長期脱炭素電源オークション結果公表。脱炭素電源426万kWとLNG専焼火力304万kWが落札

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長期脱炭素電源オークションは、将来の供給力を取引する容量市場の一部として設計された制度です。電力システム改革以降、卸電力市場における価格のボラティリティが高まり、発電事業者が巨額の初期投資を回収する予見可能性が低下するという課題が生じていました。電源投資が滞れば、将来の電力安定供給が脅かされるだけでなく、2050年のカーボンニュートラル達成も困難になります。

そこで本制度は、脱炭素電源への新規投資やリプレース、さらには既設火力の脱炭素化に向けた改修に対して、原則20年間にわたり固定費水準の容量収入を保証する仕組みを導入しました。事業者はオークションに参加し、各応札電源の応札価格がそのまま約定価格となるマルチプライス方式で落札を競います。落札後は、卸電力市場や需給調整市場、非化石価値取引市場など他市場で得られた収益から可変費を差し引いた実質的な収益の約9割を事後的に還付するルールとなっており、国民負担の抑制と投資インセンティブの確保を精緻に両立させています。

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オークション全体の応札および落札の概要

今回のオークションにおける全国の応札容量は合計で1085.6万kWに達しました。

そのうち落札容量は729.9万kWで全体の67パーセントを占め、残る355.7万kWが非落札となりました。

過去の実施状況を振り返りますと、2023年度に実施された初回の入札では、脱炭素電源の応札量が780.5万kWに対し落札量が401.0万kW、LNG火力の落札量が575.6万kWでありました。

また、昨年度の実績と比較しますと、今回の脱炭素電源の約定総量は前年度比で15.3パーセントの減少となる426.1万kWとなりました。

一方で、LNG専焼火力の約定総量は前年度比で約2.3倍へと大幅に増加し、303.8万kWに達しています。

落札された729.9万kWの電源区分の内訳を見ると、新規建設が全体の71パーセントを占め、リプレース等が26パーセント、既設火力の脱炭素化改修が3パーセントという構成になっています。

制度の主眼である新たな電源の創出が着実に進んでいることがこの数字から証明されています。

エリア別の落札状況では、東京エリアが231.4万kWと最大であり、次いで関西エリアの184.4万kW、九州エリアの182.2万kWと続いており、電力需要の大きい地域や再生可能エネルギーの導入ポテンシャルが高い地域での開発が活発であることがわかります。

脱炭素電源およびLNG専焼火力の約定結果と総額

オークションの募集は大きく二つの枠に分かれて実施されました。

第一の枠である脱炭素電源の募集量は500万kWに設定されていましたが、最終的な約定総容量は426.1万kWとなりました。この落札に対する約定総額は、入札上限価格の引き上げ等を受けた結果、年最大約定総額が前年度の約2.2倍となる3503億円に急増しました。

第二の枠は、LNG専焼火力です。これは本来化石燃料を使用する電源ですが、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う調整力の不足や、短期的な需給逼迫の回避という喫緊の課題に対応するため、将来的な脱炭素化を厳格な条件として例外的に対象とされたものです。

具体的には、供給力提供開始から10年以内に脱炭素化に向けた対応を開始し、2050年までに完全に脱炭素化することを前提としています。

このLNG専焼火力の募集量約293万kWに対し、約定総容量は募集上限を上回る303.8万kWとなりました。こちらについても年最大約定総額は前年度の約4.5倍となる870億円の規模へと拡大しています。

電源種別落札企業動向:原子力発電の新設と安全対策

まず原子力発電の分野です。原子力発電は運転時に二酸化炭素を排出しない極めて優秀なベースロード電源であり、本オークションにおいても重要な位置を占めています。

新設枠として、電源開発株式会社が大間原子力発電所を138.1万kWで落札しました。また、既設原子力の安全対策投資という特設枠においては、北海道電力株式会社が泊発電所1号機を55.8万kWで落札しています。原子力発電所の新設や安全対策には天文学的なコストと長い工期を要しますが、本制度の20年間にわたる容量確保契約が事業の予見可能性を担保する強力な後押しとなっています。

