幻に終わったサハラ砂漠・欧州送電連携「デザーテック」構想。欧州、日本で進む連携事業評価の視座
幻に終わったサハラ砂漠・欧州送電連携「デザーテック」構想。欧州、日本で進む連携事業評価の視座
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北海海底ケーブル連携計画
欧州では北海を欧州の緑の発電所と位置づけ、英国、ドイツ、オランダなど10カ国が協力して洋上風力発電と海底多国間連系線(インターコネクター)の構築を進めています。その筆頭が英国とオランダをつなぐライオンリンク(LionLink)です。容量は1.8ギガワット、約180万世帯分の電力を供給する能力を持ちます。英国政府は2030年までに連系容量を18ギガワットまで拡大する目標を掲げており、これら一連の北海グリッド構築には全体で数兆円規模の投資が見込まれています。距離は数百キロメートル圏内であり、高圧直流送電(HVDC)技術を用いることで送電ロスを抑えつつ、北海の豊富な風力資源を欧州全域で共有する狙いです。
北本連系増強計画
日本においても、再生可能エネルギーの導入拡大と電力供給の強靱化を目的として、北海道と本州を結ぶ連系設備の増強が進められています。
具体的には、北海道本州間連系設備(北本連系)および東北東京間連系線の増強です。北海道と東北の間、および東北と東京の間でそれぞれ設備容量を200万キロワット増強する計画が進んでおり、これにより北海道の豊富な再エネを首都圏へ送電することが可能になります。
例えば東北東京間連系線の増強工事では、容量を573万キロワットから1028万キロワットへと倍増させる計画で、工事費の概算は約1500億円、運転維持費を含めた総費用は約3500億円に達すると試算されています。運用開始は2027年度を目指しており、海底ケーブルと陸上送電線を組み合わせた数百キロメートル規模のインフラ整備となります。
幻に終わったデザーテックプロジェクト
これらプロジェクトの費用対効果を検討する上で参考になるのがデザーテック事業です。

2009年に発足したこの構想は、サハラ砂漠の太陽エネルギーを欧州へ送るという壮大なものでした。投資規模は約4000億ユーロ(当時のレートで約50兆円)という、巨額なものでした。
送電距離もサハラから欧州北部まで数千キロメートルに及び、これが致命的な課題となりました。長距離送電に伴う膨大なインフラ建設コストとメンテナンス費用が、現地での発電原価の低減分を上回ってしまったのです。
また、当時は太陽熱発電(CSP)を主役としていましたが、安価な太陽光パネルの普及により技術的な優位性が失われたこと、さらにアラブの春による中東情勢の不安定化という政治的リスクが重なり、2014年までに主要企業が相次いで脱退し、計画は実質的に頓挫しました。
北本連携事業性評価への視座
デザーテックと比べ、今回の北海グリッドや日本の連系線計画は、送電距離が数百キロメートルと圧倒的に短く、投資規模もデザーテックの50兆円規模に対し、個別のプロジェクトは数千億円から数兆円単位と、管理可能な範囲で推移しています。しかし、デザーテックが示した電源の接続コストがベネフィットを上回るリスクは、依然として現代の計画にも共通する課題です。
エネルギーを広域で接続することには、需給バランスの調整や再エネの有効活用という明確なメリットがあります。一方で、その巨額な投資を誰が負担し、どのように回収するかという客観的な費用対効果の検討は不可欠です。
送電インフラの建設費用が消費者の電気代に与える影響や、供給源となる地域のエネルギー主権との調整など、定量的な経済合理性の検証が、プロジェクトの成否を分ける鍵となります。
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