容量市場見直しへ、第110回 制度検討作業部会で議論始まる。”国民負担を抑えつつ、新規電源をどう確保するか?”

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経済産業省は23日、第110回制度検討作業部会を開催し、その中で容量市場メインオークションのあり方見直しに関する議論を行いました。

事務局説明

事務局はまず、2029年度向けメインオークションの結果として、ネットコーン(指標価格)を上回る入札や、落札されなかった電源が増加していることを説明しました。特に東北・東京エリアでは、追加処理を行っても供給信頼度基準を満たさない結果となっており、供給力確保に対する懸念が顕在化していると指摘しました。

背景として、電源の老朽化、物価・人件費の上昇、燃料価格の不確実性などにより、既存火力電源の維持管理コストが上昇している点が強調されました。この結果、現行のネットコーンおよび上限価格の水準では、必要な供給力を十分に確保できない可能性があるとの問題意識が示されました。

事務局提案 見直しの主な論点

事務局は、現行制度を前提としつつ、短期的に検討すべき論点として次の点を整理しました。

第一に、目標調達量や追加オークションの位置づけを含む供給力確保量の考え方の見直しです。

第二に、ネットコーン(指標価格)および上限価格の見直しです。指標価格は本来、安定供給に必要な容量をいくらで確保するかを示すベンチマークであるため、その指標性を維持しつつ、最新の発電コスト検証結果やインフレをどう反映させるかが論点とされました。

第三に、単純な価格引き上げによる国民負担増を回避するため、シングルプライスとマルチプライスを組み合わせるなど、約定方法の工夫による影響緩和策が提示されました。

第四に、非効率火力の稼働抑制誘導や、退出抑制とフェードアウト政策との整合性が論点として示されました。

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委員発言① 価格見直しの方向性と国民負担への配慮

複数の委員から、ネットコーンおよび上限価格の見直し自体については、供給力確保の観点から必要性を認める発言が相次ぎました。

一方で、価格を引き上げれば容量支払総額が大きく増加し、最終的には需要家負担が拡大する点への懸念も強く示されました。

このため、単純に指標価格と上限価格を引き上げるのではなく、シングルプライスが適用される範囲を限定し、それを超える部分をマルチプライスで処理するなど、制度設計上の工夫を求める意見が多く出されました。価格シグナルの機能を維持しつつ、過大な負担増を回避すべきとの指摘です。

委員発言② 新規電源へのインセンティブの限界

新規電源への投資促進については、容量市場メインオークションの性格上、4年前に単年収入が見込めるだけでは、新設投資へのインセンティブは限定的ではないかとの意見が複数示されました。

特に、上限価格を引き上げても新設投資に結びつかず、結果として既存電源への支払い増だけが生じる可能性があるとの指摘がなされました。

この点について、容量市場とは別に、新設や大規模リプレースに特化した別市場や先行オークションを設けるべきではないかとの問題提起がなされました。新設投資については、長期脱炭素電源オークションや別枠制度で対応し、容量市場は既設電源の確保を主眼とすべきだという考え方です。

これに関連し、松村委員は、今回の資料が「ネットコーンと上限価格の引き上げ」に議論が集中している点に強い違和感を示しました。

供給信頼度未達の原因は、上限価格を超えた電源を拾えなかった点にあるにもかかわらず、その解決策として価格全体を引き上げる議論が先行していると指摘しました。

本来は、メインオークション後に不足エリアを対象とした追加的・限定的な調達や、マルチプライス的な仕組みを制度化する方が合理的であり、国民負担の抑制にもつながると述べました。

また、新設電源については、容量市場とは切り離し、より早期に複数年の容量支払いを確定させる別オークションを設けることで、ピンポイントに投資インセンティブを与える仕組みを検討すべきだと具体案を提示しました。

委員・オブザーバー発言③ 既存電源の退出抑制と火力の扱い

既存火力電源の退出抑制については、ペナルティ強化による市場退出抑制策が示された一方で、過度なペナルティは逆に廃止判断を早めるリスクがあるとの指摘がありました。

特に、老朽火力や非効率火力については、供給力確保とフェードアウト政策の整合性をどう確保するかが重要な論点とされました。

また、インフレなど外生的要因によるコスト上昇を事後的に容量収入に反映させる仕組みなど、既存電源の維持を支える柔軟な制度設計を求める意見も出されました。

小売・需要家側の視点 説明責任の重要性

小売事業者や需要家側の立場からは、容量市場価格の上昇が最終的に国民負担につながる以上、その必要性と効果を丁寧に説明する必要があるとの意見が示されました。

供給信頼度の向上が、将来的に市場価格の安定や予見性向上につながることを示すことが不可欠だとされました。

事務局のまとめ 段階的見直しと今後の検討

事務局は、現行制度を前提とした短期的な見直しと、中長期的な制度再設計を切り分けて進める考えを示しました。

直近のオークションに対応するため、まずはネットコーン・上限価格や影響緩和策について早期に検討を進める一方で、新規電源の扱いや容量市場の役割そのものについては、引き続き中長期課題として議論を深めると整理しました。

単純な価格引き上げではなく、シングルプライスとマルチプライスの組み合わせ、追加調達の制度化、新設電源向けの別市場創設など、きめ細かな市場設計が重要であるとの認識が共有された形で、今回の議論は締めくくられました。

当研究所の分析

電力システムの安定確保のためには、的確な長期需要想定を行い、その需要想定に基づいての電源確保(長期・短期でのkWhとkWの確保)を図っていく必要があります。そのためには、新規電源へ適正なインセンティブを付与する必要があり、長期的に予見可能で、一貫性が確保される政策・制度の仕組みづくりと運用が大前提となります。

さらに、2030年のGHGScope2ガイダンス改定を踏まえれば、再エネと火力の電源構成の在り方や、火力の中での排出係数の違いに着目した優先順位をどのようにするのか、その時、排出係数の高い発電所は排除するのかについて、自由化の下では、新規電源と既設電源の建設・運用主体に市場機能を通じて明確で一貫したシグナルを出していく必要があると言えるでしょう。

さらに、その価格シグナルは、全国全時間一律というわけではなく、系統制約や、再エネの時間制約を考えれば、地域・時間で全電源での同時同量を確保し、そのうえで、再エネだけを切り出してアワリーマッチングをさせていくかを複合的に対処する視座も欠かせません。

EUでは、長期電源・系統計画の下で、多くの揚水発電所が新規に建設されていく計画です。わが国でも、自由化政策の下では、市場機能を通じて、こうしたダイナミックな調整力確保の道筋が求められています。