GHGスコープ2、コンサルテーション締め切り迫る。反対派の声高まる

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GHGプロトコルのスコープ2改訂に向けた第1回パブリック・コンサルテーションは、2026年1月31日の締め切りを目前に控え、世界のエネルギー市場および気候変動対策に関わるプレイヤーたちの間で激しい「プロキシー合戦(意見集約とロビー活動)」の様相を呈しています。

温室効果ガス(GHG)算出の世界基準「GHGプロトコル」が進めているスコープ2ガイダンスの改訂案に対し、世界中の企業や団体から懸念の表明が相次いでいます。2026年1月31日のパブリック・コンサルテーション締め切りを前に、特に「アワリーマッチング(時間単位の電力一致)」や「物理的接続性(デリバラビリティ)」の義務化案を巡り、脱炭素化の実効性を優先する推進派と、市場の継続性を重視する慎重派の対立が激化しています。

エバーグリーン

慎重派の急先鋒となっているのが、米国の再エネ投資プラットフォーム、エバーグリーン(Ever.green)です。

同社は、改定案が突きつける183問に及ぶ膨大な質問票に対し、企業が効率的に反対・懸念を表明できるよう詳細な回答ガイドを公開しました。これは事実上の「プロキシー(代理人)」活動として注目されています。エバーグリーンは、新基準が導入されれば再エネ調達契約(PPA)が極めて複雑化し、中小企業やリソースの限られた企業が市場から排除されると警告しています。特に、現在普及している年次単位の環境価値(REC等)の取引が事実上機能不全に陥り、再エネへの投資資金が枯渇するという「投資停滞リスク」を強調しています。

CRS

再エネ証書の認証機関として知られるCRS(Center for Resource Solutions)も、極めてテクニカルな観点から異を唱えています。

CRSは、物理的な送電網の境界に紐付いた「デリバラビリティ(供給可能性)」の要件が、企業の自発的な再エネ需要(Voluntary Demand)を損なうと主張しています。電力網の物理的制約(グリッド・コンジェスチョン)を過度に反映した基準は、再エネ設備が不足している地域にある企業の脱炭素アクションを不可能にするだけでなく、広域的な証書市場の流動性を著しく低下させると訴えています。

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EY

大手監査法人のEY(アーンスト・アンド・ヤング)は、1月20日付のレポートにおいて、新基準の「フィジビリティ(実行可能性)」に強い懸念を示しました。


EY: What the GHG Protocol’s Scope 2 consultation means for global reporting

EYは、世界中の拠点において1時間単位の消費データや時間属性付きの証書(Granular Certificates)を入手・検証するためのデータ基盤(インフラ)が未だ整備されていないと指摘。データの透明性向上という「Integrity(誠実性)」は理解するものの、実務上のコストが便益を上回り、企業に過度な管理負荷(Administrative Burden)を強いることになると結論づけています。

こうした反対・懸念派が共通して強く求めているのが「レガシー条項(Grandfathering)」の導入です。これは、すでに締結済みの長期PPAや投資について、契約期間中は旧来の年次マッチングや地理的要件を維持することを認める暫定措置です。もしこの遡及的なルール適用回避が認められなければ、企業がすでに投じた巨額の再エネ投資が無価値化(Stranded Claims)する恐れがあり、締め切り直前の今、この条項の設計を巡る攻防が最も激しくなっています。