系統用蓄電池の火災リスクと安全対策

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再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、需給調整の切り札として「系統用蓄電池」の設置が世界中で加速しています。一方で、大容量のエネルギーを蓄える設備の性質上、火災リスクが不可避です。

米国カリフォルニア州のモスランディング蓄電所では、複数回の過熱事故が発生し、周辺道路の閉鎖や住民への避難指示が出るなど、社会インフラとしての信頼性を揺るがす事態となりました。

国内でも、2024年3月には、鹿児島県でメガソーラー併設型蓄電設備で建屋が全焼する事故が発生しました。消火活動中に爆発が起き、消防隊員4人が負傷。鎮火までに約20時間を要しました。

これらの事例に共通するのは、一度熱暴走が始まると従来の消火活動が極めて困難になるという点です。

蓄電池火災の主要因と熱暴走リスク

系統用蓄電池の多くに採用されているリチウムイオン電池は、高エネルギー密度である反面、熱暴走(サーマルランウェイ)のリスクを内包しています。

内部短絡、過充電、外部からの加熱などをきっかけにセルの温度が急上昇すると、化学反応が加速的に連鎖し、自ら発熱を続ける状態に陥ります。

また、蓄電池の「頭脳」であるBMS(バッテリーマネジメントシステム)の制御不良やセンサー異常、さらには落雷や浸水といった外部要因、施工時の配線ミスなども、深刻な事故の引き金となり得ます。これらは単一の要因ではなく、複数の要素が複合的に重なることで大規模火災へと発展する傾向があります。

法的規制と安全基準

事故の深刻化を受け、法的規制と安全基準の整備への取り組みが進められています。

経済産業省は、上記事故を踏まえて保安確保の徹底に関する注意喚起を行いました。定期点検において結露、錆、異臭、異常な温度上昇などの有無を厳格に確認し、必要に応じた部品交換を確実に行うよう警告しています。

また、以下のような消防法の改正が行われています。

消防法の改正(2024年施行): 屋外設置時の建物との離隔距離について、原則「3メートル以上」の確保が求められるようになりました。ただし、JIS C 4412等の日本産業規格に適合し、高い安全性が証明された製品については、この距離を短縮できる「緩和規定」が適用されます。この規定は用地の効率運用のためのインセンティブとなっています。

消防庁ガイドライン: 延焼防止措置や可燃性ガスの滞留防止策などが具体化されており、設計段階からの準拠が求められます。

事業者が取るべき具体的対策

火災リスクは「起こり得るもの」として、多層的な防護策を講じる必要があります。

1. 高度な監視と自動停止: 高精度なBMSによる24時間の遠隔モニタリングを行い、異常予兆を検知した瞬間にフェイルセーフで自動停止する仕組みを導入する。

2. 熱管理と換気設計: 夏季の高温環境や負荷変動に対応できる冷却システムの余裕、および熱暴走時に発生するガスを安全に排出する構造とする。

3. 被害の局所化(防火区画): 万一の発火に備え、ユニット間や建屋内に延焼防止壁を設置し、設備全体への波及を食い止める物理的な防護策を講じる。

まとめ

系統用蓄電池の火災リスクは、適切な法規制の遵守、最新規格(JIS規格等)への適合、そして24時間の監視体制といった多層的な管理によって十分に低減可能です。

これらへの投資は単なる「コスト」ではなく、事業の継続性と社会的信頼を担保するための「インフラ投資」そのものです。リスクを体系的に理解し、計画段階から安全性への配慮を組み込むことが、蓄電池事業を長期的に成功させる鍵となります。

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