【深堀り解説】トランプ大統領、国連24/7C脱退で、「連邦政府ビル50%アワリーマッチング」は幻に終わるのか?
【深堀り解説】トランプ大統領、国連24/7C脱退で、「連邦政府ビル50%アワリーマッチング」は幻に終わるのか?
酒井直樹
>>ニュースサイトTopへ >>会社HPへ
米国の24/7 CFE脱退宣言
米ホワイトハウスは1月7日、大統領覚書を公表し、米国が複数の国際的な枠組みから脱退する方針を明らかにしました。その中には、24×7カーボンフリーエネルギー(24/7 CFE)コンパクトも含まれており、米国政府として同枠組みへの関与を終了する判断が示されました。

関係者の間では、この決定によって、前バイデン政権下で打ち出された、連邦政府の再エネアワリーマッチング(50%)の電力調達方針が大きく転換するものと受け止められています。
50%の再エネアワリーマッチング宣言とは?
話は、5年前の2021年12月に遡ります。
当時政権を担っていたバイデン大統領は、大統領令(EO14057)を発出し、連邦政府が使用する電力について、2030年までに脱炭素電源へ移行する方針を明確にしました。
さらに、その実装指示として、米国予算管理局(OMB)が同月に発出した管理通達(M-22-06)では、2030年までに連邦政府関連施設の電力調達のうち50%を、時間帯ごとに発電と消費を一致させる「アワリーマッチング(24/7)」で再生可能エネルギーから調達することが明記されていました。

つまり、アワリーマッチングが世の中ではほとんど認知されていなかった2021年の段階で、既に米国連邦政府の政策として、将来のGHGプロトコルScope2改定を前提に、周到な準備がなされていたわけです。
そして5年間に亘る各層での熟議を経て、昨年11月に、Scope2ガイダンスのパブリックコンサルテーション用のドラフト文書に明記され、「アワリーマッチング」という言葉が幅広く知られるようになったわけです。
その社会実装に尽力されてきた関係者にとっては、5年越しの活動によって、Scope2ガイダンス改定という形で結実できそうになった、まさにそのパブリックコンサルテーションの最中に、トランプ大統領によって、これをひっくり返されたショックは相当なものだったと思います。
もちろん、まだ「アワリーマッチング」が実務レベルの文書で消されたことは確認できておらず、もし政権交代があればまた復活する可能性もありますが、しかし、今回、幻に終わる可能性が出てきました。
「アワリーマッチング」はどこから来たのか
もともとアワリーマッチングの考え方は、民主党やその支持組織・機関の関係者の政策議論の中で存在感を高めてきました。
その議論を主導したのが、カリフォルニア州です。まず、CAISOを含めたカリフォルニア州政府当局、そしてシリコンバレーに拠点を置くGoogle、Microsoft、さらにスタンフォード大学、UCバークレーなどのまさに「産官学」が結集して、アワリーマッチングのコンセプトを形成し、民主党連邦政府の政策形成に影響を与えていった経緯があります。
より、マクロ的な視点で見れば、これまでは伝統的に欧州勢により気候変動関連の標準規格化が主導されていたなかで、米国が、デジタルの力を使って、まさにGXにDXを組み合わせる新規格作りに参画し、存在感を示していくというアジェンダの一環という見方もできるかもしれません。
その過程で、米国に本部を置く国連で、24/7Cが結成されていきます。
一方当社は、2018年から環境省から受託してきている事業で、アワリーマッチングについての実証を独自に進めており、結成からしばらく後に国連24/7Cに合流させていただいた経緯があります。
こうした経緯の下でトランプ政権の判断となったわけですが、政治の常として、前政権の政策は往々にして覆されるものです。ましてや、トランプ大統領は、ことあるごとにバイデン前大統領の政策を批判してきたので、これを反故にするのは、ある意味では当然といえなくもありません。
民主党支持層の中での分断
しかしながら、さらに事態を複雑化しているのは、民主党内でもアワリーマッチング早期導入反対派が存在するということです。
2023年にドバイで開かれたCOPでは、欧州が反対していた国境を越えた環境証書でのオフセット証書(もちろん時間性をもちません)の導入を提唱し、2024年11月にアゼルバイジャン・バクーで開かれたCOPで承認されました。これを提唱していたのが、民主党勢力でした。
今回、異議を唱え、パブリックコンサルテーションの期間を延長させたAmazonやMetaなど西部州企業も、アワリーマッチングの早急な義務化に反対し、厳格なインベントリー方式の代わりに、追加性を重視するAMIというコンセプトを主張しています。
このように、民主党支持勢力の中でも意見が真っ二つに分かれる中で、今回の共和党トランプ政権の「ちゃぶ台返し」の影響は少なくないと当社では分析しています。
今後の見通し
いずれにしても、連邦政府自らが需要側からアワリーマッチング市場を形成していくという構想は、少なくとも当面は実現しない見通しとなりました。
この動きは、GHGプロトコルのスコープ2において時間的整合性をどの程度重視するかという国際的な議論にも、影響を与える可能性があると考えます。
今後、米国連邦政府の電力調達方針が、実務レベルで、どのような形で再整理されていくのかも含めて、議論の行く末に引き続き注視が必要です。
>>ニュースサイトTopへ >>会社HPへ
