【深堀り解説】老朽火力発電休止の事前連絡義務化を日経新聞が報道

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日本経済新聞は25日、経済産業省が大規模電源の休廃止情報を発電事業者から一般送配電事業者(TSO)へ事前に共有することを義務付ける方針であると報じました

この措置は、電力システム改革以降の構造的課題である「情報の非対称性」を解消し、グリッドのレジリエンスと脱炭素化を両立させるための不可欠な制度設計として注目されます。

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発送電のファイアウォール規制とコミュニケーション不全

本施策の背景には、総合資源エネルギー調査会等の委員会で指摘されてきた、発送電分離後の「不自然な情報の断絶」があります。

法的分離以降、一般送配電事業者は中立性を担保するため、特定の発電事業者との接触を厳格に制限するファイアウォール(行為規制)を構築してきました。しかし、この規制への過度な萎縮効果により、系統形成や電圧制御に不可欠な「大規模電源の離脱予測」までもが共有されず、系統増強計画の策定やN-1電制等の運用設計に深刻な遅延を招いている実態が、専門家会合の議論で浮き彫りとなりました。

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老朽火力の計画的退場とエネルギー基本計画の整合性

現在、国内では稼働40年超の老朽火力の退出が加速しており、2034年度までに1,000万キロワット超の電源退出が予測されています。一方で、次期エネルギー基本計画(第7次)では、変動性再生可能エネルギー(VRE)のさらなる導入拡大と、安定的なベースロード電源の確保が同時に求められています。今回の義務化は、これら「退出電源」と「新設電源」のタイムラグをTSOが正確に把握し、需要想定の精緻化とともに、地域・時間軸での需給バランスを最適化するためのデータ基盤を構築する狙いがあります。

低炭素火力の評価と退出順位のパラドックス

一方で、より本質的な課題は、容量市場等をめぐる委員会討議でもあったように、「LNG等の低炭素火力の評価」と「需給逼迫時の電源選択」です。

系統全体の脱炭素化を優先し、高排出な石炭火力を早期に退出(フェーズアウト)させるのか。あるいは、厳冬期等の供給力確保(EUE/期待未供給電力量の低減)を優先し、係数の高い電源をバックアップとして維持し続けるのかの政策判断が問われています。

当社提言:GHGScope2改定再エネおよび全電源アワリーマッチングへの移行

今後の需給管理において不可欠となるのが、GHGScope2改定で議論されている時間単位の需給整合(アワリーマッチング)です。

GoogleやMicrosoftが進める再エネアワリーマッチングの潮流に加え、今後は全電源アワリーマッチングへの視座が求められます。

これは、単に再エネ証書を紐付けるだけでなく、非化石電源と火力の混合ポートフォリオを、1時間単位の限界排出係数(LCE)に基づき、各地域の系統制約と照らし合わせて物理的に最適化する試みです。

TSOが電源休廃止情報を早期に得られれば、これらアワリーベースの系統混雑管理(ノンファーム接続等)の予見性は飛躍的に向上します。

結論として求められるのは、単なる「排出係数の削減」か「送電網の安定」かという二元論ではなく、アワリーマッチングを通じて、排出強度が高い時間帯には需要側が反応(DR)し、排出強度が低い時間帯に低炭素電源を最大化させる動的な調整メカニズムの構築です。

電源休廃止の事前連絡義務化は、そのための「グリッド全体の予見性」を担保する第一歩に過ぎず、今後はエネ基の目標値と、マーケットメカニズムによる炭素強度ベースの給電指令(メリットオーダーの高度化)をどう整合させるかが、専門家間に課された最大の論点となります。

一次情報(記事出典)

記事タイトル:老朽火力の休廃止、送配電への事前連絡を義務化 経産省が発電会社に

リンク:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21B1F0R20C26A1000000