2030年代に一斉に訪れる「卒FIT/FIP」事業用太陽光発電の課題と対策

· 再エネ

経産省の資料によれば、FIT/FIP制度のもとで2012〜2016年度に導入された事業用太陽光発電設備(約2,900万kW・約46万件)が、2032〜2036年度に調達・交付期間の終了(いわゆる卒FIT/FIP)を迎えます。

1. 卒FITを迎える太陽光発電の規模とインパクト

2032〜2036年度に調達・交付期間の終了を迎える約2,900万kW(29GW)という規模は、設備利用率を15%と仮定して機械的に計算すると年間約380億kWhの発電量に相当し、現在の日本の総発電電力量の3〜4%を占める極めて大きな割合となります。これらの電源が期間終了後に一斉に廃止されてしまうと、日本のエネルギー安定供給や2050年カーボンニュートラル達成に深刻な影響を及ぼすため、調達・交付期間の終了後も再投資を促し、長期安定的に事業を継続させることが国の重要な政策課題となっています。

2. 日本特有の構造的課題

この課題の背景には、日本の事業用太陽光発電が持つ「多極分散型構造」があります。欧州諸国と比較して、日本では低圧(10〜50kW)の小規模な事業の割合が非常に大きく、さらに2023年4月時点のデータでは低圧事業用太陽光の57%を個人が所有しているという特徴があります。

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設備の所有者が日本各地に細かく分散しており、かつ個人所有が多いことから、期間終了後の適切な設備更新(リパワリング)や定期的なメンテナンス、さらには最終的な廃棄処理が責任を持って行われないリスク(放置や不法投棄など)が懸念されています。

3. 長期安定電源化に向けた国の対策(再エネ100年構想)

こうした事態を防ぎ、再生可能エネルギーを50年、さらには100年にわたって稼働する社会に根差した主力電源として定着させるため(再エネ100年構想)、国は以下のような対策を打っています

  • 責任あるプレイヤーへの「事業集約」の推進小規模・分散型の発電事業を、長期安定電源の担い手となる能力を持った責任ある事業者へ売却・集約させていく方針をとっています
  • 「長期安定適格太陽光発電事業者」認定制度の開始(2025年4月〜)関係法令を遵守し、自治体の出資を受けているか上場企業であるなどの厳格なガバナンス体制を持ち、FIT/FIP制度に依存せずとも自立的に事業を実施できる事業者を国が認定する制度を2025年4月から開始しました。認定された適格事業者に対しては、各種手続きの合理化や電気主任技術者の統括制度の利用拡大などのインセンティブが付与され、効率的な事業買収(集約)を後押しします
  • 関係者の行動指針(アクションプラン)の策定2024年11月に、事業の現所有者、集約先(買い手)、評価機関、金融・保険機関などに向けた行動指針を取りまとめました。

4. 事業の現所有者に求められる具体的な行動

調達・交付期間終了を見据え、事業の現所有者には現時点から以下の対応が求められています

  • 定期点検と国への報告「太陽光発電事業評価技術者」などの専門家による既設設備の定期点検(例:3年ごと)を実施し、災害や盗難等のリスクを適切に評価した上で、定期報告を通じて国へ提出することが求められます(2025年春頃から開始)
  • 「構造計算書」の適切な保管と引き継ぎ将来的に事業を売却(集約)する際、事業価値が適切に評価されるよう、発電設備の「構造計算書」を平時から適切に管理・保管し、売却時には買い手へ確実に引き継ぐことが事業計画策定ガイドライン等で明確化されました。

2030年代前半に一斉に訪れる大量の卒FIT太陽光発電設備を貴重な国産エネルギー源として維持することが必要です。

このため、小規模・個人の事業者から資本力とガバナンスのある適格事業者へと事業を集約させ、再投資を通じた長期安定稼働(自立化)を実現するための制度整備が進められています。

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