IEA、石油市場レポートを公表。潤沢な在庫と供給余力で軟調な市況が続く見通し

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国際エネルギー機関(IEA)は21日、石油市場レポート(OMR)を公表しました。2026年の世界石油市場では、蓄積された潤沢な在庫と供給余力によって「十分なバッファー(緩衝材)」を確保した状態が続いています。

昨年の関税混乱に伴う世界的な経済停滞が正常化に向かうなか、2026年の世界需要は日量93万バレルの伸びを予測しています。

これは2025年の同85万バレルを上回る水準ですが、ガソリン需要の伸び悩みや化石燃料への依存低減により、歴史的な水準と比較すれば抑制的な推移に留まっています。

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需給を支える米州「クインテット」の増産と在庫の積み増し

需給緩和の主因は、非OPECプラス諸国による強力な増産体制にあります。特に米国、カナダ、ブラジル、ガイアナ、アルゼンチンの「米州クインテット」が供給増を牽引しており、サウジアラビアによる減産枠の段階的な縮小も加わって、2026年の供給量は前年比250万バレル増の日量1億870万バレルに達する見通しです。

この供給攻勢により、2025年を通じて世界全体の観測在庫は日量130万バレルのペースで積み上がりました。とりわけ中国での在庫積み増しや洋上在庫(水上在庫)の急増が顕著であり、物理的な需給は極めて緩んでいます。

地政学的リスクによる一過性の「熱狂」と市場の冷静さ

足元ではイランやベネズエラを巡る情勢不安、さらには黒海・カスピ海でのドローン攻撃によるカザフスタン産供給の停滞など、地政学的な火種が相次いでいます。

1月初頭には北海ブレント原油が一時1バレル66ドルまで急騰しましたが、月半ばには64ドル近辺まで沈静化しました。この動きは、供給障害の懸念以上に「積み上がった在庫」という実需の重みが価格を抑制していることを示唆しています。北海デート(現物指標)の12月平均は前年同期を16ドルも下回る62.64ドルと、6ヶ月連続の下落を記録しました。

今後の見通し

当研究所でも、マージンの低下により中間留分の収益性も悪化しており、発電用燃料の価格も落ち着いた推移が続く可能性が高いと分析しています。

ただし、ロシアの生産量がインフラ攻撃を受けつつも12月に日量55万バレルの反発を見せ、33ヶ月ぶりの高水準を記録するといった予測不能なボラティリティは依然として高いことに留意が必要です。

従って、当面は潤沢なバッファーを背景に安定調達が見込めるものの、各地域の輸出インフラの途絶リスクを注視し、機動的な在庫積み増しの判断が問われる局面が続きそうです。