英国、低炭素水素基準改定版を公表。30分単位での送配電網排出係数使用を求める

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英国政府は4日、低炭素水素の定義と政府支援制度の適用要件を明確化するための「UK Low Carbon Hydrogen Standard Version 4」を発表しました。

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Reporting Unitという考え方

この基準は、水素の製造過程における温室効果ガス排出を定量的に評価するための枠組みを示すもので、特に電解水素を想定し、電力由来排出の扱いを制度上明確に位置づけています。具体的には、水素1単位あたりの温室効果ガス排出係数をライフサイクルベースで算定し、それが定められた基準値以下であるかどうかをもって「低炭素水素」と認定するルールです。

この際、排出係数の算定は単なる年平均値ではなく、時間変動を考慮した形で行うことが制度上組み込まれている点が大きな特徴です。

Version 4では、排出係数を算定するための基本単位として「Reporting Unit」が定義されています。水素が生成されるすべてのReporting Unit、すなわち30分ごとの時間区分ごとに、対応する温室効果ガス排出を計算することが求められています。これは、水素製造が行われた各30分単位について、使用した電力や燃料、補助エネルギーに基づく排出係数を個別に算定することを意味します。

この仕組みにより、排出係数は、固定的なグリッド平均値を前提とするのではなく、時間帯ごとの電力供給状況や電源構成の変化を反映した形で算定されることになります。

例えば、再生可能エネルギー比率が高い時間帯に水素を製造した場合には、排出係数は低く算定され、化石燃料由来電源の比率が高い時間帯には高く算定される構造となります。こうした時間分解能を持つ排出係数を、月単位などで加重平均することで、最終的な水素製品の排出係数が確定されます

GHGScope2改定との関連性

この考え方は、GHGプロトコルにおけるScope 2排出算定、とりわけロケーション基準との関係で重要な示唆を持ちます。

Scope 2のロケーション基準では、通常、地域電力系統の年間平均排出係数を用いて間接排出を算定します。しかし、UK Low Carbon Hydrogen Standardでは、同じ系統電力を用いる場合であっても、時間帯ごとの排出係数の違いを前提とした算定が制度上想定されています。

この点で、本基準は、従来のロケーション基準を単に踏襲するのではなく、ロケーション基準をより細分化し、時間変動を内包させた形に拡張していると位置づけることができます。電力系統に接続された電解水素であっても、いつ電力を消費したかによって排出係数が変わるという前提を明示的に取り込んでいるためです。

英国政府がこのような設計を採用した背景には、再生可能エネルギーの変動性が高まる中で、水素製造が電力システム全体の排出に与える影響をより正確に把握する必要性があります。

時間変動を無視した平均排出係数では、実際には高排出な時間帯の電力消費と、低排出な時間帯の電力消費とが区別されず、水素の低炭素性を適切に評価できないという問題意識が基礎にあります。

厳格な時間性の在り方が、GHGScope2改定の中で議論となっているなかで、英国政府のこの動きは、厳格な方向での改定を支援するものと捉えられます。