IRENA、アワリーマッチングのコスト積算レポートを公表。95%アワリーマッチングで10円/kWh程度
IRENA、アワリーマッチングのコスト積算レポートを公表。95%アワリーマッチングで10円/kWh程度
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2026年5月、「24/7 renewables: The economics of firm solar and wind」と題するレポートを公表しました。

このレポートでは、太陽光、風力、蓄電池を組み合わせた「Firm Renewable Power」のコスト低下を分析するとともに、GHG Protocol Scope2改定、Granular Certificates(GC-EAC)、24/7 Carbon-Free Energy(24/7 CFE)、時間一致(Hourly Matching)などを踏まえた次世代電力市場への移行について具体的に記述しています。
太陽光・風力・蓄電池を組み合わせたハイブリッド構成について、IRENAは95%アワリーマッチングが60ドル/MWh(約9.6円/kWh)程度まで低下し得ると整理しています。
GHG Protocol Scope2改定とアワリーマッチング
レポートでは、現在進行中のGHG Protocol Scope2 Guidance改定について、「hourly and location-matched certificates」が市場ベース排出量算定の基礎として提案されていると明記しています。
これは、従来の年間一致型の再エネ調達ではなく、「いつ発電されたか」「どこで発電されたか」を考慮した環境価値評価へ移行する流れを意味しています。
また、従来の年間一致については、「increasingly recognised as inadequate(次第に不十分と認識されつつある)」と記述しており、年間単位の証書購入のみでは、実際の電力消費と再エネ供給の整合性を十分に説明できないとの認識が強まりつつあることを示しています。 (IRENA)
EU再エネ水素認証制度との関係
レポートでは、EU制度との接続についても具体的に触れています。特に、EUの再エネ水素認証制度(RFNBO制度)では、再エネ由来水素について、時間一致や地域的一致を求める方向性が導入されていることを紹介しています。
EUでは、水電解装置で製造される水素について、再エネ電力との「temporal correlation(時間的一致)」や「geographical correlation(地理的一致)」を求める制度設計が進められており、将来的には時間単位での一致要件が強化される方向にあります。
IRENAは、こうした制度が、Granular CertificatesやHourly Matchingの市場形成を後押ししていると整理しています。
CBAMとの関係
レポートでは、EUのCarbon Border Adjustment Mechanism(CBAM)についても言及しています。
CBAMは、輸入製品の炭素排出量を評価し、炭素価格相当を課す制度ですが、その背景には、「実際にどの時間帯・どの地域で低炭素電力が利用されたのか」をより厳密に評価する方向性があります。
IRENAは、こうしたEU制度が、将来的にGranular Energy Attribute Certificates(GC-EAC)や時間一致型の環境価値評価と接続していく可能性を示唆しています。
さらに、EUのこうした制度設計が、結果として国際標準化し、世界市場へ波及していく可能性についても示しています。
「供給信頼度」と「柔軟性」に価格シグナル
レポートでは、時間一致制度の導入によって、「供給信頼度(reliability)」や「柔軟性(flexibility)」に対する価格シグナルが形成されると分析しています。
その結果、蓄電池による時間シフト、夜間供給、ハイブリッド型再エネ、需給調整能力などが、新たな経済価値を持つ可能性があるとしています。
特に、太陽光単独ではなく、風力や蓄電池を組み合わせた「Firm Renewable」の重要性が高まると整理されています。
日本の制度設計との比較
日本では需給調整市場や容量市場を通じて、ΔkWやkW価値を切り出し、市場運営側がマクロ的に価格付けを行い、小売事業者に均等にコスト負担を求める制度設計となっています。
一方、IRENAが示している方向性は、供給信頼度や柔軟性を備えたPPAを需要家が選択し、それに対して価格プレミアムを支払うことで、発電事業者側がミクロレベルで供給信頼度や柔軟性を自主的に確保していくアプローチとして整理することもできます。
90%・95%・99%一致率のコストを具体的に分析
今回のレポートの特徴の一つは、単なる概念論ではなく、90%、95%、99%といった供給信頼度ごとの具体的コストを詳細に分析している点です。
中国の大規模太陽光発電案件の分析では、90%供給信頼度において、ほぼ全案件が100ドル/MWh以下でFirm Powerを供給可能であり、最低コスト案件では30ドル/MWhまで低下しているとしています。
95%供給信頼度では最低34ドル/MWh、97%では37ドル/MWh、99%でも46ドル/MWhと分析されています。 (IRENA)
また、中国の陸上風力案件では、90%供給信頼度で最低38ドル/MWh、95%で48ドル/MWh、97%で55ドル/MWh、99%では66ドル/MWhとなっています。 (IRENA)
さらに、太陽光・風力・蓄電池を組み合わせたハイブリッド構成について、IRENAは95%アワリーマッチングが60ドル/MWh(約9.6円/kWh)程度まで低下し得ると整理しています。 (TaiyangNews - All About Solar Power)
また、IEAの分析として、風力・太陽光・蓄電池を組み合わせることで、80%アワリーマッチングは既に工業用系統電力価格と同等レベルで実現可能であるとも紹介されています。 (IRENA)

