【英国NESO実証(第5回)】GC-EAC市場のシステム影響を分析 電力市場統合と需給制約の関係性とは
【英国NESO実証(第5回)】GC-EAC市場のシステム影響を分析 電力市場統合と需給制約の関係性とは
英国のNational Energy System Operator(NESO)は、24/7カーボンフリーエネルギー(CFE)証書の導入が電力システム全体に与える影響について、モデリング分析の結果を発表しました。本パートでは、電力市場と証書市場を統合的に捉えた際の需給構造や制約条件が整理されています。
モデリングの目的と前提
本モデリングの目的は、24/7 CFE証書取引が市場およびシステム運用にどのような影響を与えるかを明らかにすることにあります。具体的には、証書価格の水準、特定技術への投資誘因、需給調整の難易度、市場参加者への影響、複数ゾーン市場での取引のあり方といった論点が検討されています。
分析では、NESOの電力需給シナリオ(FES 2024)を基礎とし、高い蓄電容量や原子力の寄与を含むケースを想定するとともに、蓄電不足や原子力を除外した感度分析も実施されています。また、現行のREGO市場は価格変動が大きく、投資判断を支えるには不十分であるとの指摘も踏まえられています。
CFE市場とブラウン市場の分離
分析では、電力市場を「ブラウン市場(化石燃料を含む全電源)」と「CFE市場(カーボンフリー電源)」に分けてモデル化しています。総供給は両市場の合計、総需要も両市場の合計として扱われます。

24/7 CFE証書の需要は、カーボンフリー電力への需要全体に対応し、例えば市場の10%が証書に参加する場合、その10%がCFE市場に帰属します。分析では、2024年から2030年にかけて市場参加率が60%まで上昇し、その後2050年に向けて45%まで低下するシナリオが設定されています。
また、CFE市場は余剰電力をブラウン市場にゼロコストで供給できる一方、ブラウン市場からCFE市場への供給は最大100ポンド/MWhの価格制約が設定されています。CFE供給には原子力および再生可能エネルギーが含まれ、化石燃料は除外されています。
蓄電池の役割と制約
蓄電池は、CFE電力とブラウン電力の双方を蓄えることが可能ですが、24/7 CFEとして認定されるためには、充電から放電まで継続的にCFE電力で満たされている必要があります。このため、蓄電事業者は充電時に証書を取得し、放電時にその価値を反映することが求められます。

蓄電池は同一設備内でCFEとブラウン電力の容量を共有できますが、設備容量の物理制約を超えることはできません。また、CFEサイクルとブラウンサイクルを分離して運用することも可能とされています。
越境取引とグリーンウォッシュ回避
分析では、グリーンウォッシュを防ぐために、CFEのフローは物理的な電力フローと整合する必要があるとされています。英国市場では単一価格ゾーンが採用されていますが、ゾーン分割や国際連系を考慮する場合には、ゾーン間のエネルギーフローを明確にする必要があります。
具体的には、異なるゾーンからCFEを購入する場合、そのゾーン間に実際の電力フローが存在することが条件とされます。また、CFEフローはエネルギーフローを下回ることはできず、方向も一致している必要があります。
この制約により、証書のみが独立して移転することを防ぎ、物理的な電力供給と環境価値の整合性を確保する設計となっています。
システム統合への示唆
本モデリングは、24/7 CFE証書が単独で存在するのではなく、電力市場全体の構造と密接に結びつくことを示しています。市場分離、蓄電制約、ゾーン間フローといった要素が相互に作用し、証書市場の設計がシステム全体の運用に影響を与える構造が明確化されています。
時間一致型証書の導入は、単なる環境価値の精緻化にとどまらず、電力市場の設計そのものに影響を及ぼす可能性があり、今後の制度検討において重要な論点となることが示唆されています。
英国NESOのGC-EAC取引実証報告書
解説者:株式会社電力シェアリング・一般社団法人アワリーマッチング推進協議会
【第1回】全体の実施概要
【第2回】実証目的:電力システムと再エネ統合
【第3回】GC-EAC取引スキームの基本
【第4回】価格形成と市場メカニズム
【第5回】電力需給制約との関係性
【第6回】実験結果:価格形成
【第8回】電力系統運用への影響
【第9回】ゾーン市場:地域間格差と投資誘導効果
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