銀90ドル突破で太陽光パネル原料価格急騰、中国デフレ輸出からグリーンインフレへの転換も

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2026年に入り、貴金属市場では金に続き銀(シルバー)が歴史的な高騰を見せています。20日午前8時現在、金は1オンス4,676ドル、銀は94.3ドルといずれも史上最高値付近で推移しています。

当研究所では、これまでの推移と今後のイベントを考慮すれば、銀は1週間以内に100ドルを突破する可能性すらあると分析しています。

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金銀ともに過去最高値を更新

現在の貴金属市場は、単なるコモディティ価格の上昇を超えた「通貨への不信」を映し出しています。ロンドン市場および米国先物市場(COMEX)における過去1年間の推移を振り返ると、銀価格は当初の1オンス20ドル台から、2025年後半には60ドルを突破し、現在は100ドルという未踏の領域を伺う展開となっています。

グリーンランド問題とFRB議長への訴追リスク

今週の高騰の主因は、欧米間の深刻な亀裂です。トランプ政権がデンマーク領グリーンランドの買収・支配権を強く主張し、対抗する欧州諸国に対して関税措置を強行したことで、北大西洋条約機構(NATO)内部に戦後最大の亀裂が生じました。この地政学的リスクが、安全資産としての貴金属需要を爆発させています。

加えて、米国国内の金融システムへの懸念も見逃せません。パウエルFRB議長に対する連邦検察の捜査開始や刑事訴追の警告といった異例の事態は、中央銀行の独立性と米ドルの信認を根底から揺るがしています。ドルの「番人」が政治的圧力に晒される中で、投資家は法定通貨から逃避し、金や銀といった「物理的な裏付け」を持つ資産へ資金を移しています。

外国人アナリストが注視する「高市トレード」と日本の財政拡張

国外のアナリストは、日本の動向も世界的なインフレ要因として指摘しています。高市政権による「責任ある積極財政」への転換は、市場で「高市トレード」として意識されています。

衆議院総選挙で各党が示している、減税や補助金に関する政策は、日本発の流動性拡大を連想させ、それが国際的な貴金属価格を押し上げる一助となっているとの分析が、欧米の投資家の間で見られています。

世界的に、公的債務が膨張、インフレが進行するなかで、日本を「トップランナー」として、「炭鉱のカナリア」と指摘する声もあります。

太陽光パネル需要の急増と中国「デフレ輸出」の終焉リスク

銀の価格高騰は、実需面でも深刻な影響を及ぼしています。銀は優れた導電性から太陽光パネルの製造に不可欠な原料ですが、最近の価格高騰により、パネルの製造コストに占める銀の比率が急速に高まっています。

パネル1kWあたりの銀使用量とコスト: 現在の一般的な太陽光パネルの銀使用量は、1kWあたり 9gまで節減が進んでいますが、それでも価格高騰がその努力を打ち消しています。

原材料費に占める銀の割合: 2023年にはパネル全体の製造コストのわずか 3.4% に過ぎなかった銀(銀ペースト)のコストシェアは、2025年に 14% へ上昇。さらに2026年1月の暴騰を受け、現在は 29% にまで達しているという報告もあります。既に銀はシリコン材料価格を上回り、太陽光パネルにおける最大のコスト要因となっている可能性もあります。

1オンス90ドルの衝撃: 銀価格が先週1オンス 90ドル に達したことで、標準的な 500W パネル1枚に使用される銀の原料コストは約 13ドル(約2,000円) 近くに達しています。この急激なコスト増により、中国のジンコソーラーやトリナ・ソーラーといった最大手各社も、2026年期の純損失見通しや製品価格の引き上げを相次いで発表する事態に追い込まれています。

中国デフレ輸出からグリーンインフレへの転換も警戒すべき

これまでの数年間、世界は中国の国内不況に伴う蓄電池・再エネ設備・EVの「デフレ輸出(過剰在庫の安値放出)」の恩恵を受け、原料高を製品価格の低下で相殺してきました。

しかし、中国経済が底を打ち、内需が回復、あるいは生産調整が本格化すれば、これまで世界に供給されていた「安価なクリーンエネルギー製品」の流れが止まる可能性もあります。

この場合、銀などの高騰した原料コストがダイレクトに製品価格へ転嫁され、世界は一気に「グリーン・インフレーション」に見舞われる可能性があります。

インフレ、地政学、そしてエネルギー転換。これらが複雑に絡み合う中で、銀100ドルへのカウントダウンは、新たな警鐘・シグナルとなるかもしれません。

資源価格、とりわけ希少金属の価格動向に注視が必要です。