費者の多くは、小売電気事業者やPPAを通じて電力を調達しており、消費者は供給者を通じて電力市場に参加しています。このため、時間一致型証書の導入は、小売事業者やPPA契約を通じた調達行動そのものに影響を及ぼすと考えられます。
図表では、発電事業者から卸電力市場を経由し、小売事業者を通じて需要家に供給される電力と並行して、時間単位のEACが流通する構造が示されています。これにより、需要家は時間単位での一致状況を把握できるようになり、透明性が向上すると整理されています。

時間一致がもたらす行動変化
時間単位での一致を求める仕組みは、需要側・供給側双方の行動に影響を与えます。需要家にとっては、電力消費の時間を調整することで一致率を改善するインセンティブが生まれます。例えば、空調やEV充電の時間帯を変更するなど、比較的単純な運用変更でも効果が見込まれます。
一方、供給側では、再エネ発電の出力変動に対応するため、蓄電池や柔軟性資源の活用が重要になります。証書価格が時間帯ごとに変動することで、供給不足時間帯における価値が高まり、投資判断にも影響を与える構造が形成されます。
需給ギャップの可視化と課題
分析では、1週間の需要プロファイルを例に、時間一致の実態が示されています。平均的には再エネ供給と蓄電によって需要を満たすことが可能であるものの、風力発電の出力が低い時間帯などでは、時間単位で供給不足が発生します。このような時間帯は非一致時間(non-matched hours)として認識されます。

具体的には、168時間のうち56時間において再エネ供給が需要を満たさず、時間一致率は約67%にとどまるケースが示されています。このように、年次では達成されているように見える再エネ利用も、時間単位では不足が顕在化する点が重要です。
この結果は、単純な再エネ導入量の増加だけでは完全な時間一致が達成できないことを示しており、柔軟性資源の重要性を裏付けるものです。
電力システム全体へのインパクト
時間一致型証書は、単なる環境価値の証明手段にとどまらず、電力システム全体の運用に影響を与える仕組みとして位置付けられます。需要側の行動変容、供給側の投資判断、そして市場設計の在り方が相互に連動することで、より効率的な脱炭素化が可能になると考えられています。
また、蓄電事業者や電力小売事業者が需要家と連携し、需給ギャップを埋める役割を担うことで、新たなビジネス機会が創出される可能性も示されています。こうした仕組みは、従来の証書制度では十分に評価されてこなかった柔軟性の価値を顕在化させるものです。
時間単位での電力利用と再エネ供給の整合を図る取り組みは、電力市場と証書市場を統合する方向に進展しており、今後の制度設計において重要な論点となる見通しです。
英国NESOのGC-EAC取引実証報告書
解説者:株式会社電力シェアリング・一般社団法人アワリーマッチング推進協議会
【第1回】全体の実施概要
【第2回】実証目的:電力システムと再エネ統合
【第3回】GC-EAC取引スキームの基本
【第4回】価格形成と市場メカニズム
【第5回】電力需給制約との関係性
【第6回】実験結果:価格形成
【第8回】電力系統運用への影響
【第9回】ゾーン市場:地域間格差と投資誘導効果
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