スコープ2ロケーションベース手法の改定で可視化される、「EV昼充電」のCO₂削減効果
スコープ2ロケーションベース手法の改定で可視化される、「EV昼充電」のCO₂削減効果
近年、EV(電気自動車)の普及は単なる輸送部門の電化にとどまらず、電力システム全体の需給構造に直接影響を与える段階に入っています。
特にデータセンターや半導体工場などの電力需要増加と重なり、ピーク需要の上昇や系統容量の逼迫といった課題が顕在化している状況下で、電力の安定供給を確保するには、EVの充電時間に思いを致す必要があります。
「EV昼充電」の必要性
太陽光発電などの再生可能エネルギーが豊富に供給される昼間にEVを充電することで、電力システム全体のCO₂排出量を削減し、同時に系統負荷の平準化にも寄与します。
当社ではこれを「昼充電」と定義し、2023年から受託している環境省のナッジ実証事業の中で、実際の行動変容を伴う形でその有効性を検証してきました。詳細は、以下の記事をご参照ください。
この結果を踏まえて、私たちは、EV充電に係わる企業の皆様と一緒にEV昼充電推進協議会を立ち上げて、昼充電の普及に努めています。

EV昼充電推進協議会
新ロケーションベース手法で可視化される削減効果
そこで私たちが注目しているのが、重要となるのがGHG Protocol スコープ2改定の動向です。
ロケーションベース手法において、送配電網の排出係数、すなわち1kWhあたりのCO₂排出量を時間ごとに定めるという案が示されています。
もしこれが実現すると、「いつ電力を消費すればCO₂排出量を削減できるか」を定量的に示すことが可能となり、昼充電のような行動の効果を明確に可視化できるようになります。
昼充電が重要になる理由:電力システムとCO₂排出の関係
EVは単なる電力消費機器ではなく、「時間を跨いで電力を利用できる蓄電装置」としての性質を持っています。この特性により、電力の充電タイミングを消費(走行)と切り離してある程度自由に調整できるため、電源構成の違いによる排出係数の差を活用することが可能になります。
皆様がお住いの地域の送電網のCO₂排出係数(炭素強度)は時間帯によって大きく変化します。一般に、太陽光発電の比率が高い昼間は排出係数が低く、火力発電が主体となる夜間は排出係数が高くなります。
この「時間による排出係数の差」を活用できる点が、今回のGHG Scope2改定の重要なポイントです。

ガソリン車との比較で見る直感的な理解
ここでロケーションベース手法では、送電網の排出係数が時間ごとに変化するというルールが導入されれば、この仕組みを非常に有効に活用できるようになります。
この効果を直感的に理解するために、ガソリン車との比較で考えてみます。

国交省の資料によれば、ガソリン車は1kmの走行時に約160g-CO₂を排出するとされています(もちろん車種や走行条件により大きく変わります)。
一方でEVは、充電する時間帯によって排出量が変化します。
- 夜充電:100g-CO₂/km程度
- 昼充電:50g-CO₂/km程度
- 自宅の再エネで充電:0g-CO₂/km
このように、同じEVであっても、充電のタイミングを変えるだけでCO₂排出量が半減する、あるいはゼロに近づくという構造になります。ここで重要なのは、EVの排出量は車両性能ではなく「電源の質」に依存している点です。
カギを握るのは「需要家排出係数」
ここで重要になるのが、排出量は「排出係数 × 電力量」で決まるという基本構造です。
- 夜充電:高い排出係数 × 電力量 → 排出量が大きい
- 昼充電:低い排出係数 × 同じ電力量 → 排出量が小さい
この差分がそのまま削減量となります。
こうして昼シフトした効果、すなわち行動変容の努力は、結果として「需要家排出係数」として現れます。需要家排出係数とは、あるユーザーが実際に使用した電力の排出係数の平均値を意味します。

・需要家排出係数(g-CO₂/kWh)
= Σ(時間別排出係数 × 使用電力量) ÷ 総電力量
・総排出量(kg-CO₂)
= 需要家排出係数 × 総電力量
このように整理すると、車のエコドライブと同様に、充電を昼間にシフトすることで需要家排出係数を下げ、結果として総排出量を削減するという非常に分かりやすい構造になります。
従来は年間平均で評価されていたため、このような行動の違いは見えませんでした。しかしもし新方式が導入されれば、今後は、時間別の排出係数を用いることで、個々の選択が直接排出量に反映されるようになります。
この仕組みにより、ユーザーは単に電気を使うだけでなく、「どの時間に使うか」という選択によって環境負荷をコントロールできるようになります。
今回は、ロケーションベース手法のお話しをさせていただきましたが、その裏表として、マーケットベース手法でも、再エネ発電と消費を時間ごとに一致させるアワリーマッチングの導入案が示されています。
次回はアワリーマッチングにより昼充電を促す方法をご説明させていただきます。
