【第3回長期脱炭素電源オークション】揚水発電について概括。今後の見通しは
【第3回長期脱炭素電源オークション】揚水発電について概括。今後の見通しは
長期脱炭素電源オークションは、2050年のカーボンニュートラル実現と電力安定供給の両立を目指し、脱炭素電源への新規投資に対し原則20年間にわたり固定費水準の容量収入を保証する制度です。
制度開始当初の第1回入札では、揚水発電は83.8万キロワットの応札に対して57.7万キロワットが落札されました。
第2回入札では蓄電池とともに激しい競争にさらされ、3時間から6時間の区分で9.8万キロワットの応札に対し落札ゼロ、6時間以上の区分で75.6万キロワットの応札に対し36.1万キロワットの落札にとどまりました。
蓄電池と揚水発電の応札が突出しており、他のベースロード電源等の投資を後押しできていないという課題が浮き彫りになりました。
委員会における議論と第三回に向けた制度変更
関連委員会では、多様な脱炭素電源を確保するという制度趣旨に鑑み、特定の電源が落札枠を独占することを防ぐための議論が行われました。その結果、第3回入札に向けては、蓄電池および揚水発電に対して厳格な募集上限が設定されました。
具体的には、リチウムイオン蓄電池および揚水発電のリプレース等の区分に40万キロワット、リチウムイオン以外の蓄電池および揚水発電の新設等の区分に40万キロワットの上限が設けられ、電源種別のバランスを保つための市場規律が強化されました。
第三回オークションにおける揚水発電の落札結果と金額の妥当性
上限設定を経て実施された第3回オークションにおいて、揚水発電の新設は18.6万キロワットの応札があり全量が落札されました。
一方、揚水発電のリプレース等の区分には上限を大幅に超える応札が殺到しましたが、全体の募集目標を満たすための特例ルールが適用され、最終的に揚水発電のリプレース等は63.2万キロワットの応札に対して26.8万キロワットが落札されました。
落札金額については、インフレ等に対応するため上限価格の閾値が引き上げられたものの、マルチプライス方式の下で事業者間の価格競争メカニズムが働き、脱炭素電源全体の加重平均約定価格が上限の約5.5割に抑え込まれました。
容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果
応札事業者名北海道電力株式会社、落札案件名京極発電所3号機、電源種揚水(新設)、落札容量185889キロワット。
応札事業者名東京電力リニューアブルパワー株式会社、落札案件名塩原発電所_2号機、電源種揚水(リプレース等)、落札容量267550キロワット。

今後も続く蓄電池と揚水発電の厳しい価格競争
揚水発電と蓄電池は、「長期脱炭素電源オークション」および「需給調整市場」という2つの枠組みにおいて、同じ枠で価格競争を行う関係にあります。
1. 価格競争の有無と、その開始時期
長期脱炭素電源オークションの場合来年1月に予定されている第4回入札(応札年度:2026年度)から、新たなルールのもとで同じ枠での価格競争が始まります。具体的には、経済安全保障推進法に基づく認定を受けた「リチウムイオン蓄電池」と「揚水発電のリプレース等」の案件が、同じ「第一階層(優先約定枠)」に位置付けられ、募集上限の範囲内で価格が低い順に落札を競うことになります。
需給調整市場の場合市場が開設された2021年度(三次調整力②から順次開始)以降、調整力を提供するリソースとして同じ商品区分(一次調整力や二次調整力など)に参加し、価格競争を行っています。
2. 競争優位性の比較
優位性については、オークションの投資動向、市場の運用ルール、そしてコストの安さという3つの側面から評価が分かれます。
① 長期脱炭素電源オークションにおける優位性:蓄電池が優勢新規投資の勢いや応札量という点では、蓄電池が市場を席巻しており優位に立っています。これまでの入札では蓄電池の応札が募集上限の何倍にも達するほどの激しい競争となっており、揚水発電は蓄電池との厳しい価格競争にさらされています。
