【第3回長期脱炭素電源オークション】蓄電池の落札価格水準と第4回の展望
【第3回長期脱炭素電源オークション】蓄電池の落札価格水準と第4回の展望
第三回オークションにおける蓄電池の落札結果と落札金額の妥当性
第3回長期脱炭素電源オークションでは、蓄電池に対する事業者の投資意欲は衰えることなく、激しいサバイバル競争が繰り広げられました。
2026年5月13日に公表された結果によれば、リチウムイオン蓄電池の区分には152.5万キロワット、リチウムイオン以外の次世代型蓄電池の区分には120.6万キロワットという、それぞれ設定された募集上限の40万キロワットを大きく上回る応札が殺到しました。

実際の約定処理においては、全体の募集量目標を満たすためにあらかじめ定められた限界電源の取り扱いに関する特例ルールが適用された結果、リチウムイオン蓄電池は上限を超過して55.1万キロワット、リチウムイオン以外の蓄電池も同様に上限を超過して70.0万キロワットが落札されました。
この第3回における落札金額の妥当性についてですが、極めて高い応札倍率によって市場の競争メカニズムが健全かつ強力に機能し、妥当な水準に落ち着いたと専門家から評価されています。インフレ等に対応するため制度全体として応札価格の上限閾値が引き上げられていたものの、事業者はマルチプライス方式の下で確実に落札を勝ち取るため、資本費の徹底的な低減努力や、将来の卸電力市場および需給調整市場での収益を精緻にシミュレーションした上で、限界まで切り詰めた応札価格を提示しました。
その結果、脱炭素電源全体の加重平均約定価格は1キロワットあたり年間11.1万円と上限価格の約5.5割という低い水準に抑え込まれました。
2026年5月13日に電力広域的運営推進機関から公表された「容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025年度)別紙落札電源一覧」を記載します。
リチウムイオン蓄電池(落札容量順:全10件)
順位 応札事業者名 落札案件名 落札容量
- 合同会社バッテリーパーク20 宮城石巻蓄電所2号 114,012kW
- CS青森八戸ESS合同会社 CS青森八戸2蓄電所 90,734kW
- CHCJapan株式会社 益田市蓄電所 75,633kW
- 合同会社NRE-54インベストメント NRE中川第ニ蓄電所 46,828kW
- 合同会社バッテリーパーク15 鹿児島薩摩川内蓄電所 45,705kW
- 合同会社ホモデウス HD1号 45,192kW
- CHCJapan株式会社 新富町蓄電所 36,722kW
- 合同会社ポーラーベアー しろくま33 33,737kW
- Stonepeak Kingdom Holdings 合同会社 Kingdom-1 32,778kW
- 合同会社ポーラーベアー しろくま36 30,128kW
リチウムイオン蓄電池は、短時間調整力や再エネ出力変動対応の中心です。特に東北・九州エリア案件が目立っています。
非リチウム系蓄電池(落札容量順:全9件)
順位 応札事業者名 落札案件名 落札容量
- 合同会社蓄電所3号 Battery116号系統用蓄電所 141,527kW
- 合同会社蓄電所3号 Battery23号系統用蓄電所 140,098kW
- Stonepeak Kingdom Holdings 合同会社 Kingdom-3 95,582kW
- 合同会社ZEUS ZEUS-A 75,165kW
- 合同会社ZEUS ZEUS-B 74,163kW
- ヘキサ・エネルギーサービス合同会社 HC25中国第一蓄電システム 46,927kW
- Stonepeak Kingdom Holdings 合同会社 Kingdom-6 45,931kW
- ヘキサ・エネルギーサービス合同会社 HC25東北第二蓄電システム 43,543kW
- 合同会社蓄電所1号 蓄電所3号 36,722kW
非リチウム系では長時間蓄電や系統安定化用途を狙った大型案件が多いのが特徴です。
これまでの経緯
長期脱炭素電源オークションは、2050年のカーボンニュートラル実現と将来の電力安定供給を両立させるため、脱炭素電源への新規投資に対して原則20年間にわたり固定費水準の容量収入を保証する仕組みとして2023年度から開始されました。
この制度において、開始当初から際立った存在感を示し、市場の台風の目となったのが系統用蓄電池です。
第1回入札では、脱炭素電源全体の募集量400万キロワットに対して、蓄電池単独で455.9万キロワットもの圧倒的な応札が殺到し、最終的に109.2万キロワットが落札されました。
続く2024年度の第2回入札においてもその勢いはとどまらず、3時間から6時間の蓄電池で514.0万キロワットの応札に対して96.1万キロワットが落札され、6時間以上の蓄電池でも181.6万キロワットの応札に対して40.9万キロワットが落札されるなど、両回ともに応札容量が落札容量を大幅に上回る極めて競争の激しい状態が継続しました。