火力発電の脱炭素化と次世代燃料への転換

続いて火力発電の脱炭素化に向けた動きです。二酸化炭素を排出しない次世代燃料への転換が進んでおり、既設火力のアンモニア混焼への改修案件として、北海道電力株式会社の苫東厚真発電所4号機が13.2万kW、株式会社コベルコパワー神戸の神戸発電所1号機が13.1万kWで落札されました。

また、水素専焼の案件として、CEF H2株式会社の三池発電所が14.6万kW、ホクエナジー株式会社の第一発電所が10.7万kWでそれぞれ選定されています。

さらにバイオマス専焼として、イーレックス株式会社が仮称イーレックス新潟を10.1万kWで落札しており、多様なアプローチでのゼロエミッション火力への投資が顕在化しています。

電源種別落札企業動向:揚水発電と分散型系統用蓄電池の躍進

再生可能エネルギーの主力電源化をシステム面から支えるフレキシビリティリソースの落札も非常に活況を呈しました。

揚水発電については、水を用いた大規模かつ長寿命な蓄電システムとして再評価されており、北海道電力株式会社が京極発電所3号機を新設枠で18.6万kW、東京電力リニューアブルパワー株式会社が塩原発電所2号機をリプレース等枠で26.8万kW落札しました。

さらに、特筆すべきは分散型系統用蓄電池の躍進です。リチウムイオン蓄電池の枠では、CHCJapan株式会社が島根県の益田市蓄電所と宮崎県の新富町蓄電所の2拠点で合計11.2万kWを落札したのをはじめ、合同会社NRE-54インベストメント、合同会社ホモデウス、合同会社ポーラーベアー、CS青森八戸ESS合同会社、そして合同会社バッテリーパーク系列など、特別目的会社が全国各地で数万kW規模の蓄電所事業を次々と落札しました。この枠の落札容量は合計で55.1万kWに達しました。

加えて、リチウムイオン電池以外の蓄電池枠でも大規模な落札が相次ぎました。ここではStonepeak Kingdom Holdings合同会社が複数の案件で約17.4万kWを落札したほか、合同会社蓄電所3号という事業者がそれぞれ14万kWを超える巨大な系統用蓄電所を2つ落札し、ヘキサエネルギーサービス合同会社も中国エリアと東北エリアで合計約9万kWを確保するなど、大規模な資金を背景にした開発競争が激化しています。

リチウムイオン電池以外の蓄電池の落札容量は合計で70.0万kWに上りました。なお、蓄電池の募集においては経済安全保障上の観点から、日本を除く特定の1か国および地域あたりのセル調達が総落札容量の30パーセント未満に制限されるルールが適用されており、サプライチェーンの多角化も同時に図られています。

電源種別落札企業動向:当面の安定供給を支えるLNG専焼火力の大型落札

最後に、当面の安定供給の要となるLNG専焼火力発電の落札動向です。

落札したのは日本の電力インフラを担う大手電力会社およびその合弁企業に集中しています。北陸電力株式会社が富山新港火力発電所LNG2号機を58.4万kW、九州電力株式会社が仮称新小倉発電所6号機を90.0万kW、そして株式会社JERAが袖ケ浦火力発電所の新1号および新2号をそれぞれ77.7万kWという巨大な規模で落札しました。

これら4つの大型プロジェクトのみで約定総容量は303.8万kWに達しました。莫大な資金力を要するLNG火力の新設およびリプレース事業において、長期脱炭素電源オークションの仕組みが投資決定の極めて重要なファクターとして機能していることが鮮明に示された形です。

これらの設備は、将来的な水素やアンモニア専焼への切り替えを見据えた次世代型火力として、日本のエネルギー転換期を支える重責を担うことになります。

過去のオークションにおける現状課題認識と次回以降に向けた対応方針の議論

本制度はカーボンニュートラルと安定供給の両立に向けた強力な支援策ですが、初回や第2回のオークション結果を踏まえ、制度設計の改善に向けた議論が継続的に行われています。特に、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の下に設置された電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会において、現状の課題認識と対応方針について活発な意見交換が交わされました。

2025年4月に開催された第102回制度検討作業部会では、初回入札の振り返りとして、募集量を大きく超える応札容量があったものの、蓄電池や揚水発電以外の新設およびリプレース案件の応札量と落札量が少なく、結果として新設やリプレース案件の投資判断を強く後押しする結果になったとは言いがたいという課題が事務局から提示されました。

