電力中央研究所、原油高騰が電気料金に与える波及経路を分析 今秋以降に家計負担増の予測
電力中央研究所、原油高騰が電気料金に与える波及経路を分析 今秋以降に家計負担増の予測
電力中央研究所(電中研)は、2026年4月30日、緊迫化するイラン情勢に伴う原油価格の上昇が家庭用電気料金に及ぼす影響を分析・評価した研究資料を発表しました。本資料では、2026年3月末に1バレル120ドル前後まで急騰した原油相場が、日本の電力コストに反映されるまでの時間的ラグと金額規模を具体的に検証しています。

燃料価格の連動メカニズムと「二段階のタイムラグ」
電中研の分析によれば、原油価格の変動が電気料金に反映されるまでには、性質の異なる2つのタイムラグが存在します。第一のラグは、原油の市場価格が実際の輸入価格(CIF)に反映されるまでの期間です。日本のLNG(液化天然ガス)や石炭の輸入価格は、過去数カ月の原油価格の平均に連動する契約が多く、市場での高騰から約3~5カ月遅れて輸入統計上の価格に現れる傾向があります。
第二のラグは、燃料費調整制度による電気料金への反映です。この制度では、3カ月間の平均燃料価格に基づき、その2カ月後の電気料金を決定します。この合計5カ月以上にわたる時間差により、2026年3月の急激な価格高騰の影響は、早ければ同年夏以降、本格的には9月から11月頃にかけて家庭の請求額に顕著に表れるとの予測を示しました。
燃料種別による影響の差異とシミュレーション
今回の報告書では、原油価格がさらに上昇し1バレル150ドルに達した場合のシミュレーションも実施されています。日本は電源構成においてLNGと石炭への依存度が高いですが、特にLNG価格は原油価格との相関が極めて強く、原油高はそのまま発電コストの押し上げに直結します。
具体的な数値として、原油価格が3月の水準(120ドル)を維持した場合でも、標準的な家庭の電気料金は、燃料価格高騰前と比較して月額数百円から千円規模の押し上げ要因になる可能性があると分析されています。これに加えて、円安が進行した場合には輸入価格の円建てコストがさらに増幅され、家計への負担は二重の影響を受けるリスクがあるとしています。
政府補助金の効果とエネルギー危機の教訓
電中研は、2022年のエネルギー危機時に実施された電気・ガス料金補助金の効果についても検証を行っています。過去のデータに基づき、補助金が需要家の負担軽減に一定の成果を収めた一方で、価格シグナルを抑制することで省エネ意欲を減退させる側面があった点を指摘しました。
ホルムズ海峡の情勢不安という地政学リスクを背景とした今回の危機において、日本は再び供給制約というピンチに直面しています。しかし、これは単なるコスト増として捉えるのではなく、過去のオイルショックで日本が世界最高水準の省エネ社会を築いたように、徹底した資源の有効活用や非化石電源へのシフトを加速させる好機であると捉えるべきでしょう。きめ細かなエネルギー管理技術による「日本流」の対策が、将来的なエネルギー安全保障の鍵となることが本分析からも示唆されています。