この背景には、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う出力変動を吸収する調整力として蓄電池ビジネスへの社会的期待が高まったことと、卸電力市場や需給調整市場での価格ボラティリティを利用したアービトラージ収益を狙う事業者が急増したことが挙げられます。
需給調整市場の環境変化と蓄電池事業に関する委員会での議論と制度変更
蓄電池の大量参入が続く中、経済産業省の総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会や分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループなどの関連委員会では、蓄電池を取り巻く市場環境の激変と制度のあり方について活発かつ深刻な議論が交わされました。
特に大きな論点となったのが、需給調整市場における蓄電池事業者の応札行動と調整力調達コストの異常な高騰です。
2024年の需給調整市場全面開場以降、一部の系統用蓄電池事業者が上限価格の設定されていない三次調整力2などの商品区分で極めて高額な価格で応札を繰り返し、結果として再生可能エネルギー賦課金で賄われる調整力調達費用が急激に膨張する事態が発生しました。
これを受けて国は市場の規律を取り戻すため、需給調整市場における募集量削減係数の導入や、一次および二次1、複合商品の上限価格を段階的に引き下げるという厳しい制度変更を決定しました。
委員会で示された蓄電池事業の収益性モデルケースによれば、資本費がキロワット時あたり6万円の設備において内部収益率5パーセントから10パーセントを確保するためには、需給調整市場で継続的に高い単価での約定が必要ですが、市場ルールの厳格化によりその達成は極めて困難になりつつあります。
こうした事業環境の悪化と並行して、長期脱炭素電源オークションにおける蓄電池のルールも厳格化の方向へ舵を切りました。
第3回入札に向けた制度変更として、蓄電池が市場の落札枠を独占することを防ぐため、募集区分をリチウムイオン蓄電池および揚水発電リプレース等の区分と、リチウムイオン以外の蓄電池および揚水新設等の区分の2つに分割し、それぞれに対して40万キロワットという厳格な募集上限が設定されました。
さらに、特定の国や地域に依存する蓄電池のサプライチェーンの脆弱性が経済安全保障上の重大なリスクとして議論され、日本を除く特定のセル製造国および地域1カ国あたりの落札容量が総落札容量の30パーセント未満に制限されるという、サプライチェーンの多角化を義務付ける新たなルールが導入されるに至りました。
今回の約定結果が第四回以降のオークションへ与える影響と今後の展望
第3回オークションにおいて蓄電池が圧倒的な競争率を示したことと、依然として特定の国やメーカーに依存しているサプライチェーンのリスク問題は、来年1月に予定されている第4回オークション以降の制度設計に影響を与える可能性があります。
制度検討作業部会での議論を経て、第4回入札では蓄電池の約定方法に関する抜本的なルール変更が導入される方向で検討が進められています。
具体的には、単なる価格競争だけでなく、経済安全保障の観点を市場メカニズムの根幹に直接組み込む措置です。経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づき、特定重要物資である蓄電池の安定供給確保を図るための供給確保計画を作成し、経済産業省から正式に認定を受けているメーカーが製造するセルを使用する案件を極めて優遇する仕組みが提案されています。
この新たなルールでは、募集上限の範囲内において、まず経済安保推進法の認定を受けたセルを使用する蓄電池案件と揚水発電のリプレース案件を価格の低い順に優先的に約定させます。そして、その優先枠だけで募集上限が埋まらなかった場合に限り、認定を受けていない蓄電池案件を次に価格の低い順に落札させるという二段構えの優先約定の仕組みが導入されます。
この制度変更が次回のオークションに与える量や価格、条件面での影響は計り知れません。量的な条件面では、安価な海外製セルに依存しきっている事業者は落札の機会を大きく失うリスクに直面し、国内のサプライチェーン強靭化やレジリエンス向上に寄与する質の高い案件が有利になります。
価格の面では、認定要件を満たすための国内投資や調達先の多角化にかかる追加コストが今後の応札価格に反映されることが予想されます。そこでは、経済安全保障という価値を適正に織り込んだ新たな価格形成となる可能性もあります。
一般社団法人アワリーマッチング推進協議会の運営する電力・脱炭素無料ニュースサイト

