【分析】蓄電池価格は1kWh5000円を割るのか?その時、世界はどう変わるのか?

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電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向け蓄電池の価格が、想定を超えるスピードで低下しています。かつて業界では、リチウムイオン電池のコストは1kWhあたり100ドルを下回ることは難しいとされてきました。

しかし近年、その前提が大きく揺らいでいます。海外メディアの報道では、30ドル(円換算で5000円未満)という水準が現実味を帯び始めているという論調が出てきています。そこで、そうしたメディア等の発信をまとめてみます。

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バッテリー価格の下落トレンド

バッテリー価格をめぐる過去の議論を振り返ると、2010年代後半まで多くの調査レポートは100ドルを事実上の下限と位置づけていました。ブルームバーグNEFなどによれば、原材料コストや製造工程の複雑さから、それ以下への低下は困難と考えられていました。しかし2020年頃から、電池パック価格が初めて100ドルを下回った事例が報告され、業界の見方は転換点を迎えました。

こうした価格低下を主導しているのが中国勢です。中国ではLFP電池を中心に、圧倒的な量産規模とサプライチェーンの集積が進んでいます。複数の報道によれば、中国国内ではセル単価が50ドル台前半にまで低下しているとの指摘もあります。地域別に見ても、中国の電池価格は欧米を大きく下回る水準にあります。

さらに注目されているのが、ARK InvestのリサーチディレクターであるSam Korus氏の発言です。同氏は、ほとんどすべての過去のバッテリーレポートが100ドルを下回らないとしていたが、現実はそれを覆しつつあると指摘しました。これは特定の一本のレポートを指すものではなく、業界全体の過去のコンセンサスを振り返った発言と受け止められています。

バッテリー価格が30ドル近辺まで低下した場合、その影響はEV市場にとどまりません。再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせが化石燃料電源と正面から競合可能となり、電力システム全体の構造が変化します。ピーク電力対策や需給調整、分散型電源の普及が一気に進む可能性が指摘されています。

当研究所の分析

中国製蓄電池はすでに50~80ドルという水準を達成しつつあり、過去の常識であった100ドルの壁は完全に崩れています。30ドル、5000円という水準はまだ公式統計では確認されていないものの、今後その実現の可能性は低くないと思われます。

ただし、一方で資源インフレーションによりコスト増加の可能性もあります。今後、蓄電池価格の下落トレンドが続くのか、あるいは資源インフレやサプライチェーンの分断で価格上昇にトレンドが転換するのか、今後の動向に注視が必要です。