JFEエンジニアリング、浮体式洋上風力の基礎製造へ本格参入

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JFEエンジニアリング(敬称略)は29日、浮体式洋上風力発電の基礎部分を製造する事業に本格的に参入することを発表しました。同社は、三重県にある津製作所(津市)を量産拠点として位置付け、最大130億円規模の設備投資を実施する計画です。

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【プレスリリースの概要】

今回の計画では、浮体式基礎を構成する各モジュールの製造から、最終的な完成品の組み立てまでを一貫して担う体制を整えます。具体的な量産の開始時期については、2030年をめどとしています。

JFEエンジニアリングは、海底に基礎を固定する「着床式」の基礎構造物であるモノパイルにおいて、すでに国内での量産体制を構築しています。今後、より深い海域での導入拡大が見込まれる「浮体式」の製造事業にも参入することで、着床式と浮体式の両形式に対応できる国内唯一の基礎製造企業を目指す方針です。

【当研究所補記:浮体式風力発電サプライチェーン分析(敬称略)】

JFEエンジニアリングの製造技術:モノパイルから浮体式への展開

JFEエンジニアリングは、すでに笠岡モノパイル製作所(岡山県)において、国内初となる着床式用「モノパイル」の量産を開始しています。モノパイルは直径最大10m、板厚最大100mmに及ぶ極厚鋼板を円筒形に成形し、高度な溶接技術で接合する巨大構造物です。同社の強みは例えば以下があると当研究所は推定します。

大規模鋼構造物の製造ノウハウ:モノパイル製造で培った「大径・極厚鋼板の自動溶接技術」や「大規模部材のハンドリング技術」は、浮体式基礎(セミサブ型やスパー型など)のモジュール製造に直結します。

一貫体制の構築: 津製作所での投資により、部材製造から最終組み立てまでを同一拠点内で行うことで、巨大な完成品の輸送コスト低減と工期短縮を図ります。

浮体式洋上風力国内サプライチェーンをめぐる各社の動向

1. 造船・重工業各社の製造拠点整備

三菱重工業: 長崎地区などの拠点を活用し、浮体式基礎の製造・組み立て体制の検討を進めています。海外企業との提携を通じ、量産設計技術の獲得を目指しています。

ジャパン マリンユナイテッド (JMU): 独自のスパー型浮体などの開発を進めるほか、セミサブ型浮体の量産化に向けて、既存の造船ドックを活用した効率的な建造プロセスの構築を図っています。

2. エンジニアリング・建設各社の動き

浮体式洋上風力発電の社会実装において、最も先行している企業の一つが戸田建設(敬称略)です。同社は、長崎県五島市沖における「五島市海洋再生可能エネルギー発電事業」の選定事業者(コンソーシアム代表)として、国内初の商用浮体式洋上風力発電所の運転開始を目指しています。戸田建設は、環境省による実証事業「はえんかぜ(2MW機)」での知見をベースに、商用化へ舵を切りました。

  • ハイブリッドスパー型を採用: 下部構造にコンクリートと鋼を組み合わせた「ハイブリッドスパー型」を採用。重心が低く安定性に優れ、かつ鋼材価格の高騰に左右されにくい構造を実現しています。
  • 地域共生モデルの構築: 漁業との共生や、地元企業への製造・保守委託など、地方創生と連動したモデルを日本で初めて具現化しようとしています。
  • 独自技術「ハイブリッドスパー」の強み:同社が開発したハイブリッドスパー型基礎は、以下の点で国内サプライチェーンに大きなインパクトを与えています。
  • 製造の容易性: 鋼製部分が少ないため、大規模な溶接設備を持つ造船所以外の港湾拠点でもコンクリート部分の製造が可能です。
  • コスト競争力: 材料費の抑制に加え、専用の大型クレーン船を必要としない設置工法を開発しており、経済性の向上を図っています。

日揮ホールディングス: 浮体式風力発電設備全体の設計(FEED)や、係留システムの最適化に注力しています。海外の浮体テクノロジー企業との提携を通じ、国内プロジェクトへの適用を進めています。

鹿島建設・清水建設: 浮体式基礎の設置に不可欠な「SEP船(自己昇降式作業船)」の大型化や、コンクリート製浮体基礎の研究開発を進め、コスト低減を図っています。