UN 24/7 CFEが示した境界設定の考え方とは
UN 24/7 CFEが示した境界設定の考え方とは
24/7 Carbon-Free Energy Compact Guidebook(ガイドブック)においては、電力の物理的な供給構造を踏まえた上で、ローカルマッチングの必要性と考え方が具体的に説明されています。以下、その内容を整理してみます。

1. 境界設定は電力市場と系統の実態に基づく必要がある
ローカル調達を支え、物理的な供給可能性を確保するためには、境界は明確で透明性があり、かつ実際の電力市場や電力系統の構造に基づいて設定される必要があります。単に制度上の区分で決めるのではなく、電力がどのように流れ、どのように需給がバランスしているかという実態に即した設計が求められます。また、この境界は各地域の状況に応じて柔軟に設定されるべきものであり、一律の基準ではなくローカルコンテキストへの適合が重要とされています。
2. 同期系統(Synchronous grid)の範囲
まず検討すべきは、電力市場の境界が単一の同期系統内に収まっているか、それとも複数の同期系統をまたいで調達を認めるかという点です。同期系統とは、周波数が一致して連系されている電力ネットワークのことであり、この範囲内であれば電力のやり取りが物理的に可能であると考えられます。したがって、境界をどこまで広げるかは、系統の物理的接続性と密接に関係します。
3. 送電混雑(Transmission congestion)の影響
次に重要なのが、送電網における混雑の存在です。仮に同一の境界内にあっても、送電容量の制約や混雑によって、ある地点から別の地点への電力供給が制限される場合があります。そのため、境界内で新規電源がどの程度均一に供給可能かは、送電制約によって左右されることになります。境界設定においては、このような現実の送電制約を無視することはできません。
4. 電力の到達距離(Delivery distance)
境界の大きさを検討する際には、発電地点から需要地点まで電力が通常どの程度の距離を移動するのかという点も重要な要素となります。境界が広くなりすぎると、実際にはほとんど電力が流れていない遠隔地まで含まれてしまう可能性があり、供給可能性の実効性が低下する懸念があります。そのため、平均的な電力の流動距離との整合性が求められます。
5. 供給可能性の期待値(Expected deliverability)
境界内に存在する発電設備のうち、どの程度の割合が実際に同一境界内の需要に電力を供給できるかという点も重要です。すなわち、理論上の接続ではなく、実際に一定量の電力が供給される可能性をどの程度見込めるかが問われます。この「期待される供給可能性」は、境界設定の妥当性を評価する上での重要な指標となります。
6. 地域内接続性(Regional connectivity)
最後に、境界が設定される地域内において、発電と需要の間で比較的高い接続性が確保されているかどうかが問われます。すなわち、電力が実際に流通しやすい構造になっているか、発電と需要が分断されていないかといった点です。こうした接続性が高いほど、ローカルマッチングの実効性も高まると考えられます。
7. 日本およびEUにおける境界設定の現実的論点
日本においては、旧一般電気事業者ごとに電力系統が管理されてきた歴史があり、エリア間の連系は存在するものの、その容量や運用には制約があります。特に東日本(50Hz)と西日本(60Hz)は周波数が分かれており、周波数変換所を介して接続されているという構造を持っています。このため、旧一般電気事業者の供給エリア単位で境界を設定するという考え方は、物理的整合性の観点から一定の合理性を持ちます。
しかし一方で、そのように細かく境界を設定すると、例えば関東以外の地域での調達の柔軟性が低下し、実務上の実現可能性が大きく制約されるという課題も生じます。そのため、現実的な制度設計としては、一定の広がりを持たせた境界設定とのバランスをどのように取るかが重要な論点となります。
これに対してEUでは、国境をまたいだメッシュ状の送電網が形成されているため、理論的にはEU全体を一つの境界とすることも可能ではないかという議論が存在します。ただし実際には、まずは各国単位、あるいは複数国のまとまり単位で境界を設定すべきとの考え方が主流です。例えばドイツでは、国内においても北部と南部で送電制約が存在するものの、それらを統合して「ドイツ一国」を一つの境界とするべきだという意見も強く示されています。
このように、境界設定は単なる技術的論点ではなく、物理的制約、制度設計、実務上の実現可能性を総合的に踏まえた判断が求められます。日本においても、国際的な議論との整合性を保ちつつ、実効性と実現可能性のバランスを取った境界設定が今後重要になると考えられます。
■国連 24/7 CFEガイドブックの詳しい解説
(解説者:㈱電力シェアリング&アワリーマッチング推進協議会)
【第1回】アワリーマッチングの定義
【第2回】タイムトラッキングの仕組み
【第3回】ローカルマッチングの定義
【第4回】境界設定の考え方
【第5回】カーボンフリー電源の定義
【第6回】テクノロジー・インクルーシブとは
【第9回】電力システムコストへの影響評価
【第10回】スマートメータの重要性
【第12回】環境証書(GC-EAC)取引の国際標準手法
【第14回】アワリーマッチングを実現するPPAの設計方法
【第15回】世界各国の政策・規制フレームワークの構築状況
【第16回】グリーン水素へのアワリーマッチング適用
【第19回】各国政府政策・規制担当者へのアドバイス
