PPAの新潮流:EU議会、PPAとCfDの課題と今後の方向性について報告書を公表【第2回】CfD制度の課題と方向性

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欧州議会は、2026年1月、加盟国における差額決済契約(CfD)の設計・普及・影響について体系的に整理したレポートを発表しました。本稿では、同レポートのうちCfDに関する主要論点を横断的に整理します。

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CfDは、再生可能エネルギー投資を支える主要な政策ツールとして欧州で急速に拡大しており、PPAと並ぶ中核的な制度として位置づけられています。

CfDの基本構造と設計思想

CfDは、発電事業者と公的主体との間で締結される契約であり、事前に定めたストライク価格と市場価格との差額を調整する仕組みです。市場価格がストライク価格を下回る場合は補填が行われ、上回る場合は差額が返還される双方向型が主流となりつつあります。

この仕組みの本質は、発電事業者に対して長期的な収益の確実性を提供し、資本集約型である再エネ投資の資金調達を可能にする点にあります。特に風力や太陽光のような低運転コスト・高初期投資の電源では、市場価格のみでは投資回収が困難であり、CfDがそのギャップを埋める役割を果たします。

一方で、CfDは市場リスクを完全に排除するものではなく、発電量リスクや需給調整コストなどは依然として事業者が負担します。また、参照価格の設定方法(時間単位、月平均など)によって市場への影響が変化する点も重要な設計要素です。

さらに近年では、発電量ベースではなく設備容量ベースで報酬を与える「キャパシティ型CfD」や、性能条件を組み込む新たな設計も検討されています。

CfDの普及状況

欧州においてCfDは主に入札制度を通じて導入されており、特に太陽光および風力分野で急速に拡大しています。2016年以降、導入容量は継続的に増加しており、複数の加盟国で再エネ支援の標準的手法となっています。

特徴的なのは、国ごとに設計が異なる点です。契約期間(15〜30年)、参照価格の時間粒度(月次・時間別)、価格算定方式などが多様化しており、制度設計が各国の市場構造や政策目的に応じて最適化されています。

また、EU全体の電力市場設計改革において、CfDは公的支援のデフォルト手段として位置づけられており、新規電源への支援は原則として双方向CfDを通じて行う方向が示されています。

CfDの課題と制度的ボトルネック

一方で、CfDには複数の課題が存在します。最大の論点は市場歪みです。固定的な収益構造が強まることで、発電事業者が市場価格シグナルに反応しにくくなり、需給調整や柔軟性へのインセンティブが弱まる可能性があります。

また、政府が価格リスクの一部を引き受ける構造であるため、長期的には財政リスクが拡大する可能性も指摘されています。特に市場価格が長期的に低迷した場合、補填支出が増加し、公共財政への負担が顕在化します。

さらに、支援コストの回収方法も重要な論点です。多くの国では電気料金への上乗せで回収されていますが、これは需要家の負担増加につながる可能性があります。

CfD拡大シナリオと市場影響

レポートでは、CfDの普及が進むシナリオと進まないシナリオを比較分析しています。現状のペースでは、再エネ導入目標の達成には不十分であり、CfDの拡大が不可欠とされています。

加速シナリオでは、再エネ容量の約70%程度がCfDおよびPPAによって支えられる可能性が示されています。一方、普及が進まない場合には、他の支援手段への依存が増加し、投資の不確実性が高まります。

コスト面では、CfDは価格安定化に寄与する一方、制度設計によっては総コストが増加する可能性もあります。特に市場価格との乖離が大きい場合、補填額が増加し、結果的に社会全体の負担が増える構造となります。

総括:CfDの役割と今後の方向性

レポート全体を通じて、CfDは再エネ投資の促進において極めて有効な手段である一方、その設計次第で市場への影響が大きく変わる制度であることが示されています。

重要なポイントは以下の通りです。

・投資安定化と価格予見性の向上に寄与

・市場価格シグナルを弱める可能性

・PPAとの補完関係の設計が重要

・制度設計の違いが市場結果に大きく影響

欧州では、CfDを単独で拡大するのではなく、PPAとの組み合わせや市場制度との整合性を重視した設計が進められています。今後は、柔軟性や需給調整を組み込んだ高度な制度設計が求められる段階に入っていますとしています。

PPAの新潮流:EU議会、PPAとCfDの課題と今後の方向性について報告書を公表

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