需給調整市場、上限価格15円/kWhへ引き下げ。第110回 制度検討作業部会

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経済産業省は23日、第110回制度検討作業部会を開催し、その中で需給調整市場の募集量・上限価格などの見直しに関する議論がなされました。以下その内容を整理してお伝えします。

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事務局説明

2026年度から一次、二次①等の調整力において、取引タイミングを実需給の直前に近づける前日定期化が実施される改正に伴い、現在の募集量や上限価格の設定が新規リソースの参入意欲や調達コストに与える影響を精査する必要があると指摘しました。

背景として、現行の募集量設定では必要以上に高い約定総額となっている可能性がある一方、上限価格の規制が強すぎれば蓄電池などの新規事業者の予見性を損なう恐れがあるという、相反する課題が顕在化している点が強調されました。

事務局提案

事務局は、前日市場化が実施されるタイミングでの具体的な対応策として次の点を提案しました。

①募集量の削減

現在は3シグマ相当量を確保しているが、これを1シグマ相当量まで削減する。

②上限価格の引き下げ

現行の19.51円/kWhを、まずは15円/kWhに引き下げる。ただし、競争環境の改善が見られない場合、上記の15円を、状況に応じて10円、さらには7.2円へと段階的に引き下げる。

③市場のモニタリングに基づく柔軟な運用

十分な競争が確認できれば募集量を増加させ、逆に競争が不十分であればさらなる価格引き下げを行う。

委員発言1 価格見直しの方向性と慎重な運用

複数の委員から、上限価格の引き下げや募集量の削減という方向性については、調達コスト抑制の観点から概ね賛同が得られました。

一方で、上限価格を段階的に引き下げる際の判断基準を明確にすべきとの声が多く上がりました。価格の引き下げが拙速に行われると、新規リソースの投資意欲を削ぐリスクがあるため、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月といった一定期間の実績を慎重に分析した上で判断すべきとの指摘がなされました。

委員発言2 新規リソースへの影響と競争環境

新規事業者の参入機会確保については、募集量の削減が市場の魅力を低下させる可能性について意見が示されました。

特に、募集量を1シグマに削減した場合、エリアによっては蓄電池が入り込むスペースが非常に小さくなるのではないかとの懸念が示されました。揚水発電の随時契約の扱いも含め、包括的に需給調整手段を検討すべきとの指摘です。

また、予見性を高めるために商品別やエリア別に募集量に対する待機量や価格分布などを指標化し、見直しの判断ルールをあらかじめ整理しておくことが望ましいとの具体案が提示されました。

委員・オブザーバー発言3 市場活性化の根本的課題

発電事業者やリソース提供側からは、そもそもなぜ入札が十分に行われないのかという根本的な要因を解消すべきとの意見が出されました。

募集量の削減や上限価格の引き下げは、あくまでコスト抑制の手段であり、市場を通じて真に必要な調整力を確保するためには、適切な価格シグナルの形成と一定の市場規模の確保が重要であるとの認識が示されました。

競争が活性化した際には、上限価格の撤廃も含めた議論を行うべきとの前向きな提案もなされました。

事務局まとめ モニタリングに基づく段階的対応

事務局は、本日の議論を踏まえ、まずは募集量を1シグマへ削減し、上限価格を15円とする見直しを進める考えを示しました。

2026年度からの前日取引開始後、市場の状況を詳細にモニタリングし、その結果を部会などに報告した上で、次なるステップとして価格のさらなる引き下げや、募集量の回復を判断していく方針です。

単純な規制強化ではなく、市場の実績に基づきながら、安定供給に必要な調整力の確保と国民負担の抑制を両立させるきめ細かな運用を目指す形で議論が締めくくられました。

当研究所の分析

現在の上限価格では、場合によっては蓄電所投資が1.5年で回収できてしまうなどの状況が発生し、それ故に現時点で系統接続申し込みが殺到しているという事態も発生しています。

一方で、頻繁なルール変更は、予見可能性を低下させ、その分投資費用にリスクプレミアムが転嫁されてしまい、かえってコストが上がってしまう可能性や、必ずしも質の良くない安価な蓄電池を用いた案件が勝ち残り、将来の蓄電所からの発火事故などのリスクを高めるなどのセキュリティ上の懸念も発生させます。

EUでは、大規模な調整力は、電源と需要地の間の系統制約の状況を考慮しながら、新規送変電投資とのトレードオフで、案件を評価する手法がとられています。

そうすれば、無駄な地点での接続申し込みに忙殺されて、分散型再エネの導入が阻害されるような問題も緩和されるでしょう。

また、新規調整力は蓄電池だけでよいのかという論点もあると思量します。

EUでは揚水発電所の新規建設が数多く計画されています。日本では、自由化以降、蓄電池以外のストレージ主流化の議論が必ずしも進んでいません。

現在の市場設計では、費用対効果は高いが、大規模・長期スパンのストレージの新規建設の呼び水になりにくい限界があります。

世界的なサプライチェーンリスクを考慮すれば、電源種だけでなく、ストレージ種においても分散化が可能となるような市場設計が望ましいともいえるでしょう。