データセンターと再エネの「時間一致」は担保されるのか ― スペインの新政策と、日本のワット・ビット連携の相違点

· 再エネ,アワリーマッチング,データセンター

世界的にAI需要が急増する中、データセンター(DC)の電力消費量は急拡大しています。その結果、近年では「データセンターの近くに再生可能エネルギー発電所を設置し、その電力でDCを賄う」という構想が各国で進み始めています。

日本でも、経済産業省・総務省を中心に、「ワット・ビット連携」と呼ばれる政策構想が進められています。これは、通信・データセンター・電力インフラを一体的に整備し、再生可能エネルギーが豊富な地域へデータセンターを誘導する考え方です。

経済産業省は、ワット・ビット連携に関する発表において、電力インフラ・通信インフラ・データセンターの一体整備の重要性を示しています。また、GX2040ビジョン関連資料でも、再エネ電源が豊富な地域へのデータセンター誘導の方向性が示されています。

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日本では「脱炭素電力100%」を要件化

こうした中、経済産業省は現在、「脱炭素電源を活用するDCの整備支援」を進めています。制度説明資料では、データセンター建物、冷却設備、受電設備などを支援対象とし、「脱炭素電力を100%活用していること」を要件として掲げています。

本件に関し、経済産業省のQ&Aでは、脱炭素電力100%要件について、次のような考え方が示されています。

グリーン電力証書、再エネ電力由来Jクレジット等、国内の脱炭素電源由来の環境価値の購入も脱炭素電力調達の方法として認める方向で検討中

とされており、再エネ電力由来Jクレジットなどのオフセット証書の活用が認められる方向で検討されています。

アワリーマッチングでなければ系統に影響も

ここで重要なのは、「年間で再エネ100%」と、「実際に同時間同時同量で再エネが供給される」ことは、必ずしも同じではないという点です。

例えば、データセンターが夜間に大量の電力を消費している場合でも、昼間に発電された再エネの環境価値をJクレジットや証書でオフセットすれば、「年間ベースでは再エネ100%」という整理が可能になります。一方で、Jクレジットなどのオフセット証書は、「環境価値」の移転は担保しても、「その時間帯にデータセンターが実際再エネで稼働している」ことまで保証するものではありません。実際の同時同量が担保されなければ外部系統に影響を与えてします可能性も指摘されています。

スペインでは「時間相関」を法制化

こうした中、スペインでは2026年3月、データセンター向け制度において、「時間相関(correlación horaria)」という概念が正式に法令へ導入されました。

スペイン政府は、Real Decreto-ley 7/2026 において、今後データセンターに適用される要件として、

“criterios de adicionalidad y correlación horaria”

すなわち、

「追加性および時間相関の基準」

を導入できると明記しました。

これは、データセンターの再エネ利用について、単なる年間オフセットではなく、

「実際に同じ時間帯に再エネが供給されているのか」

という考え方を制度へ組み込もうとする動きとして注目されています。

もっとも、現時点では、何%の一致を求めるのか、どの単位で測定するのか、GC-EACやGranular Certificateを用いるのかなど、詳細制度はまだ定められていません。

しかし、国家法令の中で、「時間相関(correlación horaria)」を正式に位置づけた点は非常に象徴的です。

今後の制度設計に注目

今後、世界的にデータセンター需要がさらに拡大していく中で、「再エネ100%」の意味そのものが変化していく可能性があります。

年間ベースの環境価値オフセットを中心とした制度を維持するのか、それとも、実際の電力需給や系統運用を踏まえた「時間一致」「場所一致」へと進化していくのか。スペインの制度設計、そして日本のワット・ビット連携の今後の方向性が注目されます。

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