さらに、足元のインフレによる建設費や金利の上昇、為替の大幅な円安を背景に、応札価格が上昇していく可能性が指摘されました。これに対する対応方針として、事務局は上限価格の閾値をこれまでの10万円から20万円まで引き上げる案を提示しました。また、水素やアンモニア、CCS付き火力といった黎明期の技術については、導入が可能となる水準まで上限価格を引き上げるとともに、設備利用率の4割分まで燃料費などの可変費を応札価格に算入可能とする方針が示されました。

この提案に対し、小山委員は、脱炭素電源の新設やリプレース投資を後押しする観点から適切な提案であると賛同した上で、可変費算入の設備利用率4割という設定について、将来的な電力市場の状況変化に応じて柔軟に見直す機会を設けるべきだと発言しました。

曽我委員は、上限価格の引き上げに賛同しつつも、脱炭素火力の募集上限を絞ると導入量が限定的になる懸念を示し、中長期的な見通しを踏まえて具体的な募集量を検討すべきだと指摘しました。関西電力の齊藤オブザーバーからも、水素やアンモニア、CCS付き火力の募集量について、多様な脱炭素電源の導入促進という観点から適切な量を検討してほしいとの要望が出され、黎明期のエネルギーゆえにコスト想定の不確実性が伴うため、実態を踏まえた事後的な見直しの必要性が語られました。また、松村委員は、上限価格の引き上げ自体には理解を示しつつも、上限を上げると安く入札するインセンティブが低下し価格競争が働かなくなる懸念を強調し、真の競争を促すための制度設計の重要性を訴えました。

さらに、年が明けた2026年3月に開催された第112回制度検討作業部会では、第4回入札以降の制度設計について議論が行われました。

事務局の添田課長は、火力発電が供給力や調整力として重要な役割を担う一方で、稼働率の低下や事業リスクの増大に直面している現状を報告しました。その上で、LNG火力については第7次エネルギー基本計画において脱炭素化に向けたトランジション手段として活用することが明記されていることを踏まえ、第4回入札以降も当面の間はLNG火力の募集を継続する方針を提案しました。また、蓄電池についてはサイバーセキュリティ基準の厳格化やサプライチェーンの多角化要件の導入、水素およびアンモニアについては水素社会推進法の予備審査への適合を参加要件とする方針が示されました。

この方針について、土井委員は、電源種によって投資を推進するものと規制を強めるものが混在していることを指摘し、他の市場制度との整合性や電源間での不公平が生じないような制度設計を求めました。また、LNG投資にあたっては中長期の計画が必要であるため、募集期間や募集量について早めに中長期の目標値を事業者に示すべきだと発言しました。又吉委員も、LNG火力の募集継続に賛同しつつ、将来の電力需要と脱炭素火力の必要供給力を踏まえた適切な募集量を見極めることの重要性を指摘しました。

続いて、2026年4月に開催された第113回制度検討作業部会では、制度適用期間の上限設定に関する新たな課題が議論されました。事務局からは、現在の制度では20年以上という長期の適用も可能ですが、期間を長くすればするほど建設費の年間回収額が小さくなる一方で、金利などの資本コストが増加し、結果的に支援総額に対する資本コストの割合が大きくなり国民負担が膨らむ構造になっていることが報告されました。このため、制度適用期間の上限を原則として40年と設定する方針が示されました。

これに対し、土井委員は、足元の入札案件の状況を見て40年を上限とする方向性に賛同しつつも、原子力発電の新設など電源種によっては比較的に長期間を要するものもあるため、今後の上限価格の状況や電源種別の実績を見ながら、過度な制約となっていないかを適宜確認しルールを調整していくのがよいと述べました。小山委員も同様に、資本コストの増大による国民負担の増加を抑制する観点から40年の上限設定を妥当と評価した上で、資本集約的で回収期間の長い原子力などに一律の年数を適用することが適切かどうかについては、長期的な検証が必要であると発言しました。

このように、長期脱炭素電源オークションの制度設計においては、投資環境の悪化や物価高騰といった事業者の直面する現実的な課題に対応しつつ、国民負担の抑制や市場競争の維持を図るという難しい舵取りが求められており、各委員会の場において継続的かつ緻密な見直しの議論が進められてきた結果となりました。

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