原子力発電に関する分析―米国ロジウム・グループが報告書を発表

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米国の有力な独立系調査機関であるロジウム・グループ(Rhodium Group)は、2025年12月10日、米国の原子力導入が数十年ぶりの歴史的な好機を迎えているとする報告書「Nuclear Energy Renaissance: Are We There Yet?」を公表しました。

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長年、コスト超過や建設遅延に苦しんできた米国の原子力産業ですが、現在、複数の前向きな要因が重なり、真の「ルネサンス(再生)」に向けた舞台が整いつつあると分析しています。

原子力回帰を後押しする4つの要因

報告書では、原子力への関心が再び高まっている主な要因として、以下の4点を挙げています。

  1. ボーグル発電所からの教訓:ジョージア州のボーグル3・4号機は、160億ドル以上の予算超過と7年の遅れを経てようやく運転を開始しました。しかし、この苦い経験を通じてサプライチェーンが再構築され、次なる建設に向けた貴重な「習熟」が得られたと評価しています。
  2. 電力需要の急増:生成AIの普及に伴うデータセンターの建設や、産業の電動化により、電力需要が爆発的に増加しています。カーボンフリーで、かつ24時間安定して稼働できるベースロード電源として、原子力の価値が再認識されています。
  3. 政策的な優遇措置の継続:風力や太陽光発電に対する税額控除が期限前倒しの議論にさらされる一方で、原子力に対するインフレ抑制法(IRA)などの税制優遇措置は維持されており、相対的な投資の魅力が高まっています。
  4. 化石燃料の不確実性:LNG(液化天然ガス)の輸出拡大による国内ガス価格の不安定化や、ガスタービンの製造能力の限界により、これまで安価だった天然ガス発電のコスト優位性が揺らいでいます。

「コストの壁」

一方で、最大の課題は依然として建設コストの高さにあります。現在、米国の新設大型炉の均等化発電原価(LCOE)は1MWhあたり180ドルと試算されており、韓国(66ドル)や中国(81ドル)、日本(107ドル)などの諸国と比較しても極めて割高な水準です。

このコストを引き下げるためには、「同一炉型の継続受注」による習熟が不可欠です。報告書によれば、次なるAP1000(新型加圧水型軽水炉)の建設ではLCOEを95ドルまで下げることができ、さらに12基以上の連続建設を実現すれば、習熟曲線効果によって74ドルまで低下させることも可能であると試算しています。

提言

ロジウム・グループは、民間企業のリスク負担だけではこの壁を突破するのは困難であると結論付けて、真の原子力ルネサンスを実現するためには、政府による「コスト超過保険」の提供や、電力購入契約(PPA)の支援、政府が建設した原子炉の完成後譲渡といった、より踏み込んだ公的支援が必要としています。