乾燥地域ではヒートアイランド対策に緑化は逆効果。最新研究
乾燥地域ではヒートアイランド対策に緑化は逆効果。最新研究
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都市計画のスタンダードである「緑化」が、特定の条件下ではむしろ都市の熱環境を悪化させてしまう――。そんな従来の常識を根底から覆す研究結果が、権威ある学術誌『Science Advances』に掲載されました。

研究チームが世界105カ国、761の巨大都市を衛星データと機械学習を用いて解析したところ、この「温暖化パラドックス」が浮かび上がりました。
特に年間降水量が1000mmを下回る乾燥地域の都市において、その22%で「草地や農地が、アスファルトやビルに囲まれた市街地よりも高い地表面温度を示す」ということが判明しました。
蒸散冷却を上回る「色の暗さ」の罠:低アルベドの影響
通常、植物は根から吸い上げた水分を葉の気孔から放出する「蒸散作用」によって、周囲の熱を奪い、天然のエアコンとして機能します。しかし、水資源が決定的に不足している乾燥地では、この蒸散による冷却効果が最小限にまで抑えられてしまいます。一方で、生物物理学的な視点で見ると、植物の葉(特に暗緑色)は、コンクリートや明るい色の舗装に比べて太陽光の反射率(アルベド)が低いという特徴があります。
この「低い反射率」は、太陽放射エネルギーを反射せずに吸収し、熱として蓄えてしまうことを意味します。つまり、乾燥地域では「蒸散で冷やす力」よりも「太陽熱を吸収して温まる力」が勝ってしまい、皮肉にも緑地が周囲の建物よりも熱を帯びるヒートスポットに変貌してしまうのです。さらに、都市の構造物(ビル等)は昼間の熱を内部に貯蔵する能力が高いのに対し、乾燥した草地は貯蔵しきれない熱を即座に表面へ放出するため、地表面温度の急上昇を招くという物理的メカニズムも明らかになりました。
極端な熱波がもたらす「草地」の脆弱性と「樹木」の優位性
この研究のもう一つの重要な知見は、猛暑日などの「極端な熱波」に襲われた際の挙動の違いです。芝生などの草地や農地は、地表付近の水分が枯渇すると即座に気孔を閉じ、冷却機能を完全に停止させます。今回のデータでは、熱波時に草地の71%、農地の82%が温度上昇をさらに加速させる「加熱装置」として働いたことが示されました。
一方で、同じ植生でも「樹木」は依然として強力な味方です。樹木は深い根を持つため、深層の土壌水分を利用して過酷な熱波の中でも蒸散を継続でき、調査した都市の98%で一貫して冷却効果を発揮しました。ビジネス街の再開発や都市設計において、「とりあえず緑(草地)を増やす」という安易なアプローチは、気候条件次第では資産価値を損なう「熱リスク」を抱えることになると、本研究は警鐘を鳴らしています。
日本への適用:ヒートアイランド対策のヒント
日本は一般に湿潤な気候のため、この「緑地による加温」現象は起きにくいと思われますが、近年の猛暑による「極端な乾燥状態」には注意が必要です。
本研究では、極端な熱波下で草地や農地の8割近くが温度上昇を加速させたと指摘しています。
日本においても、特に水管理が不十分な屋上緑化や芝生広場では、期待した冷却効果が得られない可能性があるため、深い根を持つ樹木の選定や、適切な灌漑(水やり)とのセットが不可欠といえます。
ソース元の記事タイトル:Global urban vegetation exhibits divergent thermal effects: From cooling to warming as aridity increases
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