第4回入札から揚水発電のリプレース等は優先約定の第一階層に入ることで、非認定の蓄電池に対しては一定の優遇措置(優位性)を得ることになりますが、認定を受けた蓄電池とは直接の価格競争になるため、引き続き熾烈な競争が予想されます。
② 需給調整市場の「参入・運用面」での優位性:蓄電池が優位市場ルールへの適合性という点では、蓄電池に優位性があります。揚水発電は、一次・二次①調整力などで求められる「並列必須要件(すぐに発動できるよう常に運転状態を維持すること)」を満たすために最低出力で運転を続けると、上池の水が数時間で枯渇してしまうという致命的なハードルがあります。
さらに、数日先の卸電力価格が読めない週間断面での入札は運用上のリスクが大きいため、揚水発電は需給調整市場への応札を諦め、随意契約などの市場外取引に移行する傾向が強まっています。
③ 需給調整市場の「コスト(価格)」の優位性:揚水発電が優位純粋な価格の安さという点では、揚水発電が圧倒的に優位です。総括原価方式の時代に減価償却を終えている既存の揚水発電は、非常に安価(例えば随意契約で0.29円/ΔkW・30分相当など)で調整力を提供できます。
一方、蓄電池は初期投資が大きく、投資回収のために需給調整市場において上限価格付近の高単価で応札する傾向がありました。これが調達コスト高騰の要因とみなされ、国によって上限価格が大幅に引き下げられる(19.51円から7.21円への半減など)といった厳しい対応を受けています。
認定蓄電池と非認定蓄電池の定義と経済安全保障上の位置づけ
揚水が競合する蓄電池に関しては、第4回以降のオークションに向けた議論では、新たに認定蓄電池と非認定蓄電池という区分が導入されることとなりました。
この区分は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律、いわゆる経済安保推進法に基づいています。特定の国や地域のメーカーに依存するサプライチェーンの脆弱性が課題となる中、蓄電池は特定重要物資に指定されており、安定供給を確保するための取り組みが急務とされています。
この法律に基づき、蓄電池の部素材も含めた安定供給確保のための取り組みに関する供給確保計画を作成し、経済産業省が策定した方針に適合して経済産業大臣から認定を受けたメーカーが製造するセルを採用する蓄電池が認定蓄電池として位置づけられます。 これに対して、そのような認定を受けていないセルを使用する蓄電池は非認定蓄電池となります。
国内の産業基盤強化やサプライチェーンの強靭化に貢献する認定蓄電池を制度的に優遇し、非認定蓄電池と明確に区別することで、単なる価格競争だけでなく国家の経済安全保障政策と連動した市場形成を図る狙いがあります。
今回の約定結果が第四回以降のオークションへ与える影響と今後の展望
第3回オークションにおいて蓄電池が圧倒的な競争率を示したことと、サプライチェーン途絶リスクが顕在化したことは、来年1月に予定されている第4回オークション以降の制度設計に抜本的な変更をもたらす可能性があります。
具体的には、募集上限の範囲内において、まず経済安保推進法の認定を受けたリチウムイオン蓄電池の案件と揚水発電のリプレース案件を、第一階層として価格の低い順に優先的に約定させる二段構えの落札方式が採用されます。
その優先枠だけで募集上限が埋まらなかった場合に限り、非認定蓄電池の案件を次に価格の低い順に落札させる仕組みとなります。
この制度変更により、安価な海外製セルに過度に依存する事業者は落札の機会を大きく失うリスクに直面し、国内のサプライチェーン強靭化に寄与する認定蓄電池を用いた質の高い案件が市場の主流となることが予想されます。
価格面においても、認定要件を満たすための国内投資や調達先の多角化にかかる追加コストが今後の応札価格に反映されるため、これまでの過度な低価格競争から、経済安全保障という付加価値を適正に織り込んだ新たな価格形成へとパラダイムがシフトしていくと考えられます。
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